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31「幽霊騒動1」
しおりを挟む「…ん…、……なんで律ちゃん一緒に寝てるの…?…え…俺襲われてる?」
「…」
目が覚めてすぐこんなことを言われてぼやぼやする頭のまま声のした方を見る。
声の主は、目の前にいた。
あまりの近さにここは現実じゃないのかと一瞬思案するが体温や感触がそれを否定した。
少しだるい頭。完全に寝不足だ。
隣にいる三ツ矢とはぴったりくっついて寝ていたみたいで、少し汗ばんでいた。
このままでいるのは気まずいので距離を取って今言われた言葉の意味を考える。
「…ここ、俺のベッドで勝手に寝たのは三ツ矢なんだけど…」
辛うじてそう突っ込むと、三ツ矢が頭上で笑った。
「…うん、そうだった。いやあ、結構寝れるもんだねー、新しい発見だわ…楽しかったね。また一緒に寝よーね」
「絶対いや」
厳しいなあと、苦笑いしてゆっくり起き上がると三ツ矢が軽く伸びをした。
俺も身体を起こすが、うまく寝がえりとか打てなかったせいで身体がギシギシとあちこち痛んでゆっくりとしか動けない。
「三ツ矢ってどこでも寝れるの?全然起きなかったね…」
「んーなんかそうみたい。俺もびっくり」
俺は何度か夜中に起きては隣にある体温に落ち着かなかった。
でも三ツ矢は俺が身じろぎしても全く意に介さないように気持ちよさそうにすやすや寝ていた。
まあ、三ツ矢の眠りが深いお陰で俺は壮馬の部屋に行けた訳だけど…。
そう言えば昨日は色々と混乱していて気が動転していたせいでスルーしていたが、寝る直前に抱きしめられたことを思い出す。
なんなんだこの距離感は。
急に距離が近くなった気がする。
確かに昨日の出来事で仲良くなった気もしないでもないけど…。
ホットケーキあげたから懐かれたのかな?
ただ一緒に作っただけだぞ…。
だめだ。うとうとと眠りの狭間を行ったり来たりしてたせいでうまく頭が働かない。
「なんかさー律ちゃんて時々いい匂いがするんだよねえ。女の子みたいな甘い匂いっていうのかなあ、その匂いのおかげで眠れた気がする。なんか香水でも使ってるの?」
そう言われてぎくりと肩が揺れた。
「なんも使ってないよ!てか、匂い嗅がないでくれる!?」
「いやーそうだよね、ごめんごめん。変な事言っちゃった、律ちゃんは立派な男の子なのにね」
「なんかその言い方…馬鹿にされてる気がする…」
匂いってなに?
女の子みたいな匂い…??
そう言えば、初めて体質が出た時壮馬も匂いを気にしてたような…。
すんすんと自分の匂いを嗅いでみるが全く分からなかった。
やっぱり三ツ矢は危険だ。
体質がばれた時にどうなるのか全く予測できない。
手掛かりを見つけなきゃいけないのにこんな調子で大丈夫かな。
「ご飯食べ行こうよ。ぐっすり寝たらお腹空いたー」
三ツ矢が軽く身だしなみを整えて立ち上がった。
くぅと俺のお腹が鳴って返事したので一旦考えるのをやめてご飯を食べに行くことにした。
「や、まじだって。スピカの奴が言ってたもん」
三ツ矢とご飯を食べてロビーに戻ると、ロビー横の休憩スペースに人だかりができていた。
見たことある顔ぶれに足が止まる、寮長と天城さんに不破さんだ。
一体集まって何の話をしているんだろう。
「律ちゃん、どしたの?」
急に立ち止まった俺を不思議に思ったのか後ろから声を掛けられる。
それと同時ぐらいに天城さんが俺を見つけて手を振ってきた。
話題が気になったので、これ幸いとその輪に入ることにした。
三ツ矢も特に何も言わずに俺の後についてくる。
「おはようございます」
「あ、おはよー、律くん。ふふっ…昨日ね…出たんだって…」
「あの、出たって何が…?」
「これだよ、これ…」
これと言いながら天城さんは両手をプランと目の前で垂らしてゆらゆら揺らした。
なんだろう…?
