歩きスマホしてたら異世界に迷い込んじゃったけど世界って救う必要ある?

るき

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Chapter3

02 トリファン見聞録~武器とダイヤとモブ神~

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「ナオ&ミオの武器工房へようこそ!」

 店の扉を開けるなり、双子の姉妹が声を合わせて俺たちを歓迎する。

 おそろいの作業着に、分厚い手袋。目を保護するためのゴーグルを首からぶら下げている。頭にはもちろん角。犬っぽい耳とふさふさのしっぽがかわいい。顔は瓜二つだけれど、髪の色と肌の色が違う。茶色と黒の柴犬って感じ。たぶん茶髪の方がナオで、黒髪の方がミオ。

 ゲームでは「武器ガチャ」のアイコンをタップすると拠点から武器屋の画面に移動して、この二人がナビゲートしてくれていた。

「こんにちはリュカ様! 今日はいかがしたしますか?」
「お荷物いっぱいやねえ、よろしければアイテムボックスをお使いくださいね~」

 二人とも愛想よく接客するが、リュカはあくまで塩っ気多めの対応だった。

「私ではなくこちらの方にご案内をお願いします」

 リュカは一歩下がり、俺の背中に手をあてた。その仕草でやっと二人は俺の存在に気付いたらしい。

「あっ……こんにちはー! あなたも使徒様? へえ、初めて見た」
「ほんまやねえ。最近使徒になった方ですのん?」

 別に態度ががらりと変わったというわけではないけども、リュカと話している時はぶんぶんに振られていたしっぽがスンッてなった。まあモブですよ俺なんか。

 適当に「新人のニーナで~す。よろ」と挨拶して店内を眺める。
 壁や棚にみっちりと、山ほど武器が陳列されている。長剣に槍、斧、弓、杖、モーニングスターなどなど。どれもこれも強そうだし丹念に手入れされている。ちょっと触っただけで指とか簡単に切れそうでコワイ。

 でもここに置かれている武器や市場で売られていた武器は一般の人用。使徒が使うのは「神が御下賜くださる聖なる武具」なのだとリュカに説明してもらった。つまりガチャで手に入る武器。
 普通の武器でもモンスターを倒せないことはないけれど、神の力が込められた武器がもっとも有効な攻撃手段なのだそうだ。そしてそれを扱うことができるのは使徒だけ。神様や使徒が街の人たちに崇められるわけだよな。

 俺が一人で納得している間に、ナオとミオはてきぱきと何かの準備を進めていた。玉鋼のような鉱物をいくつか持ち出して、店の奥の祭壇に並べている。きらびやかな装飾の施された祭壇はゲームでガチャをまわすときの画面とよく似ていた。

「そしたらどうします? ゴールドガチャ? それともダイヤガチャ?」
「今なら十連がお得やね。SSR提供割合二倍よ」

 ゴールドガチャはゲーム内通貨を使って引けるガチャ。主にレア武器が出て、たまにSR武器が出るぐらい。
 ダイヤガチャは課金で手に入る「ダイヤ」を使って引くガチャで、SSR武器が出る確率が高い。ダイヤはクリア報酬やログインボーナスとかでもちょいちょいもらえる――ってチュートリアルでやってた。
 っていうか二人とも普通に「ガチャ」とか「提供割合」とか言うのな。世界観ほんと大丈夫なん?

「じゃあとりあえず、ダイヤガチャ十連でお願いします」
「はーい毎度ありぃ。ダイヤ百個ね」

 お金には余裕があるけどまずは様子見。まあ、ちょっとアレな手段で手に入れたお金なので良心が痛むけれども。
 またゴールドの時みたいにリュカがスッとダイヤを出してくれるのかな~と期待を込めて見上げたら、リュカは少し戸惑った顔をして俺に耳打ちした。

「申し訳ございません、ダイヤは神が……ニーナが私どもに授けてくださっていたのですが」
「あっ、そうなんだ!? えーと、どうするんだろ……?」

 はよダイヤをよこせとばかりに手を差し出すナオとミオに「ちょっと待って」とことわり、そそくさとリュカの背中に隠れる。
 二人の目に付かないようスマホをこっそり取り出して、ジャケットで隠しつつ画面を操作する。リアルマネーは三十万円ぐらいチャージされているはずなんだけど。

 メニュー画面を開き、「ダイヤ購入」と書かれたボタンをタップしてみる。えーなになに、ダイヤは十個300円、百個で2,800円、五百個で12,500円……つまり五百個だとお得なのな? じゃあ五百個買っとくか。
 購入確認の画面が出て「OK」をタップする。その流れで「今すぐ使いますか?」の画面が出て、よく考えずに「Yes」をタップしたらスマホがカッと光った。

「えっ!? なにこれすごい!」
「リュカ様から後光が差しとる!」

 驚いたナオとミオが声をあげる。
 あわわ派手に光りすぎ! 咄嗟にスマホを上着の下に隠したけど。出てくる。ダイヤが。ピンポン玉ぐらいの大きさのダイヤが画面からもりもり出てくる。なにこれどうなってんの!? 俺が慌てている間にもじゃんじゃん出てきて、手で受け止めきれなくなる。もしかして五百個全部出てくんのか!?

「ちょ……止まって!? 一旦止まってくんない!?」

 スマホを振ったり軽くはたいたりしたけど、スマホは足をバタつかせるばかりで止まりそうな気配がない。あっという間に持ちきれなくなって、床に盛大にぶちまけてしまった。

 いかん、このままでは正体がバレてしまう! もしこの二人に俺が神だと知られてしまったら………………いや別に問題なくね?
 街中だったら大騒ぎになって無関係な人たちまで混乱させてしまうだろうけど、この二人にはこれからもガチャをまわすたびにお世話になるんだからむしろ説明しておいた方がいいのでは? 俺が神だって証明するのも超簡単、神器を持っててダイヤを出してるんだし。すぐに信じてもらえるはずだ。

 まだまだ続々と出てくるダイヤを適当に受け止めながらリュカの背中から顔を出すと、ナオとミオは両手を合わせてうっとりとリュカに見とれていた。

「今の、奇跡の光ですよね! リュカ様のお美しさが奇跡を起こしたんですね! お素敵です!」
「ほんと、元からお綺麗ですのにますます輝かしくなられて……!」

 ――あの。神の奇跡なら今まさに俺の手元で起きておりますが。ダイヤをもりもり湧き出させて床一面にばらまいておりますが。二人ともリュカに夢中で全然気付く気配がない。気付かないならまあそれでいいんですけど。全然いいんですけど。
 リュカのイケメンぶりがすごすぎるのか、俺のモブっぷりがヤバイのか。多分両方だな。

「………………これも神の御導きです」

 二人の注目を集めたリュカは、塩分多めの真顔でそう呟いた。
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