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女王の後宮3
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瞬とたわいもない話をしていると茶器の中はすぐに空になる。
「陛下、もう一杯どうぞ。」
瞬が紗々羅の傍に行き、注ごうとすると、紗々羅は首を横に振る。
「今日は、もう良い。」
「新しい茶葉は気に入りませんでしたか。」
瞬は、黒い澄んだ目で紗々羅の顔を覗き込んだ。
「いや、今日のは美味しかった。またこれが良いな。」
そう言うと、瞬はほっとした顔をした。
「だが、今日はもう帰る。明日、閲覧会がある。」
紗々羅は、わざと何でもないことのように明日のことを伝えた。
しばしの沈黙のあと、瞬がはっとして言う。
「そ、それは…よ、良いことです。」
「ふふ、どれだけ人が増えようとお前が大事だ。心配しなくても良い。」
「へ、陛下、それでは一つだけお願いが…。」
「ん?お前からのお願いなど、初めてじゃないか。何でも言って良いぞ。」
瞬は控えているアヤメと自分の侍従のコウをちらっと見た。
二人は察して、「外に控えています。」と言って瞬と紗々羅を二人きりにした。
「どうした?二人に聞かれてはまずいのか?」
二人が去った後も瞬は、言いにくそうにする。
「…あの…。陛下、私は陛下の室ですよね?」
「当然。」
「で、では、私に接吻をください。」
瞬は真っ赤な顔をして、お願いごとを言った。
「瞬…。まだ子供だと思っていたのに。」
「はい、おっしゃるとおりまだ子供です。でも陛下をお慕いしている気持ちは、子供も大人も関係ないと思っています。どうか、瞬の願いを聞いてくださいませ。」
「…分かった。わたくしもしたことがないからうまくできるか分からないがやってみよう。」
「陛下も初めてでございますか?」
瞬は顔を赤らめたままキラキラとした目で紗々羅を見る。
「当然ではないか。この後宮の室はお前だけなのだから。」
「で、では男の私からさせていただきとうございます。」
瞬は座っている紗々羅の方に少し手をかけて、触れるか触れないかの接吻をしたかと思うと、瞬はあまりの香しさに、何度もしてしまったのである。
「陛下…。」
瞬は、勢い余ってしすぎてしまったと気づき、慌てて紗々羅の足元に跪いて、言葉を待った。
「明日、また来る。」
跪いた瞬の頭をそっと撫でてから紗々羅は、足早に瞬の居室を後にした。
紗々羅は、思いがけない接吻に胸がドキドキとして止まらなかった。
『あの子供が…。』
紗々羅は、胸を押さえながら瞬を思った。
瞬は非常に整った顔立ちをしており、10歳にしては、足も長く肩幅もそこそこある。あと、7,8年すれば精悍な青年となるだろう。
黒豹のごとく艶々した髪と、瞳は、この国では珍しい色だ。
それを標本のごとくにしようとした大臣の手から瞬が5歳の時に救ったのだ。
その頃はまだ母の政権で、敗戦国からの貢ものの中に瞬は入っていた。
敗戦金を十分に支払えない代わりだという。
大臣の一人は瞬とお金を代えて自分のものにしようとしたらしいが、こっそり戦利品を見にいった紗々羅に見つかってしまったのだった。
当時13歳だった紗々羅だが、次期女王としての教育の賜物で、この大臣が残酷かつ残忍なのは知っていた。
瞬がこの大臣の元に渡ればどうなってしまうのか…。
紗々羅は、必死に母の元に行き、黒髪の珍しい男の子がいるから後宮に入れて欲しいと言ったのだ。自分の手元に置かなければ、いつまた大臣の毒牙にかかるか分からない。
だから紗々羅は、懇願した。
母は、「わらわの室にするには幼すぎるが、お前が後宮を持つころには立派な室になろう、わらわがそれまで育ててあげましょう。」と言ってくれたのだ。
