The Dead Crisis‐デスゲームに巻き込まれたけど生き残る!

Bastion

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一章「GAME START」

13話「格付け」

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「これで、終わりか……?」


「恐らく、音源探知にも反応がない」


 フラググレネードとフラッシュグレネード等の軍需品使用により、アビレッドシーバーを撃破を撃破したTEAM Wolf。

 しかし撃破してしまった途端、周囲が静かになった事で、レイヤは少しばかりではあるが違和感を覚えた。
 先程までは荒々しく、恐怖と焦りを煽るかの様な禍々しく、何も分からない様な雰囲気がこの場所を支配していたが、戦闘が終わってしまった途端、その雰囲気はまるで去り行く嵐の様にして消えてしまったのだった。

 まるで、拍子抜けしてしまったかの様な気分だ。あまりに呆気なく、簡単に終わってしまった結末にレイヤは驚いていた。


「まだ、何かあるのか……いや、と言うか皆無事か!?」


 周囲の雰囲気の事よりも、今は他の仲間達が生きているかどうかを確認する方が先決だ。
 最初はこの後も何か予想外の展開があるのではないかと、顎に手を当てて考え込んでいたレイヤであったが、今はそれよりも先に他の皆が五体満足で無事でいるかどうかを確認しなければならない。

 ハッとしたレイヤは、仲間達の事を確認する為、すぐさま周りを確認した。


「自分は何も問題ない…」


「私も無事だ!」


 周囲に確認出来るのは、ヴィランと椿の二人だけ。
 しかし、今の所視界に入る限りでは紗夜とΣの姿は見えない。先程、紗夜の事を思いっきり突き飛ばして以降、その姿を確認出来ていないのだが、何処に消えたのだろうか。


「すまぬ、やつがれも無事だ」


(無事だと伝えるビープ音)


 一旦は、彼の視界から完全に姿を消してしまっていた紗夜とΣであったが、少し大きめの声で無事かどうかを確認する言葉を叫んだ為、二人はすぐにレイヤ達の前に姿を現した。

 取り敢えず、使える戦力がまだ死んではいない事を確認し出来て、少しばかりレイヤは安心した。

 見た所、二人共。特に紗夜は着ている和風な服に多少なりとも汚れや傷が目立つものの、全く問題はなさそうに見える。
 Σに至っては、体が強固な装甲である為、全く損傷は見られなかった。


「少しばかり面倒な奴らに絡まれてな、Σと協力して全員斬り伏せておいた」


(撃破したと伝えるビープ音)


「え、他にも誰かいたのか?」


 まさかの、レイヤ達と同じ様に戦闘を行っていたと証言する紗夜。
 意外過ぎる答えに、てっきり逃げ隠れしていたのかと思っていた椿は紗夜に質問を投げた。


「あぁ、少々雑魚に手を煩わせてしまって」


「椿、モニターにはザコ機体を率いているって記載されてたぞ」


 椿の無知さに、レイヤは腕を組みながら言葉の横槍を入れる。
 モニターには、敵であるアビレッドシーバーは名も無きザコの機体群を連れていると記載があった。
 レイヤは絶対に状況分析を怠らず、敵の情報は必ず頭に叩き込んでいる。

 少なくとも敵の情報や所属を一切確認もせずに、目に入った敵をただ只管に殺しまくって血を浴び続けている椿とは違う。
 しかし、彼女の暴れる獅子の様な戦い方もまた一つの戦術だ。
 敵の撹乱や妨害にはなる。


「あ、忘れてた……でもよ、倒しといてくれたありがとな!」


「大丈夫だ、戦わなければ腕が鈍る」


(平気だと言うビープ音)


 ザコの機体共も上手く片付けてくれた様であった。
 ひとまず状況が一度落ち着いた事で、レイヤは軽く口から息を吐いて、その場に立ち止まる。


「レイヤ、お疲れ~今回も生き残ったな」


「この程度、何回もくぐり抜けてきたさ…」


「なぁなぁ、シャワー浴びたい」


「あ、僕も思った」


「一緒に浴びる?」


 彼女の何気ない一言と、さりげないボディタッチ。
 彼の腕をギュッと勢い良く掴み、その豊満な胸を強く自分の腕に押し付けてくる。これは彼女からすれば単なる愛情表現的なものなのだろう。
 しかし、男と言う身の自分からすれば少しばかり照れ臭くなってしまう。
 証拠に、今レイヤは頬を僅かに赤くしていた。

 身長の差の都合で、レイヤが視点を下に下げてしまえば、彼女の胸元は簡単に見えてしまう。
 余計に興奮と劣情を煽ってしまいそうな状況だ。


「さて、戦闘が開始されて転送されたと言う事は……」


「終わってしまえば……」


『転送開始』


 あの声が聞こえた。転送された時と、全く同じの声が…。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 転送開始、と言う機械的な声が脳内に響くと同時にレイヤは一瞬だけ気を失ってしまった。
 この森に転送された時と全く同じ感覚だ。

