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第二章
第21話 何者かの手引き
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キメラは声にならない唸りを上げながらゆっくりとマリアへと近づいていく。
矢を放ったマリアが一番興味を抱いたのか首を捻りながら少しずつ距離を詰めていった。
マリアも醜悪なキメラが近づくと一歩下がり顔を顰める。
ただ、キメラのある一箇所に目が止まりマリアは後退りを止めた。
「それ、は……」
キメラの大口の端にキラッと光る何かがあった。
マリアはそれに見覚えがあった。
「貴様……」
怒気を含んだ声色でマリアは手に持つ弓を握り締める。
「貴様ァァッ!集落を襲ったな!?」
キメラの口元に挟まる銀細工のアクセサリー。
それはエルフ族に伝わる民族的な装具だった。
キメラが持ち合わせる筈のない物が口元に挟まっている。
つまり、アクセサリーを着けたエルフを喰ったという事。
マリアは激怒し矢を番える。
「お前は私が殺すッッ!神滅一閃の矢!」
マリアの手から極太の光線が放たれるとキメラの顔面を直撃した。
魔に類する存在は光属性に滅法弱い。
マリアの魔力をふんだんに乗せた高威力の矢。
ギギギギィィィィッッッ!!!
痛みに悶えるキメラのうめき声が森を埋め尽くす。
直撃した顔面からは煙を立ち昇らせ火傷のような跡がついていた。
「チッ!これでも殺し切れん!」
マリアにとっては相当な魔力を注ぎ込んだ一撃だったが、キメラからしてみれば火傷で済んでしまう程度のダメージであった。
「良いぞマリア!放てぇ!」
マリアの作り出した隙を逃すべきかと長老が合図を送る。
後方に控えるエルフ達から色様々な魔法がキメラに向かって放たれた。
その全てが中級上級の魔法。
数十人からなる魔法の連撃はキメラに多少なりともダメージを与えた。
ギギギィィィアアアアァァァァ!
悲鳴ともとれるキメラの叫び声がその威力を物語っていた。
それでも倒れぬキメラにマリアは舌打ちを一つする。
エルフは一人一人がベテランの冒険者と言える力を持つ。
そんなエルフが二十人がかりで放った魔法ですらキメラにとっては中程度のダメージであり、苦戦は免れないと判断したマリアは上空に向かって矢を射った。
光の矢は天高く上がり、やがて何処かへと消えていく。
「サインは送っておいた。全員気合を入れろ!無名とレインが合流するまで耐え凌げ!」
数で勝るエルフの集団でも勝ち目の薄いキメラを倒すには強力な助っ人がいる。
マリアも十分強力な戦士だが、更なる戦力が必要だった。
合図を送ったマリアだったが、実際にはあまり期待していない。
恐らく今は戦闘中であるだろうと想定し、少なくとも数十分は時間を稼がなければならないと考えていた。
「奴は我らが同族の仇……確実にここで仕留めるぞ!」
マリアが三本の矢を番え放つと、放射状に広がりキメラの目を眩ませる。
「オオオオッッ!」
「死ね化け物!」
「喰らえッ!」
各々武器を片手にキメラへと攻撃を重ねるが、あまり効いていないのか仰け反ることもしなかった。
ただ、動きも素早くキメラが腕を振るってもエルフ達は華麗に躱す。
一進一退の攻防が続けられ、いよいよその攻防にも亀裂が入った。
エルフの一人が体力切れで脚がもつれキメラの目の前で転げた。
「避けろッッ!」
「イヤぁぁぁ!」
マリアの警告虚しく、俵を踏みつぶしたような音と共に鮮血が地面を染め上げていく。
キメラの全体重を乗せた踏み潰しにより、エルフの一人が死んだ。
「よくも仲間をッッ!」
剣に風魔法を纏わせ踏み潰した足を何度も斬りつける別のエルフ。
当然何のダメージにもならず、キメラが蹴り飛ばすとエルフは血反吐を飛ばし森の奥へと吹き飛んでいった。
一人ずつ体力か魔力が尽きた者から死んでいく。
キメラは依然として悠々と立ち塞がり一番警戒する相手、長老を見つめていた。
「仕方あるまい、どけマリア」
いよいよ長老が前に出るとマリアを押し退ける。
「馬鹿か!長老には荷が重い!下がっていろ!」
「何を言うか……私はこれでも数百年の時を生きるエルフぞ?小娘より遥かに魔力も多いわ」
長老が全力で戦うところなど見たことがないマリアは半信半疑ながらも長老へと場所を譲る。
長い背丈ほどもある杖を前に翳すと、長老は詠唱を始めた。
「悠久の時を生きる自然の精よ――」
