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第三章
プロローグ
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あれはいつの事だっただろうか。
学生の頃だった気がする。
父は政治家、母は弁護士の神無月家に生まれた僕は何をするにおいてもトップでなければならなかった。
学生の頃から僕は一位以外取ったことがない。
たった一度を除いて。
高校に入学した時の事だ。
僕は自他認める天才肌だったが、やはり天才というのは他にもいる。
高校入学時の成績は次席での入学だった。
僕の上がいたのだ。
彼も天才と呼ばれる逸材。
だが神無月家に妥協は許されない。
「無名、何故首席じゃないの?私に恥をかかせないで頂戴」
母の叱責は数時間にも及ぶ。
人格否定や存在意義を問われる事はいつもの事だ。
僕はひたすら勉学に打ち込んだ。
次の試験では当然のように一位をとった。
彼も天才だったかもしれないが僕は努力もする天才だ。
だから彼に勝つことができた。
しかしそれを母に伝えても喜んでは貰えなかった。
「卒業まで常に一位でいなさい。次少しでも成績が下がれば分かっているわね?」
「はい」
結局は母の言いつけ通り僕は首位をキープし続けた。
まるでそれが当たり前であるかのように。
周囲からは天才と言われ持て囃された。
ただ僕は友人関係というものを作った事がない。
上手く同級生と絡む事ができず、徐々に孤立していった。
「無名、友人など必要ないわ。自分だけが信じられるの。友人など……邪魔でしかないわ」
母はそう言っていた。
だから僕に学生時代の友人というものは存在しない。
社会人になるとようやく一人暮らしができるようになった。
やっと神無月の呪縛から逃れられる。
そう思っていた時期もあった。
「君が神無月家の秘蔵っ子か。期待しているよ」
上司は父の知人だった。
僕はいつまでも呪縛からは逃れられないのだと分かった。
優秀な逸材だという期待を背に僕は結果を出した。
入社してから半年と経たずに主任へと昇任し、会社からの評価は高かった。
ただ当然ながら先輩や直属の上司からのやっかみが凄かった。
無駄に大量の仕事を割り振られ、ロッカーにはごみを詰められる。
社内いじめと呼ばれるやつだ。
僕は毎日終電まで働き休日も出勤し、与えられた仕事は全てこなしてやった。
またそれが他の社員にとっては気に食わなかったのか嫌がらせはエスカレートしていった。
ああ、なんと生きづらい世の中なのか。
こんな社会にしたのは誰だ。
国だ。
この国の根底を変えなければならない。
国をひっくり返してやる。
そう考えた僕はパソコンに向かいキーボードを叩いていた。
この世界を支配しているのは通信機器。
つまり通信機器が正常に動作しなくなれば文明は崩壊する。
電磁パルスと呼ばれる強力な電磁波を発生させる装置を作り、メインとなる都市部に設置していき来るべき時に作動させる。
するとどうなるだろうか。
社会は崩壊し、秩序も何もかもが無くなるだろう。
新たに国を作ればいい。
これは五年かけて実行する計画だった。
しかし、その道半ばで僕は異世界へと召喚された。
………………。
「おーい、無名君。そろそろ起きたらどうだ?」
不意に僕は目が覚めた。
日本にいた頃の夢を見ていたようだ。
「すみません、ガッツリ寝てしまっていました」
「構わないさ。あれだけの戦闘があったんだ。勇者といえども人間なんだから疲れはくるってものさ」
今僕と一緒にいるのは”静かなる裁き”の面々だった。
王都を出る際、自分達も一緒に行くと彼らに声を掛けられた。
彼らのような冒険者であれば足手まといになる事もない。
それに彼らはとても良い人達だ。
僕に断る理由はなく、共に王都を出た。
「でも本当に良かったのか?他の勇者達から引き止められただろう?」
「はい。あの国にはもう用はありません」
