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アナザーワールド

第171話

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 教えられるもんなら教えたい。

 その方がこっちとしては楽だ。

 納得してもらえるかどうかは別として、いちいち誤魔化さなくて済む。

 別に隠したいことでもないしな

 …でも、なんというか、その



 「ヒントくれヒント」

 「…もうええ。一人で探す」

 「はあ??もったいぶんなや!」

 「どうせからかわれるだけやし」

 「からかわん!」

 「信じてくれとらんのやろ?」

 「あんたの話?」

 「うん」

 「まあな」


 そんな自信満々に言うなよ

 悲しくなるから…


 話してても埒があかないことが途中でわかってきて、手伝ってもらうことは諦めた。

 手伝ってもらうというか、信じてもらいたかっただけだ。

 実際は。

 でも、多分、信じてもらえない。

 そのことがなんとなくわかった。

 さや姉は説得すればなんとかなりそうな雰囲気だったが、思わせぶりな気もする。

 元々そういう人だし。

 優しいけど、他の人よりもずっと現実的な人だ。

 ずっと1人で、家事とか料理とかこなしてきてる人だった。

 千冬の症状を誰よりも重く受け止めて、毎日のように病院に行って。


 俺の話を信じてもらえるかどうかより、2人が楽しそうに暮らしてる様子を見ると、無性に嬉しくなる自分がいた。

 当たり前のように喋って、当たり前のように笑って。

 そんな日常を目の当たりにする機会なんて、今までなかった。

 これまでも、——これからも。

 なのになぜか、ここにいる。

 事故に遭ったことなんて、微塵も感じさせない2人の姿が。



 夜も更けてきたし、ひとまず家に帰ることにした。

 結局誰やねんとしつこく聞かれたが、なんとか誤魔化した。

 言えるはずがないんだよ。

 そう心の中で思いながら、彼女の目を見る。

 
 なんなんだろうな。

 まじで。


 「千冬」って呼べば、ちゃんと返事が返ってくる。

 そんな嘘みたいなことが、平気で起こってる。

 …夢じゃないよな?

 ほんとに

 信じられない気持ちが先行して、思うようについていけない。

 よくわからないんだ。

 ぶっちゃけ。

 無理やり自分を納得させてはいるが、起こってることが衝撃的すぎて…


 とにかく、一旦整理しないと

 なにから手をつけていいかもわからんが、——とりあえず、だ。

 アイツを見つけて、話を聞くしかない。

 
 …ったく、どこほっつき歩いてんだよ

 急にいなくなるなよな

 こちとら、絶賛パニック状態だ。

 心臓バクバクだし、変な汗が体から出てくるし
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