千里の道も一歩から

もちた企画

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第一章 伯爵の策略と子爵の苦悩

第7話 英雄のできあがり?

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第7話 英雄のできあがり?
ドドドドドドーー!!

地響きまでする音が聞こえる。
メイちゃんさんは『素晴らしい』と何度も頷いていた。

「ふぅぅ」

弟は深呼吸すると頭を机に乗せる。

「だ、大丈夫?」

「うん、ちょっと疲れた」

ちょっとか?と疑問に思うが飲みこもう。
形勢逆転とはこのこと。

大きな大きな岩は弟が「よし」と言って手を一度叩き消えた。砂埃が舞う敵陣営は動かなかった。

メイちゃんさん部隊はそのまま真っ直ぐ敵陣に向かい残った兵士を薙ぎ倒している。

蹂躙ーーーいや、もっと怖い言葉があるんだろうけど絶対勝てない相手に逃げることもできない状況はなんとも恐い光景だった。

しばらくすると母さんが後ろから「何してるのー?」と声をかけてきたので「父さんを見てるの」って答えたらズズいと顔を水晶玉に近づけて「どこ??」とちょっと怖かった。恐怖はここにも。

「メイちゃん、父ちゃん見せてー」

弟が声をかける。

『はい、マスター』

視線が下がり地面に降りたつと父さんが座り込んで遠くの光景を見ていた。

「あなた!!」

叫ぶ母さんにビックリしてのけ反ってしまいボクは椅子から転げ落ちる。

「メイちゃん、父ちゃんに母ちゃんが見てるから何か言ってと伝えて」

『はい、マスター。御尊父様、貴方様の奥方が見ておられますよ』

『ぇ、何??なんて言ってる?』

「もっと簡単にー」

『はい、マスター。奥様が私の目を通して見てます。何か一言お願いします』

『見てる?見てるって…むしろ味方で良いのか?』

『あ…はい、もちろんです』

なるほどと手を打ち自分で納得するメイちゃんさん。

『そういえば、申し訳ありません。ご挨拶が遅れまして私はマスタージェイクの専属メイドでメイちゃんと申します。以後お見知り置きを』

『あ、あなたのおかげで助かったけど敵がいなくなったのもその……メイちゃんさんが??』

『いいえ、マスターから借りて操作しただけです』

・・・

『なんだか分からないが窮地は脱した!ありがとう!』

メイちゃんさんの肩をバンバンと叩きいつもの父さんに戻った。

「あなた無事なのね」

両手を組んで胸に押し当てて母さんが俯き泣いていた。
やっぱり心配だったじゃないか。ボクまで泣けてきた。

「あとは掃討戦だから時間の問題だけだね」

領主陣営が呆気にとられる中、メイちゃんさんの軍団は進行して掃討戦も終了。
その場で白い軍団が消えて風の音だけになる。

「メイちゃん、今はみんな混乱してるから一旦離れて様子見でー」

『はい、マスター』

『それでは一旦離れます、敵はもう居ませんのでみなさんで休息を取られたらどうでしょうか?私のことは他言無用でお願いしますね』

釘を刺すのを忘れないメイちゃんは森の影へ移動する。
父さんが周りに声をかけて皆は集まり生き残った無事を喜んでいた。

◇◇◇◇◇


・・
・・・

領主の兵士数名と農兵が集まると敵陣の様子を見ていた斥候が敵全滅の知らせを持ってきた。
動く影なし。逃走した形跡もないという「殲滅」で終わった。
敵の遺物をどうするか話し合っていると馬の走る地響きが近づき皆の前で止まった。
ざわめく周りをよそに先頭からその場に合わない貴族服にマントを羽織った男性が歩み寄ってくる。

「戦ご苦労、私はクレール・ド・リヴィエール。隣の領地で伯爵をしている者だ。こちらに子爵代理は居るだろうか?」

「は、はい!」

文官のように見える痩せた男が前へ進み寄り顔を見せる。

「そちか、こちらで詳細を知りたい。今の戦況はどうか」

「はっ!今すぐ!」

足早に伯爵の下に駆け寄る文官はそのまま伯爵と共に離れて行く。残る兵士と農兵はその場で座り込み状況を見送る。

幾ばくかの時が過ぎて伯爵が前に出てくる。文官の姿は見えず立つよう指示がある。

「今回の戦、誠にご苦労!この場で褒美を渡す。我が兵士と共に一列に並んで欲しい」

手前にいる子爵兵士から伯爵の兵士を並ばせ二人ペアとなり並ぶ。ほんの30名ほどなのですぐに並び終わると北を向いて待てと指示が飛ぶ。

「やれ」

伯爵が呟くと正面から霧が立ちこめ視界を塞ぎどんどん濃くなり前が完全に見えなくなった。
静寂が包みドサっと音だけが聞こえる。

ドサッ ドサッ

次々に倒れる音が続き兵士が伯爵の元へ戻っていく。

「揃いました」

「よし、もういいぞ」

「はっ」

霧が薄くなり晴れていく。
そこには先ほどまで立っていた子爵兵士と農兵の姿が首を切り裂かれた状態で倒れていた。

「練度が伺えるな、晴れた天候時にここまでの濃霧を作り出すとは…」

「全員を確認」

一人の兵士が走ってくると伯爵に進言する。

「うむ、何か持っていたか?」

「いえ、何も」

兵士はすぐに返答し隊列に戻る。

「ご苦労だった。こいつらを敵のところにでも捨てて何も残してはならん。その足で子爵へ使いを頼むぞ?私が向かうとな」

上機嫌で馬に乗る伯爵はそのまま走りだし遺体を踏み進む。他の兵士は片付け班と奪取班に分かれて敵の遺留品を奪っていった。







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