2 / 47
第1章第1話 仮想現実で飯は食えるのか
*2*
しおりを挟む
最初に聞いたのは雑踏、最初に見たのは石畳だった。
まだ頭がズキズキとするけど、ゆっくり上体を起こす。
私は見慣れない路地裏に寝そべっていたようだ。
ここは……?
立ち上がり、もう少し広い通りへ出てみる。
外国……!?
緑色のガス灯、灰色の石畳、レンガの建物。
日本では滅多に見られない光景に外国と錯覚したけど、いや、違う。
行き交う人達の中には二本足で歩く獣や、架空の生き物もちらほら居る。
異種族達が買い物をしたり、レストランで食事していたり、私達と何ひとつ変わらぬ生活をしていた。
詩乃
「これが異世界……これがゲーム……これぞ……VR!!」
私は天高く両腕を上げ叫んだ。
何これ何これ何これ!!
超リアル!これが仮想だなんてありえない!!
突然叫んだ私を、不思議そうに二足歩行の獣達が見る。
目の前を通りがかったスーツ姿の二足歩行の兎に触れてみる。
詩乃
「うわぁ!ふわっふわだー!!」
白色の艶やかな毛並みが指の間を通っていく。
間違いなく兎の毛だ!
兎の紳士
「ちょっと!君いきなり何だね!」
兎はそう言うと足早に去って行った。
取り残された私を更に怪訝そうに見つめる周りの人達。
すごい、みんな私を認識してるんだ!
そして鼻をくすぐる香ばしい匂い……!
匂いの先では屋台で見慣れないパンを売っていた。
五感を含む感覚を刺激しって、刺激し過ぎ!!
だって全部本物じゃん!!
あー!!興奮が止まらない!!
そしてパンが美味しそう!!
猫の店主
「らっしゃい、ひとつ5ゴールドだよ」
屋台に居たエプロンを着けた猫が私を見てニヤリと笑った。
5ゴールドって?あぁ、ここの通貨かぁ。
生憎私はここのお金を持っていない。
詩乃
「えーっとお金無いし、結構です……」
私はそっと屋台を離れた。
うーん、まずはお金稼がないとなぁ。
大体こういうゲームって酒場みたいな場所があって、冒険者はまずそこで仕事貰うっていう流れになってるはず。
でも、菜乃と合流してない以上勝手には動けない。
不安がってた菜乃を1人にしておけないし。
私はとりあえず目の先にあった噴水まで歩いていき、腰掛けた。
にしても全く偽物感が無いこの世界、早く彷徨いてみたくなる。
私はブラブラと足を動かし、周りを見渡す。
そして、ひとつだけ、たったひとつだけの違和感を感じた。
みんな、元からここの住民みたいだなぁと。
私の制服がやけに目立つ。
ジーパンを履いてる人が居たって、私と同じく制服姿の学生が居たって良いと思う。
けれど獣人も普通の人間も、ファンタジー要素強めな服を身に纏っている。
お金稼げば私も装備揃えられるのかなぁ。
そして、いつまで経ってもプロローグが始まらない。
普通、ゲームにはチュートリアルがあるはず。
そこで進め方や物語の世界観とか語られたりするんだけど……。
あまりにも自由っていうか放置し過ぎじゃない?
なんか段々不安になってきた。
あのゲート、私が先に入ったからって菜乃遅過ぎだよ……。
どうしよ、来るよね、大丈夫、きっと来る……。
私の願いとは裏腹に日が暮れてきても菜乃は来ない。
まさか道に迷ったりしてるの?
私はスカートのポケットに入れていたケータイを取り出した。
……圏外になっているケータイなんて無意味。
私ははぁっと溜息をついてケータイをポケットに戻した。
???
「キミ!」
突然の声に顔を上げる。
この世界観には似つかわしくないピンクの布地に蝶や桜の模様が描かれた着物を着た女の人が、カタカタと下駄を鳴らしながら私に向かって走ってきた。
一瞬菜乃に似ててビックリしたけど、違う人だった。
セミロングくらいの黒髪を左側で赤い布を使ってひとつに纏めている。
肌は菜乃と同じくらい色白だった。
詩乃
「私ですか?」
???
「そう、キミキミ!お願いがあるの!」
女の人は息を切らせ、赤い大きな目を細めてニコリと笑った。
???
「今からとーっても悪い人が来て、私がどっちに行ったか聞くと思うの!
