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毒キノコでも食った?

第379話

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 「えー、教科書75ページを開いてください」


 教室の窓から見える景色は、いつも綺麗だ。

 神戸市内の街並みがよく見える。

 神戸新聞社のツインタワービルと、阪神高速線のジャンクション。

 高校に入ってから、少し感じるようになった。

 時間が経つのが早いなって、授業のチャイムを聞きながら。

 昔はそんなことなかった。

 目標に向かって走れるのが、バカみたいに楽しかった。

 西中の校舎からいつも見てた。

 海岸線の湾曲と、街の上を走る環状線を。



 えーっと、75ページね。

 なになに、溶液と水溶液の性質ゥ??

 なんじゃそりゃ

 絶対難しいじゃん…

 ハァ…

 やる気が出ないなぁ…

 


 ◇◇◇



 練習試合に向けて、試したいことがあった。

 中学の時みたいにストレートだけじゃ通用しない。

 元々カーブは投げれたけど、もっと投球に幅をつけなきゃダメだ。

 バッターを討ち取るには緩急が必須。

 ようはタイミングを崩せって話で、もう少しバリエーションを増やしていかないと話になんない。

 
 「チェンジアップ?」
 
 「うん。どう思う?」


 ポール間走中にコウに聞いた。
 
 もし球種を増やすとしたら何がいいかなって。

 真面目な話、高校生でチェンジアップを使ってるピッチャーは少ない。

 今のプロ野球選手でも、チェンジアップを使うピッチャーは少なくなってきてる。

 フォークとかスプリットとかが主流になってきてて、ツーシームとかも流行ってきてるかな?

 これから先上のレベルに行こうとするんだったら、他のピッチャーにはない独自の球を磨く必要があると思った。

 とくに私なんかは、真っ向から勝負なんて、だんだん難しくなってきてるワケだし。

 
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