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149.私の魔力
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この重々しい石版にはカラム陛下の歪んでしまった気持ちが封印されている……
自由に魔力を扱えるお姉様でも浄化しきれず、封印するしかなかった
でも……
私は、ポケットの中のクリスタルを取り出した
私の魔力の結晶石
私が魔力を使えたら、もっと何かできることがあったんじゃないのかな
カラム陛下の悲しみを、この遺恨を、昇華することが……
クリスタルを見つめていると
『みさき。今のあなたならできるかもしれないわ』
と、お姉様の声が響いた
私にできるだろうか
この深くて重たい悲しみからカラム陛下を解放してあげることが
そして、お姉様の魂を救うことが
『私はこの国の大地と一体となって、これからもあなたを見守っているわ。それが私の願いよ。みさき。私の願いを叶えてくれるかしら?』
トキ殿下が
「私たちはこの思いを受け取って、よい国にしていかなければならない」
と言って、真剣な眼差しで私が持っているクリスタルに触れる
「そうだな」
カイリ殿下もクリスタルに手を触れた
私はクリスタルをギュッと握った
救われて欲しい
と
心から願う
そして
誰もが幸せな未来を
手にして欲しい
たとえ肉体が滅びて
魂だけの存在となっていたとしても
その魂が
救われて欲しいと
ただ願う
それが私にできる
唯一のことだ
私は勢いよくクリスタルを石版に向かって投げた
すると、石版の上で強く輝き、勢いよく弾けたクリスタルは、光の粒となって、派手に辺りに飛び散り、この部屋中を満たすようにして、キラキラと舞った
辺りの空気が一変する
「キレイ……」
地下室なのに、クリスタルの粒はどこからか光を反射して、クキラキラと輝きながらこの部屋の空気を塗り替えた
『あなたなら大丈夫よ。みさき。マリアとしてこの国の未来と、穏やかな心を守っていくことができるわ……』
それが、お姉様の最後の言葉だった
床下にたゆたうお姉様の姿は自然と消えていった
石版にこびりついていたカラム陛下の怨念は昇華して、人骨は白いサラサラとした砂となってしまった
人の心を癒すのは人なのだ
その慈愛を持って、人々の心を救済する
皆が幸せになれますように。と、願い、祈る
それがマリアとしての務め
そして、その気持ちが浄化の力を産む
カイリ殿下とトキ殿下は、跪いて右手を胸に当てて私を見上げた
えっ!?いきなりなんですか?!
私が困惑していると
2人は立ち上がり
「みさきってほんとにマリアだったんだね」
と、トキ殿下が言った
「え?いや。あの……。」
返す言葉に困ってしまう
「ありがとう」
カイリ殿下は、穏やかな表情で私の片手をとってそういった
地下室の全てがクリスタルによって浄化されると、ガタガタと音を立てて壁面にはヒビが入り、パラパラと壁や天井が揺れ始めた
「崩れるな。早く上へ戻ろう」
カイリ殿下は、そのまま私の手を引きながら出口へと向かった
ふと、微笑んでる女の人が見えた気がしてパッと振り返ったけど、そこには白い砂山と、青い宝石が輝く指輪が1つ、コロンと落ちていただけだった
「あ。指輪っ」
カイリ殿下と、トキ殿下のお父様がお母様に送った、大切なもの
御二人無き今は、形見のようなものなのでは?
トキ殿下は、私の意を察してか、
「いいんだ。このまま……」
と言って後ろから私を支えながら階段を登った
地下室から中庭に出ると、頭に手を当てて具合の悪そうなフェンさんが出迎えた
地下室の振動は、こっちには伝わってないらしい
私は入ってきた入口を見つめる
すると、光とともに入口が曖昧にぼやけ、瞬きをしているうちに、地上の岩場も一緒に消えてしまった
そして、残されたのは辺り一面に咲き乱れたブルーローズのみ
「フェン。大丈夫か?」
カイリ殿下が声をかける
「すみません。少し頭痛が……」
顔を歪ませながらフェンさんが答える
いついかなる時も冷静、沈着、忠誠。みたいな人だから、こんな表情初めて見る
「良い。全ては終わった。今日は帰って少し休め」
「地下で何が起こって……」
「後日まとめて話す。私はこのままみさきを送る。」
フェンさんがことのあらましを聞こうとしたのをカイリ殿下がサラッと止めた
すると、トキ殿下が
「君の父上も気がかりだ。気にしておいて貰えると助かる」
「承知……致しました」
フェンさんは2人の指示を聞き入れた
私達は中庭から出てガラスの外にいるロイさんの元に向かった
「ご無事で何よりです」
ロイさんは跪いで礼をとり、主の指示を待った
トキ殿下は持っていた紺色の鉱石を取り出し、ロイさんに差し出した
ロイさんは立ち上がってそれを受け取り、それと交換する形で紫色の鉱石をトキ殿下に渡した
「ロイ。フェンの体調が良くない。送って行ってくれるかい?悪化するようなら僕を呼んで欲しい。」