僕がそう答えるとクランリーダーであるカイトさんは肩を竦めた。
今向かっているのは獣王国だ。
何処の国にも属さない中立を貫く獣王国ならば腰を下ろす事ができる。
そう考えた僕らは十日の旅程をかけて獣王国を目指した。
共に行動するのは”静かなる裁き”だけではない。
ミルコとリューもいる。
馬車が二台と竜車が一台の計三台で移動していた。
レイラさんは一緒に来ることはなかった。
仲間を弔う必要があると王国に残ったのだ。
「無名君、獣王国についたらまず何をする?元の世界に帰るといってもそう簡単な話ではないだろう」
「そうですね……まずは獣王国で情報を集めます。転移魔法と召喚魔法についての情報を」
獣王国は魔法文化に明るくない為あまり期待はできないが、王国で手に入らなかった獣王国のみに伝わる秘法もあるかもしれない。
「情報か。そうだな、まずは王家と接触しよう」
「それこそ簡単ではなさそうですが」
「いや、そうでもないさ。こっちには伝手があるからね」
カイトさんは意味深に呟く。
クランリーダーともなればやはり人脈は広いようだ。
彼らと共に王都を出て良かった。
僕一人では獣王国での伝手などなく、途方に暮れていたところだ。
「魔族も獣王国には手を出していないようだし、安全だろう」
「憎んでいるのは人間だけなのでしょうか?」
「いやぁ、それはどうだろう。だってエルフだって狙われたんだろう?純粋に獣王が強すぎるってのが理由かもな」
獣王は亜人の中でも特に身体能力に秀でていると聞く。
強靭な肉体を持ち、その力は素手で岩を砕くと言われていた。
「でもいきなり戦闘になるかもしれないから覚悟しておいた方がいいかもな?」
「え?それはどういう意味ですか?」
カイトさんの話では獣王国に住む亜人の文化は独特らしい。
金や権力ではなく純粋に相手より強いかどうか。
それが全ての序列を決定づけるそうだ。
「いきなり戦いを挑まれる可能性だって低くない。まあ人間が獣王国を訪れる事も稀だ。多少は奇異な目で見られることは覚悟しておいた方がいい」
既にそれは経験済みだ。
エルフの集落でもかなり奇異な目で見られた。
もう慣れてしまっている。
「それにしても魔物の一体すら出ないとは……リューだったかな?あの竜はそれなりの力を持っているらしい」
カイトさんは前を走る竜車に視線を移し目を細めた。
竜はどれもが強大な力を持つ。
ミルコが従えているリューもまた人間とは比較にならない程の力を有しているのは間違いない。
「まあ後は俺達の人数だろうな。およそ二十人の団体だ。魔物もおいそれと襲い掛かってはこないさ」
全員がレベル4以上の実力者ばかり。
それ以下の者達は先の王都防衛戦で命を落としたと聞いている。
”静かなる裁き”も元は三十人以上のメンバーがいたそうだが、今ではその三分の一を失っている。
「俺達の目的は新たなクランハウスを手に入れる事。獣王国についたら別行動だがセニアをそっちにつけよう」
セニアさんは突然自分の名前が呼ばれたからかこちらへと視線を向ける。
「セニアなら君もある程度会話した事があるだろう?それに実力は申し分ない」
「僕は一人でも構いませんよ」
「外国で一人にするのはリスクが高い。君は勇者だという自覚が薄れているようだが、そもそも勇者は魔族から命を狙われる存在なんだ。降りかかる火の粉は自分で払うと言いたいんだろうがここは従ってもらう」
カイトさんは有無を言わせぬ圧を僕に向けてきた。
「それに……いずれ魔神と戦う事になるんだ。君の力がなければ多分魔神は倒せない。こんな所でポックリ死んでしまったら俺達が困るんだ」
「分かりました」
僕はカイトさんの言葉に頷く。
魔王すら勝てる気がしないのに魔神討伐など更に難易度は上がる。
ただ、勇者の力があればこの世界を救えるかもしれない。
そう思うと更なる研鑽がいるなと僕は心の中で誓った。
「ああ、見えてきたよ獣王国が」
カイトさんの言葉を耳にして僕は遠くに見える獣王国のランドマークである天まで伸びるタワーを見つめた。
