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06.魔物との遭遇
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修行が終わった。
俺は山に篭る前とは比べ物にならない力を体の内側に感じていた。
少しは強くなれただろうか。
今でもはっきりと思い出せるアイリーンのあの言葉。
『私、強い人が好きなの』
その言葉を思い出すたびに胸がキュッと締め付けられた。
俺はアイリーンの定義する強い人になれただろうか。
…………わからない。
アイリーンは今頃どうしているだろうか。
元気にしてるかな。
まあ俺が心配するまでもなくギル・アルベルトと仲良くやっているんだろうな。
今さらアイリーンに会いに行こうとは思わなかった。
むしろ彼女がいない世界で生きていたい。
さて。これからどうしよう。
故郷からずいぶんと離れたところへ来てしまった。
ここがどこか全くわからない。
とりあえずどこか街へ行くか。
そして再び冒険者として活動しよう。
以前の俺は、弱すぎてどこのギルドにも入れてもらえなかった。
しかし今は前よりも少しは強くなった……と思う。
もしかしたら今なら俺を入れてくれるギルドがあるかもしれない。
ずっと憧れていたギルドでの冒険。
仲間と共に助け合い、笑い合い、時にはぶつかり合って、お互いに成長していく。
そんなギルドでの冒険に俺は憧れていた。
さーて。そうと決まれば街を探しますか。
俺は晴れ渡る空の下を歩き出した。
***
歩くこと数十分。
俺は林の中の道を歩いていた。
ふと、目の前に何かが現れる。
それは体長二メートルほどのイノシシの魔物だった。
確かこいつはバッファールというDランクの魔物だ。
Dランクか。
以前の俺はEランクのゴブリンですら倒すのがやっとだった。
Dランクの魔物なんて遭遇したら即退散しないと殺されてしまうような魔物と思っていた。
だが今は違う。
俺は変わった。
今の俺ならDランクの魔物にだって勝てるはず。
俺は腰を落とし、拳を構えた。
バッファールは俺に向かって突進してくる。
……ん?
やけに突進の速度が遅い。
まるでスローモーション映像のようにバッファールがこちらへ向かってくる。
なんだこいつ。
俺はゆっくりとこちらへ向かってくるバッファールの脳天に、落ち着いて狙いを定める。
あとは山で何回も繰り返したあの動きをするだけだ。
スッ。
構えて。
殴る。
俺の拳がバッファールに当たったその瞬間。
バゴォンッ!
バッファールの身体が粉々に爆散した。
「……え?」
一切の肉片を残すことなくバッファールの身体が消え散った。
まじか……。
つまり俺の拳がバッファールの身体を粉々に爆散させたのだ。
威力が強すぎたのか……。
まあ、こうなるのも無理はない……か。
修行の最後、俺は一発の拳のみで、一つの山を消すほどになっていた。
山を消せてバッファールを消せないはずがない。
よかった。
俺の拳はちゃんと通用した。
でもさすがにやりすぎたな……。
俺は消え散ってしまったバッファールに対して手を合わせた。
すまんな。命を懸けた戦いだったんだ。許してくれ。
次からはもっと手加減して殴るようにしよう。
じゃないと素材も残らず爆散させることになってしまう。
ちゃんと素材は回収して街で売らないとな。
俺金もってないし。
次から遭遇する魔物では、力の加減調節を練習させてもらうとしよう。
***
それからさらに数時間ほど歩き続けた。
「おらよっと」
俺はデコピンほどの威力も出さないよう極限まで手加減した拳で、体長三メートル近くある虎の魔物を殴った。
すると虎の魔物はものすごい勢いで吹っ飛び、木にぶつかって動かなくなった。
まじか……。こんだけ手加減してんのにこの威力かよ。
この数時間で何体かの魔物に遭遇した。
中にはCランクの魔物もいた。ちなみに今の虎の魔物もCランクだ。
しかしCランクの魔物も俺の拳で一発で散っていった。しかも超手加減した拳で。
どうやら俺もCランクの魔物は安全に倒せるくらいにはなったらしい。
嬉しいことだ。
あと、なぜかどの魔物の動きもスローモーションに見えたのだが、これも原因がわかった。
魔物の動きが遅くなっているのではなく、俺の動きが速くなっているのだ。
つまり俺が速くなったせいで、相対的に魔物の動きが遅くなったように錯覚して見えたのだ。
恐らく、他人から俺を見ると、ものすごいスピードで動いているように見えるのだと思う。
一日十万回の山殴りのおかげで拳の威力が上がっただけでなく、身体能力自体も向上しているのだ。
しかもただ身体能力が向上しただけではない。
一日十万回の山殴りをする中で気づいたのだが、魔力は魔法に使用するだけでなく、身体能力強化にも使用することができる。
修行中は、魔力をどのように体に配分すれば効率よく身体を強化して強く殴れるかをとにかく意識していたが、おかげで身体能力強化の技術が飛躍的に向上した。
さらに、魔力総量自体もかなり増えた。
一日十万回の山殴りをする中で、魔力切れを起こすまで魔力に負担をかけることを何回も繰り返し、魔力総量の増加に成功したのだ。
おかげで大量の魔力を身体能力強化に使用することができる。
あれ? 生身一つの戦いで俺に勝てる人間いなくね?
武術だけなら俺世界最強じゃね?
