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俗に言うアレ

第222話

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 「まあ、部外者やしね」

 「俺、ここの生徒なんやけど」

 「その格好で??」

 「今はほら、あれやけど…」

 「でもすごい目で見られとるよ?」

 「知ってる」

 「大丈夫なんかな?このまま入って」


 大丈夫じゃね?

 別に悪いことしてるわけじゃない。

 学校っつったら一応公共の場だろ?

 ようはショッピングモールとかと同じ括りだ。


 「なんか違うような…」

 「そうか?」


 …うん、まあ、冷静に考えたらそうか。

 なに馬鹿なこと言ってんだ俺。

 ジャージでもなんでもいいから、上に羽織れるものがあればなぁ

 一応ごまかしが効くじゃん?

 派手な服じゃなければ。


 完全によそ者扱いされている。

 神戸高の制服って案外目立つから困る。

 グリーンのチェックとかいらないんだよ。

 どシンプルな須磨高の制服と比べたら、明らかに「他校の生徒」って感じがして歩きにくい。

 しかも“俺たち2人が”だから、余計に。


 「探してる子、いそう?」

 「…いや」


 教室を見たが、誰もいなかった。

 アイツのいるC組には2、3人駄弁ってたが、知らない連中だ。

 何度か階段を登り降りして、めぼしい場所を探ってみた。

 といっても、アイツがいそうな場所ってどこだろう?

 学校じゃろくに話もしないし、なんなら無視してたくらいだ。

 話しかけてほしくなかったから。


 「どんな子なん?」

 「せやから言うたやろ?犯罪者や」

 「犯罪者って(笑)ウケるんやけど」

 「だってほんまのことやし」
 
 「ええやん別に。ジュース飲まれたことくらい」

 「それだけやない!」

 「お怒りですなぁ」

 「そりゃ怒るやろ??勝手に家に入ってくるわ、許可もしとらんのに野球部に入るわ」

 「私やったら歓迎するけど。だって野球上手いんやろ?」


 上手いけど…

 そういう問題じゃない。

 全然言うこと聞かないんだぞ!?

 せめて言ったことくらいは守れよって思う。

 “話しかけんな”とか“勝手に冷蔵庫開けるな”とか、小学生でもわかるだろ。

 プライバシーってもんがないんだ。

 アイツには。

 おおかた、甘やかされて育ってきたんだろうよ?

 じゃなきゃ、あんな平然としてらんぞ。

 他人ん家で。



 教室を見ながら、廊下を歩いた。

 放課後だから、スリッパの音がよく響く。

 C組以外の教室にも、駄弁ってる生徒が何人かいた。

 こんな時間に何やってんだろ。

 補習でもあんのかな。

 俺もこの前言われたんだ。

 テストの点数があんま良くなかったから。


 「おるとしたら、どこ?」

 「そうやなぁ」


 アイツはともかく、他の知り合いがいるとしたら、多分あそこかな。

 音楽室とか、図書室とか。

 でもさっき図書室には誰もいなかったな。

 あとあそこ。

 2階の理科室。


 放課後、たまにパソコンルームに行ったり、理科室に顔を出しに行ったりしてた。

 理科室は将棋部の部室代わりになってるから、よく遊びに行ってたんだ。

 気の合う友達が何人かいて。
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