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俗に言うアレ

第228話

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 グラウンドには明かりがつき始め、日は暗くなっていく。

 秋に近づくにつれて、日が落ちるのがあっという間だ。

 校門前で自転車に乗りながら、駄弁ってる女子が何人かいた。

 もう18時か…

 「バイバイ」って声が、下駄箱の方から聞こえてくる。

 「また明日ね!」

 とか、

 「さいなら~」

 とか。

 早く帰る人は早い。

 部活によっちゃ、早く切り上げる部も結構ある。

 3年生はもう引退してる人もいるし、帰宅部もちらほら。

 

 野球部の部室をこっそり見てみたけど、何もなかった。

 入学してきた頃と何も変わらない。

 あの頃、まだ俺たちの部室はなくて、ソフトボール部の倉庫になってたんだ。

 部活を立ち上げた後に無理言って、倉庫を空けてもらった。

 今じゃいい思い出だ。

 わざわざ校長室に土下座までしにいったってのに、すんなりオッケーをもらったことも。

 ロッカーや椅子を、他の部からお裾分けしてもらったことも。


 「ここが部室やったん?」

 「ああ…」


 ロッカーがないどころか、面影すらないんだが…

 もう一度中を見た。

 うーん…

 場所は合ってるよな!?

 周りを見渡す。

 場所は間違いない。

 壁際のこの場所。

 狭い間取り。


 「倉庫やね」

 「…うん。そうやな」

 「ほんならやっぱ、野球部は存在しとらんってこと?」

 「そうみたいやな…」
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