【完結】いずれ忘れる恋をした

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【1章】選択肢ミス

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コナルリア王国の王都に最も近い街、ゲル。
それなりに栄えているこの街のメインストリートから少し離れた閑静な住宅街の細い通りに面してひっそりと佇むのは 街の人々から親しまれている菓子屋 兼 喫茶店、"トロン"。
そこから漂うコーヒーの香りと明るい笑い声は、近辺の住民たちの癒しであり、平和の象徴であった。

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「父さん、母さん、こっちの片付けは終わったよ」
「そうか、ありがとうな。明日のこともあるし、今日は先に上がってなさい」
「シー、今日もお疲れ様。ありがとう」
「うん、分かった。お疲れ様でした!」

両親に挨拶をして、上の階にある住居スペースに移動する。今や1人用になった自室の窓から空を見上げると、分厚い雲が黒いキャンバスを覆って、星の瞬きは見えそうになかった。

「…明日は雨か」

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菓子屋 兼 喫茶店 を営む我が家。
父さんは菓子を、母さんはコーヒーなどの飲み物と食事を作って提供しているこのお店。その娘である私は今、将来 この店を継ぐために修行中だ。




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