「長老を守れ!傷一つつけるな!」
詠唱が始まればその場から動く事はできない。
マリアは周りのエルフに激を飛ばし周囲を固める。
キメラも詠唱し始めた長老を警戒し今までより大きく暴れ始めた。
被害は更に広がっていくが、長老の詠唱はまだ終わらない。
「遥かなる時を越えて我が声を聞き届けよ――」
「まだなのか!長老!」
マリアは激しく吐息を漏らしながら長老を見やる。
既にここまでで七人のエルフが死んだ。
マリアも動き回りキメラを翻弄しているが、息は荒い。
エルフの数が減ればマリアの負担も増えていく。
次々と失われていく命を悲しむ余裕すらなかった。
「我が名はエリーゼ、邪に連なる悪意の化身を討ち滅ぼせ!破滅の鉄槌!」
長い詠唱が終わると長老エリーゼは杖を空へと掲げた。
巨大な魔法陣が浮かび上がり光が徐々に集約していく。
「全員退避!喰らえば即死するぞ!」
マリアが声を大にして避難を呼び掛ける。
キメラは何が起きているか理解していないのか魔法陣を見つめて唸っていた。
マリア達エルフがエリーゼの後ろに避難したタイミングで極太のレーザー砲が発射された。
その威力はマリアの得意魔法の比でなく、大地をも焦がす勢いでキメラへと迫った。
ギィィィィィアァァァァァァ!!
極光と共に肉を焼くような音がエリーゼ達の耳に入ると、キメラはそれに呼応するように大声を上げた。
巨体は徐々に小さくなっていき、やがてその姿を保てなくなったキメラは大きな音を立てて地面に崩れ落ちる。
もう声も出せなくなったのかキメラは無言のまま焼き尽くされ最期は骨だけになっていった。
「ふぅ……久しぶりの詠唱魔法は疲れるのぉ~」
エリーゼは大粒の汗を流しながら疲れた様子で地面へと座り込んだ。
キメラを屠った詠唱魔法はエリーゼのオリジナル。
誰も見たことがない魔法だったが、マリアは危険を察知し皆を退避させていた。
誰もエリーゼの魔法の餌食にならなかったのは魔力の流れが暴力的で、近くにいれば余波だけでも大変な事になるのが想像できていたマリアのお陰である。
「流石は長老、あんな化け物も一撃とは……」
「年季が違うわね……」
「長老がいればエルフ族も安泰だな」
みな、口々に長老の功績を褒め称える。
それとは相反して一部のエルフは相棒の亡骸を抱え涙を流していた。
「何人死んだ」
「……十四人です」
マリアが問い掛けるとロイが悲痛な声で答える。
およそ半分近いエルフが死に、キメラ討伐は多大な犠牲を払う結果となった。
マリアは灰になったキメラの下まで歩くと、屈んでアクセサリーを手に取る。
精霊の加護のお陰かアクセサリーは燃え尽きずにそのままの形で残っていたのだ。
「それは……新しい集落にいたエルフのやつですよね」
「恐らく、な。急いで集落へと向かった方がいいだろう。……もう遅いかもしれんが」
嘆いている暇はない。
早くこの場から動かねば次なる刺客が送り込まれてもおかしくはないのだ。
「カイル……フザケた真似をしてくれたものだな。必ず報いを受けさせてやる」
マリアは小さく呟き怨嗟の言葉を口にする。
誰が仕組んだかなど分かりきった事だ。
エルフの大移動を知っているのはエルフ以外に二人だけ。
無名とカイルだけだ。
無名は行動を共にしており、彼が裏切り行為に手を染めるなど考えられない。
消去法でカイルが浮かび上がる。
「遺品を集めたら馬車に入れておけ。五分後に出立だ」
マリアの声は低く冷たい声色だった。
矢を放ったマリアが一番興味を抱いたのか首を捻りながら少しずつ距離を詰めていった。
マリアも醜悪なキメラが近づくと一歩下がり顔を顰める。
ただ、キメラのある一箇所に目が止まりマリアは後退りを止めた。
「それ、は……」
キメラの大口の端にキラッと光る何かがあった。
マリアはそれに見覚えがあった。
「貴様……」
怒気を含んだ声色でマリアは手に持つ弓を握り締める。
「貴様ァァッ!集落を襲ったな!?」
キメラの口元に挟まる銀細工のアクセサリー。
それはエルフ族に伝わる民族的な装具だった。
キメラが持ち合わせる筈のない物が口元に挟まっている。
つまり、アクセサリーを着けたエルフを喰ったという事。
マリアは激怒し矢を番える。
「お前は私が殺すッッ!神滅一閃の矢!」
マリアの手から極太の光線が放たれるとキメラの顔面を直撃した。
魔に類する存在は光属性に滅法弱い。
マリアの魔力をふんだんに乗せた高威力の矢。
ギギギギィィィィッッッ!!!
