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100億光年の時の彼方で

第358話

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 あーでもないこーでもないと言いながら、阪神高速線の下を潜った。

 結局学校に着いたのは8時前だった。

 30分の遅刻だ。

 練習はまだやってたけど、あと15分もすれば終わる。

 朝のホームルームが8時半からだから、大体10分前には着替えて部室を出なきゃいけない。

 先輩達が俺のことを睨んだ。

 つっても、優しい人たちばかりだけど。


 「おっそいわ!なにしとったんや」

 「すいません。全部千冬が悪いんです」

 「はあ!?私のせいちゃうやろ!」

 「お前のせいやろ」

 「どこがらへんがや?説明してみぃ」

 「まあまあ2人とも」


 喧嘩を宥めてくれるのは、ぽっちゃりデブの門田先輩。

 パーマがかかった頭に、太い二の腕。

 ふっくらしたほっぺたが、なんともチャーミングなムードメーカーだ。

 ちなみに俺を叱ってきた先輩は、赤松先輩。

 通称アッキー。

 イガグリ頭に太い眉毛。

 程よいつり目が、人相を悪くしてる。

 目つきが悪いってよく言われてる。

 しょっちゅう怒鳴ってるし、口が悪いし。


 「赤松さんならわかってくれるでしょ?」

 「何がや?」

 「千冬のズボラ加減」

 「…うーん」


 ケツを蹴ってくる千冬。

 俺はほんとのこと言ってるだけなんだけど?

 財布取ってすぐに向かえば、こんなに遅くはならなかった。

 違うか?


 「まーた喧嘩しとんかお前ら」


 金属バットを肩に担いで、左手に脱いだ手袋を持っている。

 バッティングゲージからスタスタと出てきたのは、津嶋先輩。

 チームのキャプテンだ。



 「違うんですよ!こいつが悪くて」

 「また亮平か」

 「またってなんですかまたって」

 「最近寝坊しすぎやろ」

 「今日はしてないですよ!」

 「ほんならなんで遅刻したん?」

 「財布忘れたんです」

 「財布ぅ!?」
 

 
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