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好きっていうかなんていうか

第182話

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 それにしても、千冬と同じ高校に通ってるなんてな。

 支度できたか?

 と待ちくたびれたように彼女は俺のことを睨む。

 椅子の上で組んだ足を解いて、さっと立ち上がった。

 俺の言葉には聞く耳を持たないようだった。

 さっさと行くぞと言わんばかりに背中を押し、モタついたように急かしてきて。


 ここがどんな「世界」かを、まだ、想像できずにいた。

 隣に千冬がいる。

 それだけで信じられないっていうのに、家の中にいる彼女が、どこか亡霊のようにさえ思えて。

 あまり考えないようにしてた。

 考えるだけ、頭に血が上りそうだったから。

 感情的になるとか、そういう意味じゃない。

 単純に興奮して?って感じ?

 それはそれで変な意味に聞こえるが、もちろんそういう意味でもなく。


 「頼むから、道を逸れるようなことすんなよ?」

 「いい加減にしてくれん?」


 なんて説明したらわかってくれるんだ?

 ぶっ飛んだ話だってのはわかってる。

 理解できないのも重々承知だ。

 ただわかって欲しいのは、アイツは別になんでもないってこと。

 本人に説明してもらうしかないかもしれない。

 いくら説明したって、埒があかない…

 フラれたとかナンパしたとか、被害妄想にも程がある。

 ありのままを伝えたらこれだよ…

 こんなことなら嘘ついときゃよかった。

 もう少しマシな、合理的な話っつーか?
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