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天瓊を以て滄海を探る
しおりを挟む日本に神社が建てられるようになったのは、神への信仰心への表れであると、誰もが思うだろう。
祭祀対象は神道の神であり、「八百万(やおよろず)」と言われるように非常に多彩である。
神聖とされた山岳や河川・湖沼などから、日本古来の神に属さない民俗神、実在の人物・伝説上の人物や、陰陽道・道教の神、神仏分離を免れた一部の仏教の仏神などの外来の神も含まれる。
また稲荷や猿、鯨、鮭など動物を祭神とする神社、子孫繁栄の象徴として男根の像を祀る神社もある。
しかし、これらの一切は、人々の神に対する「信仰」のために生まれたものではない。
「神」にも派閥が存在し、日本全土に至るまで、それぞれの“縄張り”が存在している。
神は人を「神器」とし、“能力”を授ける。
日本全土に至る神社は、神が持つ「土地」や「領土」の礎でもある。
「神社」の社が大きければ大きいほど、神の力も強いとされる。
神社の「主」は代々変わっており、その土地にまつわる魂が“神号“を継承すると言われている。
志那都比古神(しなつひこのかみ)の神号を継承した獅子王和茶は、四国を代表する神、迦具土神(カグツチ)の傘下に属しつつ、九州地方の神、須佐能乎(スサノオ)が率いる軍勢との戦争が控えていることを知らされていた。
神々には神階と呼ばれる、神号を持つ神に授けられた位階が存在し、その「階級」は特級・一級・二級上・二級・三級・四級の6等級に分かれている。
各地方に「特級」の階級を与えられた神は数人しかおらず、現在日本全土には、8人の特級が存在していることが知られている。
特級の位階を持つ神は「大神」と呼ばれ、一級より下の神々を従えれる権限を授けられている。
また、特級の称号を与えられた神には、『炎、氷、光、闇、風、雷、水、土』から成る8つの『神格』が与えられ、それぞれにまつわる“権能“を与えられている。
北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州。
この8つの地方にそれぞれ神格を与えられた『大神』が鎮座し、日本全土の平和と安寧を築いていた。
しかし、九州の「スサノオ」を筆頭として、他の地方に分布する神格を奪おうとする動きが、令和に入って以降活発化していた。
オノゴロ島におりたち、国産み・神産みにおいてイザナギとの間に日本国土を形づくる多数の子をもうけた黄泉の国の主、『伊邪那美命(いざなみのみこと)』が死んだというニュースが、下界へと降りてきていたからだ。
『伊邪那美命』は、天地開闢において、神世七代の最後にイザナギとともに生まれた。
イザナギとは夫婦となり、先に述べたように、オノゴロ島におりたち、国産み・神産みにおいてイザナギとの間に日本国土を形づくる多数の子をもうけた。
その中には淡路島・隠岐島からはじめやがて日本列島を生み、更に山・海など森羅万象の神々を生んだ。
火の神軻遇突智カグツチ(迦具土神)を産んだために陰部に火傷を負って病に臥し、亡くなるが、その際にも尿や糞や吐瀉物から神々を生んだ。
そして、カグツチはイザナギに殺された。
亡骸は、『古事記』によれば出雲と伯伎の境の比婆山(現在の中国地方にある島根県安来市伯太町)に、『日本書紀』の一書によれば紀伊の熊野の有馬村(三重県熊野市有馬の花窟神社)に葬られたという。
死後、イザナミは自分に逢いに黄泉国までやってきたイザナギに腐敗した死体(自分)を見られたことに恥をかかされたと大いに怒り、恐怖で逃げるイザナギを1500の黄泉軍らに追わせ、最後は自ら追いかける。
しかし、黄泉国と葦原中津国(地上)の間の黄泉路において葦原中国とつながっている黄泉比良坂(よもつひらさか)で、イザナミに対してイザナギが1000人引きの大岩で道を塞ぎ会えなくしてしまう。
イザナミは閉ざされた大岩の向こうの夫にむかって「愛しい人よ、こんなひどいことをするなら私は1日に1000の人間を殺すでしょう」と叫んだ。
イザナギは「愛しい人よ、それなら私は産屋を建てて1日に1500の子どもを産ませよう」と返した。
そしてイザナミとイザナギは離縁した。
この後、イザナミは黄泉の主宰神となり、黄泉津大神、道敷大神と呼ばれるようになった。
そうして人々の魂には「寿命」が設けられたのだった。
黄泉の国へと還り、2度と地上へと帰ることができない“楔“を。
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