剣も魔法も使えない平凡男の成り上がり〜好きな人に振られた悔しさで山を一日十万回殴ってたらいつの間にか世界最強の拳を手に入れてた〜

おったか

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08.ギルド加入面接

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 その日は適当な宿を借りて、一晩を過ごした。

 そして次の日。

 身だしなみも整ったことだし、今日はギルドでも探すとするか。
 昔からの憧れだったギルドに今こそ加入するのだ。

 ギルドとは国や民間からの依頼をこなし報酬をもらう団体のことだ。
 その依頼は魔物退治だったり、薬草採集だったり、ときにはペット探しだったりもする。
 ちなみにアイリーンやギル・アルベルトが所属している『月の騎士団』は世界三大ギルドのひとつだったりする。
 『月の騎士団』くらい大きなギルドとなると、その依頼は国や貴族からの依頼のみになってくる。

 俺は別にそんな大きなギルドは探していない。
 規模が小さくてもいいから、仲間と呼べるやつらが集まるギルドに入りたいのだ。

 どこかに良い感じのギルド無いかなー。
 俺はギルドらしき建物を探しながら街を歩く。



 数分ほど歩いてさっそくギルドを見つけた。
 大きすぎず小さすぎないちょうどいい大きさの建物には『ギルド・シュナイダーズ』と書いた看板が掲げられている。

 シュナイダーズか。いい名前じゃん。
 見た感じちょうどいい規模のギルドっぽいな。

 ちょっと中に入ってみよう。

 俺は建物の扉を開いて中に入ってみた。

 建物の中はまるで酒場のようになっており、いくつか置かれたテーブルにそれぞれ数人の人が座り、何やら楽しそうにワイワイと話し合っていた。

 おお。ギルドの雰囲気もよさそうだ。

 ギルドの様子を観察しつつ立っていると、受付嬢らしき女性に話しかけられた。

「ようこそ、ギルド・シュナイダーズへ!  ご依頼の要件でしょうか?」

 受付嬢の女性は、微笑みながらそう言った。
 可愛らしい女性だった。
 こんな可愛い女性もいるのか。最高じゃんシュナイダーズ。
 このギルドに入りたいという気持ちがだんだんと膨らんできた。

「あの、このギルドにはいりたいんですけど」

 思い切って言ってみた。
 受付嬢の女性はにこりと微笑んだ。

「加入希望ですね! かしこまりました。加入審査はギルドマスターが直接行いますので、ギルドマスターのもとへ案内します! ついてきてください」
「ありがとうございます」

 とりあえず門前払いはされずに済んだようだ。
 よかった。
 俺は受付嬢に付いて歩く。

 ある扉の前で受付嬢が立ち止まった。

「少し待っていてくださいね」

 そう言い、受付嬢はその部屋をノックし、入っていった。

 俺は部屋の前に取り残される。
 ギルドマスターかぁ。どんな人なんだろ。

 めちゃくちゃムキムキの男の人が出てきたらどうしよう……。
 緊張する……。


 しばらくして、受付嬢が部屋から出てきた。

「ギルドマスターがお呼びです。どうぞお入りください」

 受付嬢にうながされるまま俺は部屋に入った。
 部屋の中にはテーブルが一つ置いてあり、そのテーブルをはさむように二つの大きなソファーが置いてあった。
 そして片方のソファーにギルドマスターと思われる無精ひげの生えたおっさんが座っていた。

「あんたが加入希望者か! 随分と男前な青年じゃねえか!
 俺はギルドマスターのジャンだ。よろしくな」

 ギルドマスターは明るい口調でそう言った。
 思ったより全然堅苦しくないし、いい人そうだ。
 よかったぁ……。

「ハルトっていいます。よろしくお願いします」
「ハルトか。まあとりあえずそこのソファに座ってくれ」
「ありがとうございます」

 俺はひとこと言って、ソファへと座った。

「じゃあさっそく入団面接といこうか」

 ジャンさんは何やら紙とペンを持ちながらそう言った。
 俺の情報をあの紙に書くのだろうか。
 なんだか緊張するな……。

「はい。よろしくお願いします」
「まずお前さんがどのくらいの能力を持っているか知りたい。実は最近、魔法使いの枠が欠けているからお前さんが魔法を使えると嬉しいんだが……魔法はどのくらい使える?」
「魔法はまったく使えません」
「そうか。それならそれで全然いいんだ。うちは剣士も募集してるしな。じゃあ剣はどのくらいの腕前なんだ? 流派は?」
「剣もほとんど使えません。どの流派も使いこなすことができなかったので我流でやってました」
「……は? 剣も魔法も使えない? お前なんでここに来た?」

 俺の言葉を聞いて、ジャンさんの表情に若干いら立ちが混じる。
 ああ、知ってる。
 この表情……。

 いつもと同じだ。

 俺がギルドに入ろうとすると皆必ずこういった表情をする。

「いや、その……、ギルドに入るのが昔からの夢で……」
「そうか。残念ながらうちは雑魚は募集してねえんだ。剣も魔法も使えねえ雑魚はとっとと帰りな」

 ジャンさんは持っていた紙を、テーブルに置きながらそう言った。
 ヤバい。
 このままじゃ本当に帰らされてしまう。
 どうにかして自分をアピールしないと。

「待ってください! 俺には拳があります。この拳で戦えます!」
「……アホかお前。生身で魔物と戦って勝てるわけねえだろ! 冒険者なめてんじゃねえぞ」

 俺の言葉に、ジャンさんはさらにいら立ちを増していた。
 ジャンさんの表情は鬼のようで、もはやこれ以上の口論は望めなさそうだった。

「そんな……」
「もう帰れ。俺も暇じゃねえんだ」
「……」

 悔しい。
 剣と魔法が使えないというだけでこの扱いだ。
 生身で魔物と戦うのはありえないことなのか?
 俺は昔と変わらず雑魚のままなのか?

 少しは変われたと思ったけど、やはりこういう扱いをされると自信無くすなぁ。

 俺はギルドを後にした。

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