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ここは…?

第135話

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 「私か?私は、世界一のピッチャーになる女や」


 あどけない顔。

 自信に満ち溢れた声。

 後ろ髪が軽やかに動いて、ステップを踏んでいくかのような柔らかい足取り。

 足早に階段を登る音が、タン、タンッと、すぐ近くに聞こえた。

 それは、“懐かしい”と言えば、すごく懐かしい感覚だった。


 「…世界…?」


 その“感覚”が近くにあるのを、どうしても引き止めずにはいられなかった。

 足が止まり、見上げた視線。

 俺は彼女を見たんだ。

 聞こえてきたその言葉に、振り向くように。


 「何?」


 ずっと忘れていた感覚が、すぐ目の前にあった。

 でも同時に、そんなはずはないと思った。

 目の前にいる女子高生が、彼女なわけがない。

 …そんなことは、絶対にありえない。

 何かの思い過ごしに違いない。

 ——と。


 「…名前は?」


 もしも世界が違っていたら

 そう思うことが、時々あった。

 夜になって眠る時、朝起きて、カーテンを開ける時。

 日常の、生活の、——色んなところで、バカみたいに想像してた。

 アイツが隣にいる世界を。


 どうすれば会える?

 って、いつも考えてた。

 昨日もだ。

 学校に行く道すがら、海を見るたびに。

 蝉の鳴き声が、耳のそばを掠めるたびに。
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