まるでおばけのジェスチャーみたいだな、と思ってからはっとする。
「え、あの…それって…まさか…」
「まさかのまさかだよ。幽霊。んー俺も見たかったなあ」
「ゆ、ゆうれい…?」
「スピカの奴が見たんだって、消灯時間後の誰もいない廊下を歩く幽霊の姿を…」
天城さんが迫真の演技でにたあと笑ってこちらに顔を寄せてくる。
俺は顔が強張って身動きが取れなくなってしまった。
やっぱりおばけだった!
ここにきて急にホラー要素出てきた!
やだ、この世界ってホラーゲームだったの?
昨日って…俺一人で廊下歩いたよ…?
スピカってことは星寮に出たってことなのかな。
海寮は関係ないよね?そうであってほしい。
詳細を聞きたいようなこれ以上聞かず立ち去りたいような…と思っていると後ろにいた三ツ矢が楽しそうに声を上げて会話に混ざってきた。
「まじすか!えー俺結構出歩いてるけど見たことないなあ」
「…三ツ矢お前は俺の前でよくそんな話ができるな…。…見つけたらさすがに罰則与えるぞ…」
「その辺俺はうまくやるんで、大丈夫ですよお」
あっけらかんと言い放つ三ツ矢に寮長が苦笑いをした。
三ツ矢って消灯時間後もうろついてるの?
しかも寮長の前で言っちゃうんだ…。
そう言えば昨日俺の部屋に来た時も慣れた感じだったな。
「律ちゃんユーレイだってさ、どんなユーレイだったのかなあ…」
「えっ!う、うん…そだね…」
楽しそうな声で問われたがどう返したものか…。
俺のぎこちない返事を聞き、目を丸くした後、三ツ矢がうんうんと頷いた。
からかわれるかと思って身構えるが、ふっと目を細めて微笑んだかと思うと顔を寄せてこそっと耳元で囁かれた。
「大丈夫だよ、怖かったらまた俺が一緒に寝てあげるから」
囁きが耳から腰まで伝わり、ぞわりと震えると遅れて耳元がじんじんと熱くなった。
慌てて掌で耳を覆う。
恥ずかしさに潤む視界の中で三ツ矢を睨むと先ほど度は打って変わって楽しそうに笑っていた。
やっぱりからかわれた…!
「こ、怖くないし!ていうかもう部屋に入ってくんな!」
俺の反応に笑いを堪えている三ツ矢の肩をポカポカ殴っていると、そのやり取りを見ていた寮長がまあまあと嗜める。
俺の事を宥めるように肩をぽんぽんと軽く撫でられたので渋々腕を下ろした。
寮長に感謝するんだな…三ツ矢め…。
「俺たちも夜は見回りしてるからそう心配するな。大方何かの見間違いとか面白がって噂を流したとか…そんなとこだろう」
「いやいや寮長、俺はそうは思わんけどなあ。この寮ってリノベされて綺麗にはなっとるけど築年数自体は古いから出てもおかしくないと思うけどねー。今までだってちょこちょこそういう話あったし」
安心させるように寮長が笑いかけてくれた傍から、その横で天城さんが即座に否定の言葉を放った。
俺は血の気が引いた顔を引きつらせて天城さんを見る。
隣の不破さんが苦い顔をしてため息をついて、寮長は笑ってはいたがこの状況をどうしたものかと顎を擦って唸っていた。
「…夏目が怖がってるだろ、やめろ玲」
「だってさーこの寮って元々おとぎ話をなぞって建てられたって話じゃん。関係あるかもよー…ふふっ…興味あるなあ、お化け…。律くんも一緒に探してみる?」
「えーっとじゃあ俺らはこの辺で、ね!律ちゃんもう行こー」
さすがに空気を読んだのか三ツ矢が助け船を出してくれる。
俺もそれにこくこく頷きこの場を後にすることにした。
寮長が苦笑いして、しょせん噂話だからとフォローしてくれたが俺はもう普通に怖い。
しばらくは引きずりそうだ…。
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