俺は絶対に男になんてときめかない!~ときめいたら女体化する体質なんてきいてない!~

立花リリオ

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62「俺がする」※

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体質の事を知ったからと言って三ツ矢がそこまでする義理はない…。
黙っていてくれればそれで…。

「…壮馬は俺の体質を戻す方法を知ってるから…」
「……俺じゃできないのかな?」

やんわりと断りを入れたら見るからにしょげて眉毛を下げて悲しそうな顔をされてしまった。
しゅんと、垂れた耳が見える気さえする。
どうしよう、ぼんやりした頭で必死に考える。
そうだ、戻る方法を聞いたら三ツ矢は諦めるかもしれない。

「戻るためには…、キスするんだよ、俺と…」
「…、…キス………?」

ぽつりと呟いてそれきり何も言わなくなった三ツ矢にほっと息をつく、さすがにそこまでさせてしまうのは気が引ける。
俺と三ツ矢は確かに出会った当初よりも仲は深まったかもしれないがキスとなると話は別だろう。
なにかと男を毛嫌いしているとこがある三ツ矢には難しいと思う。

「壮馬にお願いするから大丈夫だよ」

安心させるように笑いかけると途端三ツ矢の顔が強張り腕を思い切り掴まれる。
ぐっと力を込めて掴まれた腕に走った痛みに思わず顔を顰めた。

「…、…待って……じゃあ、律ちゃんと壮馬くんは体質が出る度にキス、してるの…?」
「え…!?それは、し、仕方なくね!?…別に、それ以外に他意はないから…!壮馬の名誉のためにもそこは否定しておくよ!」
「…戻るためにはしないといけないんだね?それは壮馬くんじゃなくても、体質を知っている人なら、…例えば俺でも」

掴まれた腕が熱い。
あまりに真剣にじっと見詰められるので働かない頭で少しだけ考える。
ん?ううん…確かに…?
今しがた体質のことを知られてしまった訳だし…。

のぼせた頭の中でトクトクと心音が響いて、思考が溶けていった。
腕から伝わる熱と、射貫くような視線にさらされてなんだか三ツ矢がそう言うならいいのかという気さえしてくる。

ふわふわしたまま頷いた。
頷いてしまった。

「う、うん…?…うん…それは、三ツ矢が大丈夫なら…いいのかな?…え、えー?本当にいいのかな…?」
「いいよ、俺出来る」
「へ…?」

戸惑いながらも俺が頷いたのを確認した三ツ矢が身を乗り出して顔を寄せて来る。
間が抜けた声が出たのと同じぐらいにもう唇が触れる数センチのところまで来ていた。
掴まれた腕はびくともしなくて三ツ矢は躊躇なく迫ってくる。気が付けばちょんと唇同士が触れ合っていた。

「…ん……」

触れた唇が離れて確認するようにじっと瞳を覗かれた。

「ていうか、壮馬くんとそういう事してたって聞いちゃったら引けないよ…」
「、え…?…んんっ…」
「…、ん…、キスって言っても、色々な仕方があるよね…今触れるだけのやつをしたけど、戻ってないみたい…。もう一回しても大丈夫?」
「、う、うん…だいじょうぶ…」

混乱したまま同意するとまたふわりと優しく触れて先ほどよりも数秒長くくっついた後、唇が離れた。
戻っているのか確認するためか、顔を覗きこまれてじわりと目頭が熱くなって視界が潤む。

キスする度にこれやるの?
こ、こんなの、恥ずかしすぎる…。

「律ちゃん、どういうキスしたらいいの?教えて…」
「え…?、どういうって…言われても、…わ、わかんない…」

どういうキス…?
そんなのわからない…。
ハグと同じ要領なら触れ合ってればそのうち戻るんだろうけど…。
そのためにどういうキスをしたらいいのかなんて全く想像つかなかった。

「じゃあ、順番にしてくね」
「え、…あ…、みつ、っ……」

ぼんやりと考えているところに先ほどよりもしっとりとくっついた唇がちゅ音を立てて俺のを食むように動いた。
その動きにぞわりと腰が震えて逃げそうになるがいつの間にか腰に回っていた腕によって逃げることは叶わなかった。
角度を変えて何度も啄まれては離れるのを繰り返したあとゆっくりと名残惜し気に離れていく。

