明日、キミと別れる前に。

じゃがマヨ

文字の大きさ
1 / 1

プロローグ

しおりを挟む


 学校の階段を駆け上がると、屋上が見えた。

 11月ももう終わる頃だった。

 風は、まっすぐあたしに向かって吹いている。

 頬は冷たい。

 雪は降っていないけれど、今年もクリスマスは来る。

 トナカイさんこんにちは。

 サンタさんは元気ですか?


 あのさ、神さま。


 息が漏れるんだ。

 その胸の内側で、遠い空を見る。

 少しだけ燻んだ空を見る。

 叫びたい気持ちがあるのに、くよくよしてしまう。

 もう、どこにもいけないんじゃないかって、思うくらいに。


 ひりひりするんだ。

 胸の奥が締め付けられる。

 だから、今日はブラウスは羽織らなかった。

 じっとなんてしてらんない。

 ノートにはたくさんの落書き。

 その横を通りすぎる放課後のチャイムと、うす汚れた上履きは、味気ないあたしの人生の象徴だった。


 上履きを脱ぐ。

 その足で、手すりもなにもない屋上に立つ。

 後悔はなかったんだ。

 夏も終わって、冬の季節が近づいてくる頃、あたしが、置き手紙もなく屋上から飛び降りたことは、あたしにとって確かに大きな一歩だった。


 ステージに浮かぶ一人の女子高生のシルエット。

 ほんの一瞬の間、鋭く動いた靴下の白。

 夕暮れ時に沈んだ校舎とコンクリートは、屋上からダイブするセーラー服の影をさらって、どこまでも遠くへ——


 「あたしはあたしと別れたい」


 神さまに言ったんだ。

 どうかどうか、新しい自分に出会えますようにって。

 屋上で口ずさむ。

 その一つ一つの言葉が、風に乗りながら飛んでいく。

 願い事を。

 胸のうちに秘めた思いを。



 意識の中心がぐんぐん世界に近づいて、激しい車輪の音が前方から膨れ上がる。

 飛び出していきたい感情がある。

 投げ出したい思いがある。

 それはまるで、キャンバスの上に落ちていくたくさんの絵の具みたいだった。

 ポタポタと落ちる液体が風になびかれて、白いキャンバスの上で、カラフルな色が鮮やかに動く。


 それは空に似ていた。

 あっという間に、一瞬を切り裂いていく空に。

 太陽のそばにはたくさんの色。

 雲はすごいスピードで流れて、永遠に形を失っていく。

 その情景の変化は、一直線に吹き抜けた。

 手の届きそうな地面を、間近に感じて。


 グラウンド。建ち並ぶビル。排気ガスの匂い。空気中に充満する酸素。


 今日、あたしはどこにいるかな。

 1秒に触れる向こう岸へ。

 空に、いちばん近い場所へ。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...