いつか会えることを願って

瑠渡

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「フーミリア、明日から出かけるから支度をしなさい。」

「お父様、そんなっ。家にいてはいけませんか?」

「だめだ!家に閉じこって刺繍ばかりしおって。少しは外に行かないと、人に顔も覚えてもらえない。嫁にも行かれないぞ!」

「……わかりました。」





「お母様、行ってきます。」

「気をつけて!お父様の後をちゃんとついているのですよ」

「はい、行ってきます!」


そうお母様に言ったけれど、お父様は苦手なのよね。
できるだけ別宅へ着いたらじっとしていよう。

「フーミリア、もう少して着くからな。チャドがきっと住みやすく用意してくれているはずだ」

「チャド?あぁ、何年ぶりでしょう?もう10年くらいかしら?」

「もうチャドは執事になって30年だ。良い歳になった。あいつにも悪いことした、嫁さんを見つけてやらなんだからなぁ。今からでも来てくれる人がいれば良いが。」

「侍女の中にはいませんでしたの?」

「チャドは眉目が良いから、屋敷で雇うと皆、チャドに色目を使うが、チャドに睨まれて終わりだ。仕事を第一に考える人がいないと、怒っとったわ。わははは」

「まぁ、そんなこと知りませんでしたわ。私が小さいときでしたから仕方ありませんね。チャドに会うのが楽しみになってきました。ふふっ」


「着いたぞ」

「旦那様、お嬢様、お久しぶりでございます。お疲れになりましたね、応接間にお茶をお持ちします」

「チャド!久しぶりでございます。」

「お嬢様、大きくなられましたね。」

「そうねぇ、もうお父様に結婚の話までされるような歳になりましたわ」

「良いご縁があると良いですね」

「ありがとう。でも、お父様に内緒よ。まだ家で趣味の刺繍をずっとしていたいわ。ふふっ」


「フーミリア、着いたばかりだが執務室で仕事をしてくるから、お前はゆっくりしなさい」

「はい、お父様。」


「美味しいわね。空気が良いからか?お茶も美味しいわ。あら?誰かしら?」

窓を開けてご挨拶しないといけないわね。

「こんにちはー、何かご用ですか?」


「こんにちは、お嬢さん。チャドはいますか?」


「「!!!」」


(綺麗!!)  (素敵な人だ。)


「あっ、チャドですね、お待ちください」


あの人だれ?とても素敵な目をしていたわ。この辺りに住む人なのね。

あら?チャドがいないわ。あの方に伝えないとっ。
あら?ベニヤ?素敵な人だから早速側へ行ったのね。チクッ

「あの、チャドが見つからなくて」

「お嬢様!チャドですか?私が直ぐに探しに行ってきますから、お嬢様はお部屋に行っててください」

はぁー、追いやられてしまったわ。
仕方ないわね。素敵な人だったけど……。
ベニア、好きなんだわ。きっと。
良いわね、自由に話しかけられて。






「フレディ様。ようこそ」

「チャド、すまないね。またあの種が欲しくてね。早速もらいに来たよ」
「矢車草の種ですか?用意しましょう」

「今日はお嬢様が来てるのかい?」

「そうです、旦那様と休養をかねて。少しは外に連れ出さないと家にいてばかりとおっしゃられて。」

「通りで夜会でも会ったことはないな」
「えっ?夜会?フレディ様は??」

「いや、友達に連れていってもらったのさ。お嬢様の名前は?」

「フーミリア様です。今年17歳になられます。旦那様もそろそろ探さないとと言っておられました」

「ふーん」

「フレディ様、お茶を飲みましょう」

「ありがとう、ベニア。忙しいからまた来るよ」

「「ヮィヮィワイヮィヮィ」」



外は楽しそうね。あの人と話せて羨ましい。
えっ?、何を思ってるの?私ったら。


刺繍でもして、心を落ち着かせよう






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