プリンセスは殺し屋

平木明日香

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殺し屋稼業

第98話

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 半円が、空間の溝を突く。


 刀の断面が通過する。


 音のした場所から転がり落ちていく肉塊。

 それが、怪物の「左腕」であると知れたのは、瞬きをした直後の景色に、憮然と佇む彼女の姿があったからだ。

 切断面から大量の血が噴き出ている。

 「肉塊」は、握りしめた拳を閉じたまま硬直している。

 地面に落ちた“それ”が、ブーニベルゼの背後で無機質に横たわる。


 サラサラと風に靡く、ストレートヘアー。

 ——重力に反発するスカーフ。


 肩から下が切り落とされ、腕を無くした怪物が、言葉にならない声を発していた。

 血が滴っていた。


 研ぎ澄まされた、「黒」の鍔元から。




 
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