 フラっと、まるで脳が強く揺らされたかの様にして、倒れる時の感覚に似ている感じだった。
 しかし、その気持ち悪くなる様な感覚はすぐに途絶える。
 次に目を開ければ、そこはもうあの殺風景な部屋であったからだ。

 終わった、レイヤはやる気のない感じで呟く。
 ひとまずは死なずに済んだ様であった。これで少しばかりは落ち着ける。


「さて、やっとゆっくり……」


「これより、採点を開始します」


 ようやく、一休みする事が出来ると思い、安堵の言葉を漏らしたレイヤ。
 しかし、そう簡単に休む事はまだ出来ない様であった。
 再び部屋の中に響く、機械的で人の声とは思えない合成音声。


「採点……?」


「どう言う事だ…」


 機械的な声は、採点を開始すると言うが、レイヤ達は何の事かと、全くもって知らない素振りを見せる。

 しかし、状況理解がままならない彼らの事等露知らず。
 先程まで真っ暗な画面であったモニターが再び起動し、何か文字が映し出される。


 ===========


<結果発表>

「ラノベ典型形主人公(レイヤきゅん)」

 10点

 一口コメント
 おめぇは殺すよりも女とヤッてる方がいいんだろw


「メス狼(椿)」

 0点

 一口コメント
 惜しかったなw


「ガスマスク不審者(ヴィラン)」

 10点

 一口コメント
 フラグを投げる!必死だね


「ドスケベ娼婦侍(紗夜)」

 5点

 一口コメント
 活躍はまた今度……


「型落ち戦闘兵器(Σ)」

 5点

 一口コメント
 ピービーブービーピー


 ===========


「何だよ、きゅんって……このあだ名考え奴は阿呆なのか…?」


「め、メスって……失礼にも程があるだろうがぁ!」


「…………」


「ど、ドスケベ娼婦……誉れある武士に対して、何たる事を!侮辱を超えているぞ!今すぐ出てこい、首を斬り落としてやる!」


(複雑な心境のビープ音)


 中々に下らない結果と言えるだろう。皆、点数の事なんかよりも自分に付けられたあだ名に対して強い怒りを燃やしている。
 特に、女性二人はかなりご立腹な様子だ。

 しかし仕方ない、同情せざるを得ない。メスだの娼婦だのかなり好き勝手に呼ばれている。
 だが、僕も僕で君ではなく、とまるでおねショタの展開にありそうな呼ばれ方をされている。
 そんな風に呼ばれるのはもうご勘弁だ。バニーガールの服を着せられた時も言われていた気がするが、もう経験はしたくない。


「やれやれ……」


 周囲で騒ぎ立てる二人を見つめながら、レイヤは見ていられずに両目を手で覆い、そう呟いた。


 ===========


 点数について

 てきをゲキはする度に"点数"を得る事が出来ます

 点数や結果よって特典を受け取る事ができまふ

 特典表

 生き残りボーナス
 次の戦いまでの生活必需品や食料をプレゼント

 100点
 運営より装備ガチャを一回引ける

 1000轤ケ
 縺薙�謌ヲ縺�°繧峨�隗」謾セ縲∝�縺ョ荳也阜縺ク縺ョ蟶ー驍�


 ===========


「どう言う事だ……?」


「文字化けしている」


 レイヤは思わず、モニターに表示されている文字を二度見した。
 生き残りボーナスで生活必需品や食料を得られる、100点を稼げば装備ガチャ?なるものを一度引く事が出来るとの事らしい。
 しかし、レイヤが気になったのはその様な事ではない。

 1000の後に表示されている文字達、それはどう頑張っても読める様な文字ではなかった。
 どこからどう見ても、異常な程までに文字化けしてしまっている。
 全くと言って良い程、解読出来る様な文字ではなかった。


「レイヤ、読め…」


「る訳ないよ…」


 流石にこれはどうしようもない。義眼の能力を発揮しようとも、出来る様な事ではない。
 一応、目を凝らして見つめたりはしたものの何かが見えてきた訳がない。


「さて、本当にこれで終わりだろ…僕はシャワー浴びてくる」


「あ、私も!」


 言っていなかったかもしれないが、一応シャワー室はこの場所には完備されている。
 とは言っても大きめの湯船がある訳ではなく、壁に湯の出るシャワーが複数設置されていて、壁で隔ててあるぐらいだが…。

 しかも各個室にある訳ではなく、全員で共用して使う。
 傭兵時代もこんな感じだったが、しっかりと湯には浸かりたくなる。しかし簡単にはいかない様であったので、レイヤは湯を浴びるだけで妥協する事にした。


「それじゃ、少し失礼しますね…」


「待てよ、レイヤ~!」


「え、あの二人まさか一緒に……」


「放っておけ……」


 そう紗夜に一言だけ言い、ヴィランは静かにその場を去り、自室へと足早に戻っていった。


「……後で、湯を浴びるとするか…」


 独り言を呟き、汗で火照る体をそのままにしながら、紗夜はその場に立ち尽くしていた。
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