俺は絶対に男になんてときめかない!~ときめいたら女体化する体質なんてきいてない!~

立花リリオ

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57「おでかけ2」

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寮の受付で外出の申請をして俺達は寮の門をくぐった。
学校の門を出た先には建物はなく長い下り坂があるだけだ。
街まで出るにはこの長い坂を歩いて下りて行くか、電車もしくはバスで行く方法がある。
バスは通学時間の朝と夕方の本数が多くなっているためお昼から出かける場合電車で行くのがベストだろう。

「駅は…こっちだったな」

あらかじめ地図でルートを検索して予習しておいたためその記憶に従って進もうとしたら三ツ矢が俺の行き先とは違う方向を指した。

「こっち近道だよ。海の方通っていくと早く駅に着くから浜辺を抜けて行こ」

なるほど、砂浜を抜けて行くのか。
これは地図でルートを調べても出てこないなあ。
寮の門の壁を伝って歩いた先、雑草が生い茂ったところにぽっかりと人が歩いて出来たであろう獣道があった。
みんなここを通って駅に行っているのだろう。
ザクザクと草を踏みしめて歩いていると、段々と道が開けて目の前には海が広がっていた。

「海!」

海…!
そうだここには海があったんだ。
学校からだとあまりよく見えないんだけど砂浜もあって寮から降りて行けるって言ってたな。

ああ、波の音だ…。
落ち着く。
潮の匂いと繰り返される波のせせらぎを感じながら海でさんぽするのもいいかもしれない。

「ここって星辰ヶ丘の生徒ぐらいしかいないから、結構隠れたスポットなんだよね。今度一緒にさんぽしにこよっか?」
「うん!」

三ツ矢に問われて思わず元気よく返事していた。
俺の返事ににこりと笑うと、時計に目をやり慌てたように歩き出す。

「あんまりのんびりしてる時間なかった!急ごー!ほらー壮馬くんも走って!」









「はあ、間に合った…」
「だねー」

列車内で息を整えながら辺りを見渡す。
平日の昼間なので、そこまで混んではいなかった。
俺達のようにテストが終わって街へ繰り出す星辰ヶ丘の生徒らしき人たちがぽつぽつといる。

「今日はどこに行くの?俺それなりに知ってるから大体案内できると思うけど」

三人で開いている椅子へ座るとスマホを取り出しながら三ツ矢が聞いてきたが俺は目的の店についてどう言えばいいのか悩んだ。

「えーっと…そうだな。雑貨屋さんを見たいんだけど…」
「雑貨屋?雑貨かー…何件か知ってるけど何か探してるの?」
「えっ!いや、特に目的のものがあるかと言われるとそうじゃないんだけど…」
「おっけー。じゃあその辺を中心に見て回ろっか。帰りは夕食までに帰るってことにしといたから遅くても7時ぐらいまでには戻ろうかな」
「うん、ありがとう」

めちゃくちゃ助かるな。
段取りを組んでくれるし目的地も把握してくれている。
攻略に役立つものが売っているということは雑貨なんじゃないかという俺の目論見なんだけど事前に周辺の雑貨屋について調べてもそれらしいお店はヒットしなかったから、自分の足で探すしかないっぽいし。

「壮馬くんはどこかある?」
「いや、俺は別に…」
「わかった。街についてからでもなんかあったら教えてねー」
「ああ」

目的の駅までは1駅なので時間もさほどかからなかった。
駅員のアナウンスを聞いて身なりを整えると立ち上がる。

駅の中に電車が入りスライドしていく窓の外には思っていた以上に人が多くて少しだけ驚いた。
俺達が下りた後、入れ替わりになる形で列になって待っていた人たちがゾロゾロと電車に乗り込んでいく。

「結構人多いんだな」
「ここ、乗り降り多い駅だからね、有名な会社も結構あるから降りる人も多いよ。電車通学の学生さんは朝とか大変だって言ってたよ」
「へえ…」

改札に向かうと更に人が増えて人口の密度が増す。
人波を避けながらなんとか改札を抜けると、そこは学園の丘から見えていた街並みがあった。

「おお…」

なかなかに都会だ。
これは遊ぶところには困らなさそう。
週末になると寮生たちが遊びに出かけるのもわかる。

「よーし、まずは雑貨屋さん見に行ってみよっか」
「おねがいします!」
「あはは、任せといてー」

久しぶりに感じる街の賑やかさに気持ちが高揚してちょっと声も弾んでしまったかもしれない。
慣れた様子で迷いなく歩いて行く三ツ矢の後ろについて改札を出てすぐの駅ビルに入って行く。

ああ、確かに駅ビルには服屋とか雑貨屋があったりするからな。
こんな駅ビルにアイテム屋さんがあるのかな…あったら駅からすぐに寄れて便利な気はするけど…。

エスカレーターを登って4階で降りると、生活雑貨のお店があった。

「うーん…これは違うかな?」
「…だな…、一応店内も見みるか」

壮馬と小さく会話して、ぐるりと店内を一周したがいたって普通の雑貨屋さんだ。
女子向けの可愛いものを置いてある。
少しだけ居心地が悪かったが三ツ矢は気にした様子もなく、これかわいいねーだとか言いながら店内を楽しそうに回っていた。
壮馬はただ後ろをついてくるだけでいつものポーカーフェイスだ。
俺もこのぐらいのメンタルが欲しい。

「なんかいいのあった?」
「えーと、そうだな…」
「この駅ビルだとここぐらいなんだよね雑貨屋さん。ちょっと歩いたところにもあるよ。そっちに行ってみる?」
「うん、お願いします」

俺の反応を見た三ツ矢が探しているところと違うと察したのか新たな提案をしてくれたので早々に駅ビルを後にして次のお店へ向かうことにした。




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