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先輩と僕
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「あなたのことが好きです」
文芸部の部室にて僕は知り合って一週間の先輩から突然そんなことを言われた。
「突然どうしたんです?」
とりあえず聞いてみる。
「突然って、別にそんなことなくない?」
知り合ったばかりですよ」
「一週間もたってるじゃない!」
「一週間しか、じゃないですか?」
僕が言うと先輩はムーっと可愛らしく頬を膨らませながらこちらを睨んでくる。
その仕草が可愛らしくて僕は思わずくすっと笑ってしまう。
「なんで笑うの?」
「いや、先輩の顔があまりにも面白いから」
僕が言うと先輩は「見ないで!」と言って手で顔を覆いさらに向こうを向いてしまった。
そんな可愛らしい行動を繰り返す先輩に僕は再度問いかける。
「それで、本当にどうしたんですか?いきなり告白まがいのことをしてきたりして」
「告白まがいって言うか告白なんだけど……」
「まあどっちでもいいんですけど。なんで急に?」
詳しくは知らないが告白というものはもっとこうロマンチックなものであるような気がする。少なくとも僕ら以外の文芸部員がいる中ですることではない。そのせいで全部員がこちらに注目してしまっている。
そんなことを考えていると先輩が顔をこちらに向けなおしながら口を開いた。
「こういう気持ち自分の胸にしまいこんでるだけじゃ相手に届かないから。相手のことをどれだけ思っていても声に出して伝えなきゃ相手には届かない。相手がどこか遠くへ行っちゃって気持ちを伝えられなかったと後悔しても遅いから。だから伝えることにしたの、あなたが好きだって」
「……」
「私と付き合ってください!」
先輩の言っていることの全てをきちんと飲み込む。
そして僕は自分の気持ちを口にした。
僕は一人の女性と一緒に公園のベンチに腰かけながら、昔のことを思い返していた。
「どうしたの、ぼうっとしちゃって?」
「あ、ごめん。ちょっと昔のことを思い返してたんだ」
「昔?」
「そう、昔。と言っても小学生の時のこととかじゃなくて高校生の時のこと」
「高校生の時のことって……私と付き合い始めたときのこと?」
今現在、僕は隣に座っている彼女と付き合っている。高校のころから付き合い始めて、もう付き合って五年目だ。でも、思い返していたのはそのことではない。
「うんん、もう少し前のこと。僕に大事なことを教えてくれた先輩のこと」
「あ、文芸部の時の」
「そう、君も一緒に見ていたあの時のこと」
僕は結局あの後、先輩の告白を断った。先輩の告白は素直に嬉しかったが、先輩の言葉で気が付いたのだ。僕には遠くに行ってしまう前に自身の思いを伝えなければならない相手がいることに。
そうして、僕はそのままの先輩を振った勢いのままに同じ部室にいた彼女に告白し、晴れて付き合うに至ったのだ。
後から聞いた話だが、先輩は僕が先輩以外の人に好意を持っていることに気が付いていて、その上で僕の恋を後押しするためにあんな場所で僕に告白をしたらしい。まったく、頭が上がらない。
先輩には感謝してもしきれない。先輩が居なければ僕は今頃、深い後悔の中にいたかもしれないから。だからこそ……
「今度、あの時の文芸部での同窓会の時に改めてお礼を言おうと思ってるんだ」
「あれから何回もお礼言ってるじゃん」
「お礼は何回言ってもいいんだよ」
だって、僕が今も彼女と一緒に笑って過ごせるのは先輩が大切なことを教えてくれたからなのだから。
文芸部の部室にて僕は知り合って一週間の先輩から突然そんなことを言われた。
「突然どうしたんです?」
とりあえず聞いてみる。
「突然って、別にそんなことなくない?」
知り合ったばかりですよ」
「一週間もたってるじゃない!」
「一週間しか、じゃないですか?」
僕が言うと先輩はムーっと可愛らしく頬を膨らませながらこちらを睨んでくる。
その仕草が可愛らしくて僕は思わずくすっと笑ってしまう。
「なんで笑うの?」
「いや、先輩の顔があまりにも面白いから」
僕が言うと先輩は「見ないで!」と言って手で顔を覆いさらに向こうを向いてしまった。
そんな可愛らしい行動を繰り返す先輩に僕は再度問いかける。
「それで、本当にどうしたんですか?いきなり告白まがいのことをしてきたりして」
「告白まがいって言うか告白なんだけど……」
「まあどっちでもいいんですけど。なんで急に?」
詳しくは知らないが告白というものはもっとこうロマンチックなものであるような気がする。少なくとも僕ら以外の文芸部員がいる中ですることではない。そのせいで全部員がこちらに注目してしまっている。
そんなことを考えていると先輩が顔をこちらに向けなおしながら口を開いた。
「こういう気持ち自分の胸にしまいこんでるだけじゃ相手に届かないから。相手のことをどれだけ思っていても声に出して伝えなきゃ相手には届かない。相手がどこか遠くへ行っちゃって気持ちを伝えられなかったと後悔しても遅いから。だから伝えることにしたの、あなたが好きだって」
「……」
「私と付き合ってください!」
先輩の言っていることの全てをきちんと飲み込む。
そして僕は自分の気持ちを口にした。
僕は一人の女性と一緒に公園のベンチに腰かけながら、昔のことを思い返していた。
「どうしたの、ぼうっとしちゃって?」
「あ、ごめん。ちょっと昔のことを思い返してたんだ」
「昔?」
「そう、昔。と言っても小学生の時のこととかじゃなくて高校生の時のこと」
「高校生の時のことって……私と付き合い始めたときのこと?」
今現在、僕は隣に座っている彼女と付き合っている。高校のころから付き合い始めて、もう付き合って五年目だ。でも、思い返していたのはそのことではない。
「うんん、もう少し前のこと。僕に大事なことを教えてくれた先輩のこと」
「あ、文芸部の時の」
「そう、君も一緒に見ていたあの時のこと」
僕は結局あの後、先輩の告白を断った。先輩の告白は素直に嬉しかったが、先輩の言葉で気が付いたのだ。僕には遠くに行ってしまう前に自身の思いを伝えなければならない相手がいることに。
そうして、僕はそのままの先輩を振った勢いのままに同じ部室にいた彼女に告白し、晴れて付き合うに至ったのだ。
後から聞いた話だが、先輩は僕が先輩以外の人に好意を持っていることに気が付いていて、その上で僕の恋を後押しするためにあんな場所で僕に告白をしたらしい。まったく、頭が上がらない。
先輩には感謝してもしきれない。先輩が居なければ僕は今頃、深い後悔の中にいたかもしれないから。だからこそ……
「今度、あの時の文芸部での同窓会の時に改めてお礼を言おうと思ってるんだ」
「あれから何回もお礼言ってるじゃん」
「お礼は何回言ってもいいんだよ」
だって、僕が今も彼女と一緒に笑って過ごせるのは先輩が大切なことを教えてくれたからなのだから。
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