学生の頃だった気がする。
父は政治家、母は弁護士の神無月家に生まれた僕は何をするにおいてもトップでなければならなかった。
学生の頃から僕は一位以外取ったことがない。
たった一度を除いて。
高校に入学した時の事だ。
僕は自他認める天才肌だったが、やはり天才というのは他にもいる。
高校入学時の成績は次席での入学だった。
僕の上がいたのだ。
彼も天才と呼ばれる逸材。
だが神無月家に妥協は許されない。
「無名、何故首席じゃないの?私に恥をかかせないで頂戴」
母の叱責は数時間にも及ぶ。
人格否定や存在意義を問われる事はいつもの事だ。
僕はひたすら勉学に打ち込んだ。
次の試験では当然のように一位をとった。
彼も天才だったかもしれないが僕は努力もする天才だ。
だから彼に勝つことができた。
しかしそれを母に伝えても喜んでは貰えなかった。
「卒業まで常に一位でいなさい。次少しでも成績が下がれば分かっているわね?」
「はい」
結局は母の言いつけ通り僕は首位をキープし続けた。
まるでそれが当たり前であるかのように。
周囲からは天才と言われ持て囃された。
ただ僕は友人関係というものを作った事がない。
上手く同級生と絡む事ができず、徐々に孤立していった。
「無名、友人など必要ないわ。自分だけが信じられるの。友人など……邪魔でしかないわ」
母はそう言っていた。
だから僕に学生時代の友人というものは存在しない。
社会人になるとようやく一人暮らしができるようになった。
やっと神無月の呪縛から逃れられる。
そう思っていた時期もあった。
「君が神無月家の秘蔵っ子か。期待しているよ」
上司は父の知人だった。
僕はいつまでも呪縛からは逃れられないのだと分かった。
優秀な逸材だという期待を背に僕は結果を出した。
入社してから半年と経たずに主任へと昇任し、会社からの評価は高かった。
ただ当然ながら先輩や直属の上司からのやっかみが凄かった。
無駄に大量の仕事を割り振られ、ロッカーにはごみを詰められる。
社内いじめと呼ばれるやつだ。
僕は毎日終電まで働き休日も出勤し、与えられた仕事は全てこなしてやった。
またそれが他の社員にとっては気に食わなかったのか嫌がらせはエスカレートしていった。
ああ、なんと生きづらい世の中なのか。
こんな社会にしたのは誰だ。
国だ。
この国の根底を変えなければならない。
国をひっくり返してやる。
そう考えた僕はパソコンに向かいキーボードを叩いていた。
この世界を支配しているのは通信機器。
つまり通信機器が正常に動作しなくなれば文明は崩壊する。
電磁パルスと呼ばれる強力な電磁波を発生させる装置を作り、メインとなる都市部に設置していき来るべき時に作動させる。
するとどうなるだろうか。
社会は崩壊し、秩序も何もかもが無くなるだろう。
新たに国を作ればいい。
これは五年かけて実行する計画だった。
しかし、その道半ばで僕は異世界へと召喚された。
………………。
「おーい、無名君。そろそろ起きたらどうだ?」
不意に僕は目が覚めた。
日本にいた頃の夢を見ていたようだ。
「すみません、ガッツリ寝てしまっていました」
「構わないさ。あれだけの戦闘があったんだ。勇者といえども人間なんだから疲れはくるってものさ」
今僕と一緒にいるのは”静かなる裁き”の面々だった。
王都を出る際、自分達も一緒に行くと彼らに声を掛けられた。
彼らのような冒険者であれば足手まといになる事もない。
それに彼らはとても良い人達だ。
僕に断る理由はなく、共に王都を出た。
「でも本当に良かったのか?他の勇者達から引き止められただろう?」
「はい。あの国にはもう用はありません」
僕がそう答えるとクランリーダーであるカイトさんは肩を竦めた。
今向かっているのは獣王国だ。
何処の国にも属さない中立を貫く獣王国ならば腰を下ろす事ができる。
そう考えた僕らは十日の旅程をかけて獣王国を目指した。
共に行動するのは”静かなる裁き”だけではない。