そしたらキミは反対の方向を言ってね!」
よろしくっ!と私を軽くハグし颯爽と去っていく女の人。
ふわっと甘い香りだけが残る。
怖い人が来るにしてはあんまり怖がってなかったけど……。
間もなくして私のところにゾロゾロと男の人達がやってきた。
急に周りの人達の空気が重くなったのを感じた。
みんな何だか緊張してるみたい。
男の人達はお揃いの制服のようなものを着ている。
中でも1番上の人っぽい黒髪の男の人が、座っている私に近付き見下ろした。
???
「先程和服の女がここに来たと思うんだが、どっちに行ったか見たか?」
低い声に冷たい赤い目で私に問う。
確かに怖い人だ……。
詩乃
「あ、えっと、あっちの方に行きました、よ?」
私は言われた通り、女の人が走って行った方とは逆を指差す。
男は後ろに居た男衆に軽く振り向き、私が指差した方を顎でクイッと指示した。
すると男らしい勇ましい声ではい!と返事し、集団は駆け足で向かって行く。
男は私にまた視線を移した。
???
「ご協力感謝する」
詩乃
「え、あ、はい……」
まるで蛇に睨まれた蛙のように、私はぎこちない固まった笑顔で軽く会釈。
男は黒いマントを翻し、部下が向かった方に走った。
いや、走りかけ止まった。
小さく、ん?という声が聞こえる。
男はまた私を見る。
正確には私の後ろを見ていた。
???
「……その後ろにある袋は何だ?」
詩乃
「ふ、袋?」
振り返ると、私の後ろに見慣れない赤い布で出来た袋が置かれていた。
な、何だこれ!?
まさか、さっきの女の人がハグした時に置いていった物か!?
???
「貴様……あの女の仲間だったのか!」
明らかに殺気立った男に体が竦む。
詩乃
「ち、違います……!」
???
「問答無用!その袋が何よりの証拠!貴様を捕える!」
腰の剣を鞘から抜き、構える男。
金で縁取られた刃がキラリと光る。
えぇぇぇぇぇぇ!!??
ウ、ウソ、ヤバい、この状況は絶対ヤバい!
戦う?いや丸腰じゃん私!
これはもう逃げるしかない!!
袋を握り締め、私はその場から逃げた。
本当は置いていこうかと思ったんだけど、悪い人には渡したくない。
きっと、いや絶対、奴らの目的はこれなんだから。
おい待て!と後ろから怒号が飛んでくるけど、律儀に待つ程お人好しじゃない。
人通りが多い所を選び、逃げる。
私は小柄だから、人の隙間をスルスルと通って行く。
男は長身でガタイもしっかりしてるので、良い感じに足止めを食らっているように見えたが執念と気迫が怖くて、周りの人達が道を開けてしまっている。
距離がどんどん狭まってくる。
私はサッと路地裏に逃げ込んだ。
角を曲がった瞬間、何かにぶつかりそれと共に樽にダイブする羽目になった。
詩乃
「痛ったたたぁ~!何なの、もう!」
上体を起こして髪や服に付いた樽の破片を払い落とす。
???
「……こっちのセリフだ、コノヤロー……!」
どこからか声がしてキョロキョロする。
すると壊れた樽の下から白髪の男が、不貞腐れた表情でムクっと這い出てきた。
???
「ったく、角を曲がる時は普通スピード落とすもんだろうが……!」
男の人は呆れ顔で、自身の体に付いた破片や砂を払った。
黒い薄手のロングコートに灰色のVネックシャツ。
胸元にはシルバーのドッグタグネックレスが光る。
詩乃
「ご、ごめんなさい!ちょっと今急いでて……!」
???
「急いでるって、なーにそんなに慌てて……」
???
「この私から逃げられると思うなよ、小娘……!!」
男の人の言葉を私の後ろから低い声が掻き消し、心臓が跳ねる。
ゆっくり後ろを振り向くと、先程の男が仁王立ちで睨み付けていた。
???
「完全に愚弄しているな、私を」
???
「うわぁ、すげぇ瞳孔かっぴらいちゃってんじゃん。このお方は……君の彼氏?」
こんな状況でもヘラヘラと笑う白髪男。
詩乃
「違います!追われてるんです!」
???
「はーん、なるほどストーカーってな訳ね」
それも違うけど、訂正してる暇は無い。
剣を構えた男がじわじわと私に迫ってきているから。
???
