上 下
368 / 394
100億光年の時の彼方で

第366話

しおりを挟む


 「はぁ…」

 「何ため息ついとん?」

 「なんでも。こっちの話」


 こっちの世界に来て、アイツの家に行ってみた。

 アイツっていうのは女のこと。

 神戸に住んでるって言ってたから、思いきってのぞいてみた。

 そしたら玄関であしらわれた。

 「キーちゃんに伝えてくるまで、戻ってくんな」と。

 色々聞きたいことがあったんだ。

 千冬のこともそうだが、こっちに来る前に俺にしたこと。

 変な感触がまだ残ってるんだが、まさか…ね

 ほっぺたに何かが触れたんだ。

 それは間違いない。

 妙に温かかった。

 それに、柔らかかった。

 あれは一体何だったんだ…?

 言い寄ったが押し返された。

 「近づくな変態!」と、お隣さんにも聞こえるくらい大声で。


 伝えるって言っても、何をどう伝えればいいんだよ。

 千冬は今幸せそうにしてる。

 俺が告ったところで、何かが変わるとも思えない。

 それに…


 まあいいか、とりあえず。

 どうせあれだろ?

 アイツが勝手に盛り上がってるだけだろ?

 千冬を助けるって言ったって、俺が告ることとどう関係があるっていうんだ?

 色々説明されたのはされたが、腑に落ちないことがたくさんある。

 「千冬と結婚する」って、アイツの妄想なんじゃないのか?

 そうやって俺を誘導して、恥をかかせようとしてるとか。

 大体結婚なんて、無理難題すぎだっつーの。

 まだ付き合ってすらいねーし。

 誰とも。


 さーて、1限目の準備でもすっかな。

 カバンを漁ってるとイッシーが来た。

 プリントちゃんと配ったか?と俺のことを指差す。

 あれ?

 さっき石田さんが配るって言ってたんだがな。

 まあいいや。

 今から配りまーす。

 ミッチー足邪魔。

 通るからしまってくれん?

 あと、俺の消しゴム返せ。

 すっかり返してもらうの忘れてた。

 昨日課題やってる時に気づいて、予備もないから困ったんだよ。

 今日はちゃんと持ってきたんか?
しおりを挟む

処理中です...