「承りました」
ロイさんは口数少なく主の指示を受け入れ、
「フェン様、お送り致します」
と言って、フェンさんを支えながらその場を後にした
自由に魔力を扱えるお姉様でも浄化しきれず、封印するしかなかった
でも……
私は、ポケットの中のクリスタルを取り出した
私の魔力の結晶石
私が魔力を使えたら、もっと何かできることがあったんじゃないのかな
カラム陛下の悲しみを、この遺恨を、昇華することが……
クリスタルを見つめていると
『みさき。今のあなたならできるかもしれないわ』
と、お姉様の声が響いた
私にできるだろうか
この深くて重たい悲しみからカラム陛下を解放してあげることが
そして、お姉様の魂を救うことが
『私はこの国の大地と一体となって、これからもあなたを見守っているわ。それが私の願いよ。みさき。私の願いを叶えてくれるかしら?』
トキ殿下が
「私たちはこの思いを受け取って、よい国にしていかなければならない」
と言って、真剣な眼差しで私が持っているクリスタルに触れる
「そうだな」
カイリ殿下もクリスタルに手を触れた
私はクリスタルをギュッと握った
救われて欲しい
と
心から願う
そして
誰もが幸せな未来を
手にして欲しい
たとえ肉体が滅びて
魂だけの存在となっていたとしても
その魂が
救われて欲しいと
ただ願う
それが私にできる
唯一のことだ
私は勢いよくクリスタルを石版に向かって投げた
すると、石版の上で強く輝き、勢いよく弾けたクリスタルは、光の粒となって、派手に辺りに飛び散り、この部屋中を満たすようにして、キラキラと舞った
辺りの空気が一変する
「キレイ……」
地下室なのに、クリスタルの粒はどこからか光を反射して、クキラキラと輝きながらこの部屋の空気を塗り替えた
『あなたなら大丈夫よ。みさき。マリアとしてこの国の未来と、穏やかな心を守っていくことができるわ……』
それが、お姉様の最後の言葉だった
床下にたゆたうお姉様の姿は自然と消えていった
石版にこびりついていたカラム陛下の怨念は昇華して、人骨は白いサラサラとした砂となってしまった
人の心を癒すのは人なのだ
その慈愛を持って、人々の心を救済する
皆が幸せになれますように。と、願い、祈る
それがマリアとしての務め
そして、その気持ちが浄化の力を産む
カイリ殿下とトキ殿下は、跪いて右手を胸に当てて私を見上げた
えっ!?いきなりなんですか?!
私が困惑していると
2人は立ち上がり
「みさきってほんとにマリアだったんだね」
と、トキ殿下が言った
「え?いや。あの……。」
返す言葉に困ってしまう
「ありがとう」
カイリ殿下は、穏やかな表情で私の片手をとってそういった
地下室の全てがクリスタルによって浄化されると、ガタガタと音を立てて壁面にはヒビが入り、パラパラと壁や天井が揺れ始めた
「崩れるな。早く上へ戻ろう」
カイリ殿下は、そのまま私の手を引きながら出口へと向かった
ふと、微笑んでる女の人が見えた気がしてパッと振り返ったけど、そこには白い砂山と、青い宝石が輝く指輪が1つ、コロンと落ちていただけだった
「あ。指輪っ」
カイリ殿下と、トキ殿下のお父様がお母様に送った、大切なもの
御二人無き今は、形見のようなものなのでは?
トキ殿下は、私の意を察してか、
「いいんだ。このまま……」
と言って後ろから私を支えながら階段を登った
地下室から中庭に出ると、頭に手を当てて具合の悪そうなフェンさんが出迎えた
地下室の振動は、こっちには伝わってないらしい
私は入ってきた入口を見つめる
すると、光とともに入口が曖昧にぼやけ、瞬きをしているうちに、地上の岩場も一緒に消えてしまった
そして、残されたのは辺り一面に咲き乱れたブルーローズのみ
「フェン。大丈夫か?」
カイリ殿下が声をかける
「すみません。少し頭痛が……」
顔を歪ませながらフェンさんが答える
いついかなる時も冷静、沈着、忠誠。みたいな人だから、こんな表情初めて見る
「良い。全ては終わった。今日は帰って少し休め」
「地下で何が起こって……」
「後日まとめて話す。私はこのままみさきを送る。」
フェンさんがことのあらましを聞こうとしたのをカイリ殿下がサラッと止めた
すると、トキ殿下が
「君の父上も気がかりだ。気にしておいて貰えると助かる」
「承知……致しました」
フェンさんは2人の指示を聞き入れた
私達は中庭から出てガラスの外にいるロイさんの元に向かった
「ご無事で何よりです」
ロイさんは跪いで礼をとり、主の指示を待った
トキ殿下は持っていた紺色の鉱石を取り出し、ロイさんに差し出した
ロイさんは立ち上がってそれを受け取り、それと交換する形で紫色の鉱石をトキ殿下に渡した
「ロイ。フェンの体調が良くない。送って行ってくれるかい?悪化するようなら僕を呼んで欲しい。」
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