なんて思わず調子に乗ってしまいそうになる。
しかし残念なことにこの世界には魔法と剣が存在するのだ。
魔法や剣を使われたら、俺は勝てるのだろうか。
本当に俺は強いと言えるのだろうか。
ここで調子に乗るのはやめておこう。
魔法も剣も使えないクソ雑魚の俺は、もっと強くならなければならないのだ。
俺は山に篭る前とは比べ物にならない力を体の内側に感じていた。
少しは強くなれただろうか。
今でもはっきりと思い出せるアイリーンのあの言葉。
『私、強い人が好きなの』
その言葉を思い出すたびに胸がキュッと締め付けられた。
俺はアイリーンの定義する強い人になれただろうか。
…………わからない。
アイリーンは今頃どうしているだろうか。
元気にしてるかな。
まあ俺が心配するまでもなくギル・アルベルトと仲良くやっているんだろうな。
今さらアイリーンに会いに行こうとは思わなかった。
むしろ彼女がいない世界で生きていたい。
さて。これからどうしよう。
故郷からずいぶんと離れたところへ来てしまった。
ここがどこか全くわからない。
とりあえずどこか街へ行くか。
そして再び冒険者として活動しよう。
以前の俺は、弱すぎてどこのギルドにも入れてもらえなかった。
しかし今は前よりも少しは強くなった……と思う。
もしかしたら今なら俺を入れてくれるギルドがあるかもしれない。
ずっと憧れていたギルドでの冒険。
仲間と共に助け合い、笑い合い、時にはぶつかり合って、お互いに成長していく。
そんなギルドでの冒険に俺は憧れていた。
さーて。そうと決まれば街を探しますか。
俺は晴れ渡る空の下を歩き出した。
***
歩くこと数十分。
俺は林の中の道を歩いていた。
ふと、目の前に何かが現れる。
それは体長二メートルほどのイノシシの魔物だった。
確かこいつはバッファールというDランクの魔物だ。
Dランクか。
以前の俺はEランクのゴブリンですら倒すのがやっとだった。
Dランクの魔物なんて遭遇したら即退散しないと殺されてしまうような魔物と思っていた。
だが今は違う。
俺は変わった。
今の俺ならDランクの魔物にだって勝てるはず。
俺は腰を落とし、拳を構えた。
バッファールは俺に向かって突進してくる。
……ん?
やけに突進の速度が遅い。
まるでスローモーション映像のようにバッファールがこちらへ向かってくる。
なんだこいつ。
俺はゆっくりとこちらへ向かってくるバッファールの脳天に、落ち着いて狙いを定める。
あとは山で何回も繰り返したあの動きをするだけだ。
スッ。
構えて。
殴る。
俺の拳がバッファールに当たったその瞬間。
バゴォンッ!
バッファールの身体が粉々に爆散した。
「……え?」
一切の肉片を残すことなくバッファールの身体が消え散った。
まじか……。
つまり俺の拳がバッファールの身体を粉々に爆散させたのだ。
威力が強すぎたのか……。
まあ、こうなるのも無理はない……か。
修行の最後、俺は一発の拳のみで、一つの山を消すほどになっていた。
山を消せてバッファールを消せないはずがない。
よかった。
俺の拳はちゃんと通用した。
でもさすがにやりすぎたな……。
俺は消え散ってしまったバッファールに対して手を合わせた。
すまんな。命を懸けた戦いだったんだ。許してくれ。
次からはもっと手加減して殴るようにしよう。
じゃないと素材も残らず爆散させることになってしまう。
ちゃんと素材は回収して街で売らないとな。
俺金もってないし。
次から遭遇する魔物では、力の加減調節を練習させてもらうとしよう。
***
それからさらに数時間ほど歩き続けた。
「おらよっと」
俺はデコピンほどの威力も出さないよう極限まで手加減した拳で、体長三メートル近くある虎の魔物を殴った。
すると虎の魔物はものすごい勢いで吹っ飛び、木にぶつかって動かなくなった。
まじか……。こんだけ手加減してんのにこの威力かよ。
この数時間で何体かの魔物に遭遇した。
中にはCランクの魔物もいた。ちなみに今の虎の魔物もCランクだ。
しかしCランクの魔物も俺の拳で一発で散っていった。しかも超手加減した拳で。
どうやら俺もCランクの魔物は安全に倒せるくらいにはなったらしい。
嬉しいことだ。
あと、なぜかどの魔物の動きもスローモーションに見えたのだが、これも原因がわかった。
魔物の動きが遅くなっているのではなく、俺の動きが速くなっているのだ。
つまり俺が速くなったせいで、相対的に魔物の動きが遅くなったように錯覚して見えたのだ。
恐らく、他人から俺を見ると、ものすごいスピードで動いているように見えるのだと思う。
一日十万回の山殴りのおかげで拳の威力が上がっただけでなく、身体能力自体も向上しているのだ。
しかもただ身体能力が向上しただけではない。
一日十万回の山殴りをする中で気づいたのだが、魔力は魔法に使用するだけでなく、身体能力強化にも使用することができる。
修行中は、魔力をどのように体に配分すれば効率よく身体を強化して強く殴れるかをとにかく意識していたが、おかげで身体能力強化の技術が飛躍的に向上した。
さらに、魔力総量自体もかなり増えた。
一日十万回の山殴りをする中で、魔力切れを起こすまで魔力に負担をかけることを何回も繰り返し、魔力総量の増加に成功したのだ。
おかげで大量の魔力を身体能力強化に使用することができる。
あれ? 生身一つの戦いで俺に勝てる人間いなくね?
武術だけなら俺世界最強じゃね?
なんて思わず調子に乗ってしまいそうになる。
しかし残念なことにこの世界には魔法と剣が存在するのだ。
魔法や剣を使われたら、俺は勝てるのだろうか。
本当に俺は強いと言えるのだろうか。
ここで調子に乗るのはやめておこう。
魔法も剣も使えないクソ雑魚の俺は、もっと強くならなければならないのだ。
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