「大人しく今すぐ私と来てもらおうか」
詩乃
「やだって言ったら……?」
一応聞いてみる。
???
「女子供だろうが斬ってでも連れて行く」
で、ですよねー。
というか、人の気持ちは無いのかこの人……!
???
「随分と物騒なストーカーだな、ヤンデレか?」
私の後ろでそう呟いた男が、よっこらしょと立ち上がった。
そして、座り込んでいた私と追っかけてきた男の間に立った。
気だるげに黒い細身のパンツに付いた汚れをはたく。
???
「貴様もその女の仲間か?」
視線が私から白髪の男に切り替わり、私は少し安堵する。
目の前に立つ男のスラッとした長い脚の間から、男の様子を確認した。
何だか私を睨み付けていた時よりも、もっと怖い顔してる気がする。
赤いツリ目と黒い眉はくっつきそうな程近付け、男を睨んでいた。
男の人が相手だから警戒しているのだろうか。
まあ私みたいな小娘、男の人が本気になったら簡単にねじ伏せられるもんね。
自分と良く似た体格の男相手には臨戦態勢でいなきゃ。
???
「んー、仲間っつー訳じゃねぇけどさー」
男は間延びした声でポリポリと白い頭を掻いた。
少し垂れたやる気の無い青い目を更にやる気無さそうにさせた。
こっちは全く警戒心ゼロなようだ。
ちょっと~!少しは警戒してよね!
後ろに私が居るんだから、あなたがやられたら私もやられちゃうんだから!
???
「仲間で無いならそこを退け。
でなければお前も斬る」
男の人は更に剣を強く構えた。
???
「おうおう、恐ろしい兄ちゃんだなぁ!
さすがに斬られたくはねぇわ。
はーい了解、お望み通り……退いてやる!」
そう言いながらニヤリと笑った男は、ポケットからボールのような物を取り出し、地面に叩きつけ辺りを煙幕で隠した。
???
「貴様っ!!何をっ!!」
咳き込みながら男は叫んだ。
私も当然周りが見えず、男と同様咳き込む。
???
「……行くぞ」
声と共に右腕を掴まれた私は、引っ張られ立ち上がる。
そして、男に腕を掴まれたまま煙たい路地裏を後にした。
まだ頭がズキズキとするけど、ゆっくり上体を起こす。
私は見慣れない路地裏に寝そべっていたようだ。
ここは……?
立ち上がり、もう少し広い通りへ出てみる。
外国……!?
緑色のガス灯、灰色の石畳、レンガの建物。
日本では滅多に見られない光景に外国と錯覚したけど、いや、違う。
行き交う人達の中には二本足で歩く獣や、架空の生き物もちらほら居る。
異種族達が買い物をしたり、レストランで食事していたり、私達と何ひとつ変わらぬ生活をしていた。
詩乃
「これが異世界……これがゲーム……これぞ……VR!!」
私は天高く両腕を上げ叫んだ。
何これ何これ何これ!!
超リアル!これが仮想だなんてありえない!!
突然叫んだ私を、不思議そうに二足歩行の獣達が見る。
目の前を通りがかったスーツ姿の二足歩行の兎に触れてみる。
詩乃
「うわぁ!ふわっふわだー!!」
白色の艶やかな毛並みが指の間を通っていく。
間違いなく兎の毛だ!
兎の紳士
「ちょっと!君いきなり何だね!」
兎はそう言うと足早に去って行った。
取り残された私を更に怪訝そうに見つめる周りの人達。
すごい、みんな私を認識してるんだ!
そして鼻をくすぐる香ばしい匂い……!
匂いの先では屋台で見慣れないパンを売っていた。
五感を含む感覚を刺激しって、刺激し過ぎ!!
だって全部本物じゃん!!
あー!!興奮が止まらない!!
そしてパンが美味しそう!!