ミルコとリューもいる。
馬車が二台と竜車が一台の計三台で移動していた。
レイラさんは一緒に来ることはなかった。
仲間を弔う必要があると王国に残ったのだ。
「無名君、獣王国についたらまず何をする?元の世界に帰るといってもそう簡単な話ではないだろう」
「そうですね……まずは獣王国で情報を集めます。転移魔法と召喚魔法についての情報を」
獣王国は魔法文化に明るくない為あまり期待はできないが、王国で手に入らなかった獣王国のみに伝わる秘法もあるかもしれない。
「情報か。そうだな、まずは王家と接触しよう」
「それこそ簡単ではなさそうですが」
「いや、そうでもないさ。こっちには伝手があるからね」
カイトさんは意味深に呟く。
クランリーダーともなればやはり人脈は広いようだ。
彼らと共に王都を出て良かった。
僕一人では獣王国での伝手などなく、途方に暮れていたところだ。
「魔族も獣王国には手を出していないようだし、安全だろう」
「憎んでいるのは人間だけなのでしょうか?」
「いやぁ、それはどうだろう。だってエルフだって狙われたんだろう?純粋に獣王が強すぎるってのが理由かもな」
獣王は亜人の中でも特に身体能力に秀でていると聞く。
強靭な肉体を持ち、その力は素手で岩を砕くと言われていた。
「でもいきなり戦闘になるかもしれないから覚悟しておいた方がいいかもな?」
「え?それはどういう意味ですか?」
カイトさんの話では獣王国に住む亜人の文化は独特らしい。
金や権力ではなく純粋に相手より強いかどうか。
それが全ての序列を決定づけるそうだ。
「いきなり戦いを挑まれる可能性だって低くない。まあ人間が獣王国を訪れる事も稀だ。多少は奇異な目で見られることは覚悟しておいた方がいい」
既にそれは経験済みだ。
エルフの集落でもかなり奇異な目で見られた。
もう慣れてしまっている。
「それにしても魔物の一体すら出ないとは……リューだったかな?あの竜はそれなりの力を持っているらしい」
カイトさんは前を走る竜車に視線を移し目を細めた。
竜はどれもが強大な力を持つ。
ミルコが従えているリューもまた人間とは比較にならない程の力を有しているのは間違いない。
「まあ後は俺達の人数だろうな。およそ二十人の団体だ。魔物もおいそれと襲い掛かってはこないさ」
全員がレベル4以上の実力者ばかり。
それ以下の者達は先の王都防衛戦で命を落としたと聞いている。
”静かなる裁き”も元は三十人以上のメンバーがいたそうだが、今ではその三分の一を失っている。
「俺達の目的は新たなクランハウスを手に入れる事。獣王国についたら別行動だがセニアをそっちにつけよう」
セニアさんは突然自分の名前が呼ばれたからかこちらへと視線を向ける。
「セニアなら君もある程度会話した事があるだろう?それに実力は申し分ない」
「僕は一人でも構いませんよ」
「外国で一人にするのはリスクが高い。君は勇者だという自覚が薄れているようだが、そもそも勇者は魔族から命を狙われる存在なんだ。降りかかる火の粉は自分で払うと言いたいんだろうがここは従ってもらう」
カイトさんは有無を言わせぬ圧を僕に向けてきた。
「それに……いずれ魔神と戦う事になるんだ。君の力がなければ多分魔神は倒せない。こんな所でポックリ死んでしまったら俺達が困るんだ」
「分かりました」
僕はカイトさんの言葉に頷く。
魔王すら勝てる気がしないのに魔神討伐など更に難易度は上がる。
ただ、勇者の力があればこの世界を救えるかもしれない。
そう思うと更なる研鑽がいるなと僕は心の中で誓った。
「ああ、見えてきたよ獣王国が」
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※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
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