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ライバル

第121話

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 俺と千冬は、高校でもバッテリーを組んでいたらしい。

 高野連に直談判して、公式戦に出場許可をもらい、俺は俺で、プロ注目のバッターだった…と言うのだが、そんな話、信じる方が無理がある。

 プロ注目って、お前なぁ

 それに、高野連に直談判!?

 そんなことできんの??


 「キーちゃんにかかれば、なんだってできる」

 「ふーん…」


 千冬のやつ、高校に上がっても、まっすぐ夢を追いかけてたのか…

 まあ、アイツらしいと言えばアイツらしいか…

 女っ気なんてなかったもんな

 子供の時から、ずっと

 
 「未来のあんたに追いつこうで」

 「追いつく…って?」

 「キーちゃんに会うために、もう一度甲子園に」
 

 …あのさ、前から思ってたけど、千冬を助けるとか、千冬に会いに行くとか、一体なんなんだよ、それ。

 そりゃ未来を変えられるなら変えたい。

 千冬に会えるなら会いたいさ。

 この前海辺で見たアイツの残像。

 胸がドキドキしたんだ。

 すぐ近くにいるような気がして。

 …でも、きっともうアイツには会えない。

 普通に考えたらわかることだ。

 夢と現実は、絶対に交わることはないんだから。

 
 「あんたが諦めん限り、きっとまた会える」

 「…どうやって?」


 女が何者かは知らない。

 この際、超能力者でもなんでもいい。

 会えるってんなら今すぐに会わしてくれよ。

 いくらでも待ってやるから。

 

 「それはできん」

 「…ハッ。そうやろうな」


 知ってた。

 ってか、別に期待してもない。

 当たり前なことを言ってるだけ。

 期待するだけ損ってもんだ。

 …それに、アイツはまだ生きてるんだ。

 …それもちゃんとわかってる
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