猫の店主
「らっしゃい、ひとつ5ゴールドだよ」
屋台に居たエプロンを着けた猫が私を見てニヤリと笑った。
5ゴールドって?あぁ、ここの通貨かぁ。
生憎私はここのお金を持っていない。
詩乃
「えーっとお金無いし、結構です……」
私はそっと屋台を離れた。
うーん、まずはお金稼がないとなぁ。
大体こういうゲームって酒場みたいな場所があって、冒険者はまずそこで仕事貰うっていう流れになってるはず。
でも、菜乃と合流してない以上勝手には動けない。
不安がってた菜乃を1人にしておけないし。
私はとりあえず目の先にあった噴水まで歩いていき、腰掛けた。
にしても全く偽物感が無いこの世界、早く彷徨いてみたくなる。
私はブラブラと足を動かし、周りを見渡す。
そして、ひとつだけ、たったひとつだけの違和感を感じた。
みんな、元からここの住民みたいだなぁと。
私の制服がやけに目立つ。
ジーパンを履いてる人が居たって、私と同じく制服姿の学生が居たって良いと思う。
けれど獣人も普通の人間も、ファンタジー要素強めな服を身に纏っている。
お金稼げば私も装備揃えられるのかなぁ。
そして、いつまで経ってもプロローグが始まらない。
普通、ゲームにはチュートリアルがあるはず。
そこで進め方や物語の世界観とか語られたりするんだけど……。
あまりにも自由っていうか放置し過ぎじゃない?
なんか段々不安になってきた。
あのゲート、私が先に入ったからって菜乃遅過ぎだよ……。
どうしよ、来るよね、大丈夫、きっと来る……。
私の願いとは裏腹に日が暮れてきても菜乃は来ない。
まさか道に迷ったりしてるの?
私はスカートのポケットに入れていたケータイを取り出した。
……圏外になっているケータイなんて無意味。
私ははぁっと溜息をついてケータイをポケットに戻した。
???
「キミ!」
突然の声に顔を上げる。
この世界観には似つかわしくないピンクの布地に蝶や桜の模様が描かれた着物を着た女の人が、カタカタと下駄を鳴らしながら私に向かって走ってきた。
一瞬菜乃に似ててビックリしたけど、違う人だった。
セミロングくらいの黒髪を左側で赤い布を使ってひとつに纏めている。
肌は菜乃と同じくらい色白だった。
詩乃
「私ですか?」
???
「そう、キミキミ!お願いがあるの!」
女の人は息を切らせ、赤い大きな目を細めてニコリと笑った。
???
「今からとーっても悪い人が来て、私がどっちに行ったか聞くと思うの!
そしたらキミは反対の方向を言ってね!」
よろしくっ!と私を軽くハグし颯爽と去っていく女の人。
ふわっと甘い香りだけが残る。
怖い人が来るにしてはあんまり怖がってなかったけど……。
間もなくして私のところにゾロゾロと男の人達がやってきた。
急に周りの人達の空気が重くなったのを感じた。
みんな何だか緊張してるみたい。
男の人達はお揃いの制服のようなものを着ている。
中でも1番上の人っぽい黒髪の男の人が、座っている私に近付き見下ろした。
???
「先程和服の女がここに来たと思うんだが、どっちに行ったか見たか?」
低い声に冷たい赤い目で私に問う。
確かに怖い人だ……。
詩乃
「あ、えっと、あっちの方に行きました、よ?」
私は言われた通り、女の人が走って行った方とは逆を指差す。
男は後ろに居た男衆に軽く振り向き、私が指差した方を顎でクイッと指示した。
すると男らしい勇ましい声ではい!と返事し、集団は駆け足で向かって行く。
男は私にまた視線を移した。
???
「ご協力感謝する」
詩乃
「え、あ、はい……」
まるで蛇に睨まれた蛙のように、私はぎこちない固まった笑顔で軽く会釈。
男は黒いマントを翻し、部下が向かった方に走った。
いや、走りかけ止まった。
小さく、ん?という声が聞こえる。
男はまた私を見る。
正確には私の後ろを見ていた。
???
「……その後ろにある袋は何だ?」
詩乃
「ふ、袋?」
振り返ると、私の後ろに見慣れない赤い布で出来た袋が置かれていた。
な、何だこれ!?
まさか、さっきの女の人がハグした時に置いていった物か!?
???
「貴様……あの女の仲間だったのか!」
明らかに殺気立った男に体が竦む。
詩乃
「ち、違います……!」
???
「問答無用!その袋が何よりの証拠!貴様を捕える!」
腰の剣を鞘から抜き、構える男。
金で縁取られた刃がキラリと光る。
えぇぇぇぇぇぇ!!??
ウ、ウソ、ヤバい、この状況は絶対ヤバい!
戦う?いや丸腰じゃん私!
これはもう逃げるしかない!!