これには母の大いなる考えがあったのだが、それを知る由もなく、紗々羅は少年を救えたことに満足していたのだった。
「陛下、もう一杯どうぞ。」
瞬が紗々羅の傍に行き、注ごうとすると、紗々羅は首を横に振る。
「今日は、もう良い。」
「新しい茶葉は気に入りませんでしたか。」
瞬は、黒い澄んだ目で紗々羅の顔を覗き込んだ。
「いや、今日のは美味しかった。またこれが良いな。」
そう言うと、瞬はほっとした顔をした。
「だが、今日はもう帰る。明日、閲覧会がある。」
紗々羅は、わざと何でもないことのように明日のことを伝えた。
しばしの沈黙のあと、瞬がはっとして言う。
「そ、それは…よ、良いことです。」
「ふふ、どれだけ人が増えようとお前が大事だ。心配しなくても良い。」
「へ、陛下、それでは一つだけお願いが…。」
「ん?お前からのお願いなど、初めてじゃないか。何でも言って良いぞ。」
瞬は控えているアヤメと自分の侍従のコウをちらっと見た。
二人は察して、「外に控えています。」と言って瞬と紗々羅を二人きりにした。
「どうした?二人に聞かれてはまずいのか?」
二人が去った後も瞬は、言いにくそうにする。
「…あの…。陛下、私は陛下の室ですよね?」
「当然。」
「で、では、私に接吻をください。」
瞬は真っ赤な顔をして、お願いごとを言った。
「瞬…。まだ子供だと思っていたのに。」
「はい、おっしゃるとおりまだ子供です。でも陛下をお慕いしている気持ちは、子供も大人も関係ないと思っています。どうか、瞬の願いを聞いてくださいませ。」
「…分かった。わたくしもしたことがないからうまくできるか分からないがやってみよう。」
「陛下も初めてでございますか?」
瞬は顔を赤らめたままキラキラとした目で紗々羅を見る。
「当然ではないか。この後宮の室はお前だけなのだから。」
「で、では男の私からさせていただきとうございます。」
瞬は座っている紗々羅の方に少し手をかけて、触れるか触れないかの接吻をしたかと思うと、瞬はあまりの香しさに、何度もしてしまったのである。
「陛下…。」
瞬は、勢い余ってしすぎてしまったと気づき、慌てて紗々羅の足元に跪いて、言葉を待った。
「明日、また来る。」
跪いた瞬の頭をそっと撫でてから紗々羅は、足早に瞬の居室を後にした。
紗々羅は、思いがけない接吻に胸がドキドキとして止まらなかった。
『あの子供が…。』
紗々羅は、胸を押さえながら瞬を思った。
瞬は非常に整った顔立ちをしており、10歳にしては、足も長く肩幅もそこそこある。あと、7,8年すれば精悍な青年となるだろう。
黒豹のごとく艶々した髪と、瞳は、この国では珍しい色だ。
それを標本のごとくにしようとした大臣の手から瞬が5歳の時に救ったのだ。
その頃はまだ母の政権で、敗戦国からの貢ものの中に瞬は入っていた。
敗戦金を十分に支払えない代わりだという。
大臣の一人は瞬とお金を代えて自分のものにしようとしたらしいが、こっそり戦利品を見にいった紗々羅に見つかってしまったのだった。
当時13歳だった紗々羅だが、次期女王としての教育の賜物で、この大臣が残酷かつ残忍なのは知っていた。
瞬がこの大臣の元に渡ればどうなってしまうのか…。
紗々羅は、必死に母の元に行き、黒髪の珍しい男の子がいるから後宮に入れて欲しいと言ったのだ。自分の手元に置かなければ、いつまた大臣の毒牙にかかるか分からない。
だから紗々羅は、懇願した。
母は、「わらわの室にするには幼すぎるが、お前が後宮を持つころには立派な室になろう、わらわがそれまで育ててあげましょう。」と言ってくれたのだ。
これには母の大いなる考えがあったのだが、それを知る由もなく、紗々羅は少年を救えたことに満足していたのだった。
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