痛みに悶えるキメラのうめき声が森を埋め尽くす。
直撃した顔面からは煙を立ち昇らせ火傷のような跡がついていた。
「チッ!これでも殺し切れん!」
マリアにとっては相当な魔力を注ぎ込んだ一撃だったが、キメラからしてみれば火傷で済んでしまう程度のダメージであった。
「良いぞマリア!放てぇ!」
マリアの作り出した隙を逃すべきかと長老が合図を送る。
後方に控えるエルフ達から色様々な魔法がキメラに向かって放たれた。
その全てが中級上級の魔法。
数十人からなる魔法の連撃はキメラに多少なりともダメージを与えた。
ギギギィィィアアアアァァァァ!
悲鳴ともとれるキメラの叫び声がその威力を物語っていた。
それでも倒れぬキメラにマリアは舌打ちを一つする。
エルフは一人一人がベテランの冒険者と言える力を持つ。
そんなエルフが二十人がかりで放った魔法ですらキメラにとっては中程度のダメージであり、苦戦は免れないと判断したマリアは上空に向かって矢を射った。
光の矢は天高く上がり、やがて何処かへと消えていく。
「サインは送っておいた。全員気合を入れろ!無名とレインが合流するまで耐え凌げ!」
数で勝るエルフの集団でも勝ち目の薄いキメラを倒すには強力な助っ人がいる。
マリアも十分強力な戦士だが、更なる戦力が必要だった。
合図を送ったマリアだったが、実際にはあまり期待していない。
恐らく今は戦闘中であるだろうと想定し、少なくとも数十分は時間を稼がなければならないと考えていた。
「奴は我らが同族の仇……確実にここで仕留めるぞ!」
マリアが三本の矢を番え放つと、放射状に広がりキメラの目を眩ませる。
「オオオオッッ!」
「死ね化け物!」
「喰らえッ!」
各々武器を片手にキメラへと攻撃を重ねるが、あまり効いていないのか仰け反ることもしなかった。
ただ、動きも素早くキメラが腕を振るってもエルフ達は華麗に躱す。
一進一退の攻防が続けられ、いよいよその攻防にも亀裂が入った。
エルフの一人が体力切れで脚がもつれキメラの目の前で転げた。
「避けろッッ!」
「イヤぁぁぁ!」
マリアの警告虚しく、俵を踏みつぶしたような音と共に鮮血が地面を染め上げていく。
キメラの全体重を乗せた踏み潰しにより、エルフの一人が死んだ。
「よくも仲間をッッ!」
剣に風魔法を纏わせ踏み潰した足を何度も斬りつける別のエルフ。
当然何のダメージにもならず、キメラが蹴り飛ばすとエルフは血反吐を飛ばし森の奥へと吹き飛んでいった。
一人ずつ体力か魔力が尽きた者から死んでいく。
キメラは依然として悠々と立ち塞がり一番警戒する相手、長老を見つめていた。
「仕方あるまい、どけマリア」
いよいよ長老が前に出るとマリアを押し退ける。
「馬鹿か!長老には荷が重い!下がっていろ!」
「何を言うか……私はこれでも数百年の時を生きるエルフぞ?小娘より遥かに魔力も多いわ」
長老が全力で戦うところなど見たことがないマリアは半信半疑ながらも長老へと場所を譲る。
長い背丈ほどもある杖を前に翳すと、長老は詠唱を始めた。
「悠久の時を生きる自然の精よ――」
「長老を守れ!傷一つつけるな!」
詠唱が始まればその場から動く事はできない。
マリアは周りのエルフに激を飛ばし周囲を固める。