「ふ、…はあ、ん……っ」

強張った身体のせいか、うまく空気を取り込めず肩で呼吸を整えようとする。
目の前の三ツ矢はそんな俺の様子を逃さないと言う強い瞳でこちらを見ていて。

「…不思議だね、確かに見た目は女の子なのに、ちゃんと律ちゃんだ。表情とか、喋り方とか…全部…」
「そ、そうなの?自分じゃわからないけど、…俺ってわかるのか…良かった」
「うん、すごく…かわいい…」

あまりに真剣な顔をして言うのでなんだかまずいと直感で感じた。
この空気を打破するために何か言わなきゃと思った。
でも話そうと開いた口はパクパクと動いただけで声は出なかった。

頭に血が上る、顔が熱い。

可愛いって言われて、嬉しいなんて、いつもの俺じゃ考えられない。
なん、なんだよ。
そんな顔をして見ないでほしい。
恥ずかしいのに、嬉しいって思ってしまう。
わけがわからない、頭の中がぐちゃぐちゃだ。

「…ちょっとだけ、身体…触ってもいい?…嫌だったらしない」
「…、…ちょっと、だけなら…」

違う、ダメだって言えよ。
なんでまんざらでもないみたいに言ってるんだよ。

「本当に、女の子のからだなんだね…ここも、ここも…柔らかい…」
「…ぅ、…はっ……♡」

確かめるようにすーっと伝う指先が控えめに胸元や腰、お尻まで伸びてくる。
触れるか触れないかという撫で方をされると何故だかしっかりと触れるよりも焦れったくてぞくぞくしてしまう。

「…ここ…どうなってるのかな……」
「…っん…♡…三ツ矢…?」

ぴたりとお腹の下で止まった指先がする、と撫でた。
ぼそりと独り言みたいに呟かれた言葉が耳をくすぐってひくりと腰が揺れる。
向けられた視線はどこか期待を含んでいてお腹の下を見つめる三ツ矢の事を何故だかわからないが、少し怖いと思ってしまった。
恐る恐る三ツ矢に声を掛けると、はっとしたように手を離して苦い顔をして目を逸らされる。

「…ごめん、元の姿に戻らないとね…、…、‥‥…」

謝られたあと、何か呟いていたようだがのぼせた頭では言葉を捕えられずよく聞こえなかった。
ふう、と落ち着けるように息を吐いた後、普段通りのふにゃっとした笑顔を見せた三ツ矢の手が頬を包んだ。

「…律ちゃん…キスの続き、しよ…」

ぬるりと濡れた感触と同時に躊躇なく舌先が潜り込んでくる。
戸惑って縮こまった俺の舌先を見つけるとぬるぬると絡んできて肩がビクリと揺れた。
がっちりと顔を包まれているせいで顔を背けることも舌から逃げることもできない。

「…ん、~~っ…♡♡…ふ、ぅ……っ…♡」
「ん…、……はあ…っ」

口が開いて少し隙間ができた事で安心に緩んだ舌先をじゅると音を立てて吸われる。ぞわぞわと伝わる気持ちよさに震えていると三ツ矢のぬめった舌が俺のを捕えて絡みついてきた。

あ、あ…♡
舌先絡めると…あたまぼんやりして、…。
きもちい、い…♡

熱い、ぬるぬるしたのを擦り合わせられるとじわじわと体の中に何かが胸に溜まっていくような不思議な感覚を感じる。
いつの間にか自分からも身体を寄せてキスに夢中になってしまっていて、縋るように三ツ矢のシャツを握ったまま唇を合わせていた。

「ん、律、ちゃん……ベロ熱いね……すごい、きもちいい…はあ、キスしてるだけで、たまんないな、…ん、っ…」
「…ふ、あ、あ…♡♡…んんっ…」
「…ああよかった…律ちゃんも、とろとろになってる…戻るまで、いっぱいしようね…ん…♡」

涙の膜でぼやけた視界の先、三ツ矢が嬉しそうに笑っていた。




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