過去と未来と彼女

アア

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解決に向けて

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 彼女に宮下さんを救うと宣言して、数十分。僕はその数十分の間に、彼女からいじめっ子が宮下さんをいじめていた原因と、彼女なりに用意していたいじめ問題の解決方法を聞いていた。
 まず、いじめっ子が宮下さんをいじめていた原因だ。
 彼女はある日、痺れを切らして宮下さんをいじめているいじめっ子に何故宮下さんをいじめるんかを聞いたらしい。そしてその答えは、「いつもクラスで一人でいて、クラスの雰囲気を壊したたから粛清しただけ。最初はちょっといやがらせするだけのつもりだったんだけど、反応を見ているうちに楽しくなっちゃって止めらんなくなったってのもあるんだけどね」というものだったらしい。
 何て気持ち悪い考え方なんだろうと思った。
 一人でいる彼女のせいでクラスの雰囲気が壊れる? くだらない。
仮に彼女が一人でいるせいでクラスの雰囲気が壊れるのだとしたらもうそのクラスの雰囲気は初めから壊れている。
 粛清? 自分のやったことを正当化するためにそんな言葉を使うな!
 反応を見ているうちに楽しくなって止められなくなった? 
止められなくなったんじゃなくて止める気がなかったんだろう? 宮下さんをいじめることでストレスを解消したかったんだろう? そのストレス解消に振り回される彼女がどれだけ辛いかなんて気にしなかったんだろう? まったく、反吐が出る。
と、僕が頭の中でいじめっ子に対しての怨嗟を吐き出していても意味はない。
問題は、どうやっていじめを解決するかだ。
そして、次はどうやって彼女が用意しているいじめ問題の解決方法の話になった。
彼女が用意した解決方法とは僕や部長が彼女の友達になるというものだった。
彼女が言うには、宮下さんがいじめられていた原因は彼女がクラス内で孤立していたためであるため、宮下さんがクラス内での一人でいる時間を減らすために友達になることでいじめ自体が起こらないように、あるいはいじめが起こってしまったとしても宮下さんに少しでも寄り添えるようにという考えらしい。
僕も、その考えには概ね同意だ。
いじめにおいては、いじめられる方に原因はないという考え方が一般的ではあるが、今回の場合はいじめている原因が(くそみたいな原因だと思うし、一つも共感できないが)彼女がクラスで一人でいたことであることははっきりしているし、その方法で解決するということで問題ないと思う。
 ただ、僕には一つ疑問があった。
 それは、僕と過去の彼女は宮下さんとすでに仲のいい関係だったのではないかという疑問だ。もし仲が良かったのだとしたら、この方法では解決できないだろう。そう考え、僕が彼女に問うと、彼女は
「咲ちゃんとの仲か…… まあ、概ね良かったとは思うけどそれは部活の中でだけだったし、なりより咲ちゃんがいじめられる前は仲が良かったとは言えないかな。君の家に行ったのも私一人だったしね……」
 と少し寂し気な瞳を見せながら言った。
 過去では、宮下さんとは触れ合う時間が短く、仲のいい関係になったころには宮下さんはもう僕達を信用してくれなくなっていて彼女の提案してくれた作戦が使えなくなったということか。
「そっか…… でも今は違うよね。君が今の僕達と宮下さんが仲良くなれるように色々としてくれたから」
 彼女は、未来から来て、宮下さんと今の僕達が仲良くなれるように色々と頑張って動いてくれた。そして、その頑張りのお陰で彼女の提案してきた作戦が取れるのだ。
 であるならば、僕がやるべきことは一つ。宮下さんがいじめられるよりも先に宮下さんと友達になることだけだ。
「じゃあ、明日から宮下さんと友達になれるように頑張るよ!」
「うん、ありがとう。俊太君」
 僕が改めて宣言すると彼女は少し笑いながらそんな風に言葉を紡いだ。
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