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新入部員

第61話

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 「ただいまぁ」

 「おっせ」

 「ふぃ~」


 戻ってきて、速攻パイプ椅子に座り込む健太。

 CCレモンを片手に、うちわを扇いでいる。

 …俺も喉湧いたな。

 あとで買いに行くか。


 「なぁ、やっぱ彼女なん?」

 「はぁ!?」


 岡っちの耳にもすでに届いてた。

 俺とあの女の関係について。

 言っとくが、ほとんど初対面みたいなもんだ。

 健太もツバサも、ろくに話を聞こうとしなかった。

 あんな派手に登場するから、2人とも勘違いしてるんだ。

 直接本人に弁明を求めようにも、余計ややこしくなるだろうと思ってやめにしてた。

 仮に言ったって話を聞かないだろうと思ったからだ。

 ハイハイとかうんうんとか、テキトーな返事ばっかで。


 …とにかく、関わらないことが一番なんだろう。

 が、コイツらはまじで…

 俺の気持ちを知りもしないで、あることないこと突っ込んできやがって。

 なんだその目は。

 そんなキラキラした目で見てきても、何も出ないぞ。

 本当に何もないからな。


 「別に隠すことなくね?」

 「なんも隠しとらんわ!見てみぃ!この真っ裸な心を!」

 「でも聞いたで?仲良いって」

 「誰に!?」

 「隣のクラス」


 いやいやいや。

 誰がそんなこと言ったんだよ。

 アイツか!?

 そもそもお前らは友達の言葉を信じないで、どっから出たかもわからないような噂話に耳を傾けるのか?

 俺は悲しいね。

 お前らがそんな人間だって思うと。


 「…ほとんど初対面って、名前で呼んどったやん。しかも呼び捨て」

 「俺は呼んどらん」

 「朝一緒に登下校しとったって話は?」

 「…あれはやなぁ」


 …ああ、もういい。

 話してても埒が明かねぇ

 アイツに言っとこ。

 自転車貸してやるから、1人で漕げって。
 
 何が嬉しくて変な噂を立てられなきゃならんのだ。

 住む家が見つかったら俺たちは赤の他人も同然だ。

 大体が、おかしな話なんだよな。

 つい、話に乗ってしまった俺も悪いけど…
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