キメラも詠唱し始めた長老を警戒し今までより大きく暴れ始めた。
被害は更に広がっていくが、長老の詠唱はまだ終わらない。
「遥かなる時を越えて我が声を聞き届けよ――」
「まだなのか!長老!」
マリアは激しく吐息を漏らしながら長老を見やる。
既にここまでで七人のエルフが死んだ。
マリアも動き回りキメラを翻弄しているが、息は荒い。
エルフの数が減ればマリアの負担も増えていく。
次々と失われていく命を悲しむ余裕すらなかった。
「我が名はエリーゼ、邪に連なる悪意の化身を討ち滅ぼせ!破滅の鉄槌!」
長い詠唱が終わると長老エリーゼは杖を空へと掲げた。
巨大な魔法陣が浮かび上がり光が徐々に集約していく。
「全員退避!喰らえば即死するぞ!」
マリアが声を大にして避難を呼び掛ける。
キメラは何が起きているか理解していないのか魔法陣を見つめて唸っていた。
マリア達エルフがエリーゼの後ろに避難したタイミングで極太のレーザー砲が発射された。
その威力はマリアの得意魔法の比でなく、大地をも焦がす勢いでキメラへと迫った。
ギィィィィィアァァァァァァ!!
極光と共に肉を焼くような音がエリーゼ達の耳に入ると、キメラはそれに呼応するように大声を上げた。
巨体は徐々に小さくなっていき、やがてその姿を保てなくなったキメラは大きな音を立てて地面に崩れ落ちる。
もう声も出せなくなったのかキメラは無言のまま焼き尽くされ最期は骨だけになっていった。
「ふぅ……久しぶりの詠唱魔法は疲れるのぉ~」
エリーゼは大粒の汗を流しながら疲れた様子で地面へと座り込んだ。
キメラを屠った詠唱魔法はエリーゼのオリジナル。
誰も見たことがない魔法だったが、マリアは危険を察知し皆を退避させていた。
誰もエリーゼの魔法の餌食にならなかったのは魔力の流れが暴力的で、近くにいれば余波だけでも大変な事になるのが想像できていたマリアのお陰である。
「流石は長老、あんな化け物も一撃とは……」
「年季が違うわね……」
「長老がいればエルフ族も安泰だな」
みな、口々に長老の功績を褒め称える。
それとは相反して一部のエルフは相棒の亡骸を抱え涙を流していた。
「何人死んだ」
「……十四人です」
マリアが問い掛けるとロイが悲痛な声で答える。
およそ半分近いエルフが死に、キメラ討伐は多大な犠牲を払う結果となった。
マリアは灰になったキメラの下まで歩くと、屈んでアクセサリーを手に取る。
精霊の加護のお陰かアクセサリーは燃え尽きずにそのままの形で残っていたのだ。
「それは……新しい集落にいたエルフのやつですよね」
「恐らく、な。急いで集落へと向かった方がいいだろう。……もう遅いかもしれんが」
嘆いている暇はない。
早くこの場から動かねば次なる刺客が送り込まれてもおかしくはないのだ。
「カイル……フザケた真似をしてくれたものだな。必ず報いを受けさせてやる」
マリアは小さく呟き怨嗟の言葉を口にする。
誰が仕組んだかなど分かりきった事だ。
エルフの大移動を知っているのはエルフ以外に二人だけ。
無名とカイルだけだ。
無名は行動を共にしており、彼が裏切り行為に手を染めるなど考えられない。
消去法でカイルが浮かび上がる。
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