袋を握り締め、私はその場から逃げた。
本当は置いていこうかと思ったんだけど、悪い人には渡したくない。
きっと、いや絶対、奴らの目的はこれなんだから。
おい待て!と後ろから怒号が飛んでくるけど、律儀に待つ程お人好しじゃない。
人通りが多い所を選び、逃げる。
私は小柄だから、人の隙間をスルスルと通って行く。
男は長身でガタイもしっかりしてるので、良い感じに足止めを食らっているように見えたが執念と気迫が怖くて、周りの人達が道を開けてしまっている。
距離がどんどん狭まってくる。
私はサッと路地裏に逃げ込んだ。
角を曲がった瞬間、何かにぶつかりそれと共に樽にダイブする羽目になった。
詩乃
「痛ったたたぁ~!何なの、もう!」
上体を起こして髪や服に付いた樽の破片を払い落とす。
???
「……こっちのセリフだ、コノヤロー……!」
どこからか声がしてキョロキョロする。
すると壊れた樽の下から白髪の男が、不貞腐れた表情でムクっと這い出てきた。
???
「ったく、角を曲がる時は普通スピード落とすもんだろうが……!」
男の人は呆れ顔で、自身の体に付いた破片や砂を払った。
黒い薄手のロングコートに灰色のVネックシャツ。
胸元にはシルバーのドッグタグネックレスが光る。
詩乃
「ご、ごめんなさい!ちょっと今急いでて……!」
???
「急いでるって、なーにそんなに慌てて……」
???
「この私から逃げられると思うなよ、小娘……!!」
男の人の言葉を私の後ろから低い声が掻き消し、心臓が跳ねる。
ゆっくり後ろを振り向くと、先程の男が仁王立ちで睨み付けていた。
???
「完全に愚弄しているな、私を」
???
「うわぁ、すげぇ瞳孔かっぴらいちゃってんじゃん。このお方は……君の彼氏?」
こんな状況でもヘラヘラと笑う白髪男。
詩乃
「違います!追われてるんです!」
???
「はーん、なるほどストーカーってな訳ね」
それも違うけど、訂正してる暇は無い。
剣を構えた男がじわじわと私に迫ってきているから。
???
「大人しく今すぐ私と来てもらおうか」
詩乃
「やだって言ったら……?」
一応聞いてみる。
???
「女子供だろうが斬ってでも連れて行く」
で、ですよねー。
というか、人の気持ちは無いのかこの人……!
???
「随分と物騒なストーカーだな、ヤンデレか?」
私の後ろでそう呟いた男が、よっこらしょと立ち上がった。
そして、座り込んでいた私と追っかけてきた男の間に立った。
気だるげに黒い細身のパンツに付いた汚れをはたく。
???
「貴様もその女の仲間か?」
視線が私から白髪の男に切り替わり、私は少し安堵する。
目の前に立つ男のスラッとした長い脚の間から、男の様子を確認した。
何だか私を睨み付けていた時よりも、もっと怖い顔してる気がする。
赤いツリ目と黒い眉はくっつきそうな程近付け、男を睨んでいた。
男の人が相手だから警戒しているのだろうか。
まあ私みたいな小娘、男の人が本気になったら簡単にねじ伏せられるもんね。
自分と良く似た体格の男相手には臨戦態勢でいなきゃ。
???
「んー、仲間っつー訳じゃねぇけどさー」
男は間延びした声でポリポリと白い頭を掻いた。
少し垂れたやる気の無い青い目を更にやる気無さそうにさせた。
こっちは全く警戒心ゼロなようだ。
ちょっと~!少しは警戒してよね!
後ろに私が居るんだから、あなたがやられたら私もやられちゃうんだから!
???
「仲間で無いならそこを退け。
でなければお前も斬る」
男の人は更に剣を強く構えた。
???
「おうおう、恐ろしい兄ちゃんだなぁ!
さすがに斬られたくはねぇわ。
はーい了解、お望み通り……退いてやる!」
そう言いながらニヤリと笑った男は、ポケットからボールのような物を取り出し、地面に叩きつけ辺りを煙幕で隠した。
???
「貴様っ!!何をっ!!」
咳き込みながら男は叫んだ。
私も当然周りが見えず、男と同様咳き込む。
???
「……行くぞ」
声と共に右腕を掴まれた私は、引っ張られ立ち上がる。
そして、男に腕を掴まれたまま煙たい路地裏を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


