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専属の騎士
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ゆらゆら水の中にいるような感覚にリュートは、目を覚ます。
すると、アーディルに横抱きにされ、どこかに移動しているようだった。
外は明るく昼間のようだ。
「殿下?」
「起きたか。もうすぐ別棟に着く。」
「あ、あの!すみません!自分で歩きます。」
「暴れるな。お前はまだ回復していない。大人しくしていろ。」
「はい…。」
「それと、俺のことは何と呼ぶのか、たった三ヶ月で忘れたのか?」
「あ…。えっと、アディ様。」
「忘れてはなかったようだな。」
ふっと笑ったような雰囲気にリュートは、こっそり驚く。
リュートは、横抱きにされたまま部屋に入り、壊れ物を扱うかのようにそっと寝台の上に置かれる。
「ありがとうございます。」
「医者の見立てでは、栄養をしっかり摂れば、あと2,3日で俺を朝まで受け入れられるようなるらしいぞ。」
「えっ?ええええ!?お医者様にそのような事を聞いたのですか?」
「なんだ?聞いてはいけなかったのか?」
「そ、そそそそんなぁ。」
リュートは、自分を診てくれた真面目そうな医者にそんな話をしたのかと、顔を真っ赤にした。
「俺にとっては大事なことだからな。」
さも当然という態度のアーディルにリュートは諦めるしかなさそうだ。
「それと、お前に専属の騎士を付ける。」
「え?」
専属騎士が付くのは王族か、かなり高貴な身分の者だ。奴隷の身分に付くことなどあり得ない。
「俺の分の騎士をお前に回す。」
「そしたら、殿下をお守りする者がいなくなります。」
「元々煩わしくて騎士は付けてないが、権利は残ってる。それを使うだけだ。ハミル、庭にいるから呼んでこい。」
ハミルに連れられてやって来たのは、どちらも美丈夫な二人の騎士だった。
この国特有の浅黒い肌を持つ二人で、一人は縦も横も屈強な体格で、もう一人は細身だが、きっと身のこなしが素晴らしいのだろう。
「この2名が今後交代で警護する。」
「姫様、我らに姫様の安全をお任せください。」
「ひ、姫様!?」
リュートが驚いていると騎士達はきょとんとした顔になる。
「殿下、このお方はお預かりしている深窓の姫君ではないのですか?」
「ククッ、そうだ。お預かりしているのだから、むやみに近づくな。いいな。」
「はい、もちろんお約束どおり決して近づきません。」
「なら、いい。今日はもう帰れ。俺がいる間は警護は不要だ。」
「はい。」
二人は、挨拶だけに呼ばれたことを不満に思うこともなく、深く頭を下げて出て行った。
「あいつらは、優秀なアルファだ。番持ちだが、お前からも近づくんじゃないぞ。」
「はい…。ですが、姫様というのは?」
リュートの声は普通の男性より高く、涼やかな音色である。それに加えて北の国の薄い色素を持っている。美しい顔貌だけでなく、元王族のたおやかさは、一見では完全に、姫である。
「騎士はプライドが高いからな。極秘の任務で某国の姫を預かっていることにしている。」
「そうですか。奴隷の警護なんて言ったら嫌がるでしょうね。」
「俺はお前の身分など今更どうでもいいが、あいつらは、根っからのお貴族様だからな。建前は必要だ。」
「殿下だって王族様ではないですか。」
「俺か?俺は庶子だからな。武芸に秀でていて、勲功を上げていなければ、今頃、王宮のどこかで転がっているような存在だ。」
「そう…なのですか…。」
「ああ。もしベータやオメガであれば、王宮で暮らしてもいなかっただろう。」
リュートは、アーディルの寂しそうな横顔が気になり頬に手を添える。
「なんだ?慰めようとしてるのか?」
「あ…。」
「俺がお前の国にした事を忘れている訳ではないのだろう?」
アーディルは、真意を確かめるようにリュートの碧い目を覗き込む。
「俺がまだ憎いに違いにのに、こんな生ぬるい話でお前が絆される訳ないはずだ。どうした?」
「分からないです。父や兄たちが処刑されたことを思い出すと今でも胸が苦しいのは確かです。だけど、たまに母から届けられる手紙に書かれた故国の様子は、アディ様と陛下のご配慮でこの国から食糧が十分に届き、飢える人がいなくなったと…。姉や妹達の命も約束通り守られています。
そうなると、もう恨みや敵対心を持ち続けるのは難しいのです。」
リュートの澄んだ目は、その言葉に嘘はないと語っているようだった。
「それに…こうして母からの手紙を検閲もなしに私に届けられるのもアディ様のご配慮でしょ?」
「俺がお前の母親にそう書けと命じているかもしれないぞ。」
「ふふ、そんな周りくどいことをするのは、アディ様らしくないです。それに、故国で、母と私は弱い立場でしたから、手紙や伝言で連絡を取るときはその内容が嘘か本当か分かるように、母と取り決めをしてあるんです。」
「ほう?」
アーディルは、片眉を上げる。
「その方法はアディ様にも内緒です。」
「生意気な。」
アーディルは、口づけをして、リュートの口を塞ぐ。
「んふっ、ふあっ!」
「口付けだけで、ずいぶん反応がいいな。」
「ひ、久しぶりでしたので…。」
リュートの瞳は潤み始めていた。
「まだ弱ってるお前を抱くわけにはいかないし、困ったものだ。」
そんなリュートを見てアーディルの陽根は、勃ち上がってしまっていた。
「でしたら、口でお慰めさせていだだいてもいいですか?」
「お前に口でされたら、余計に煽られる。ハミルに体を洗ってもらうついでにやってもらうからいい。」
「え?ハミルに?」
「ああ、あいつは、上級騎士のための閨用宦官だったからな。」
「今までも、ハミルがやってたのですか?」
「いや、お前がいるから初めてだ。」
「なら、これからもハミルにそのようなことを命じるのはおやめください。私がすべてお慰めいたします。」
「お前は体調が万全じゃないのだ。無理するな。」
「無理ではございません!」
つい声を荒げてしまい、ハッとして両手で口を塞いだ。
「あ、いえ。あの…。大きな声を出して申し訳ございません。」
リュートが自身の失態に項垂れてるとアーディルがククッと笑った。
「ハミルはただ処理するだけなのだが、そういうことなら仕方ない。」
「そういうこととは?」
「ハミルが俺の体に触るのが嫌のだろう?それは、『嫉妬』というものだ。」
「しっと…。嫉妬!」
(そうか私は嫉妬してあんな大きな声を出してしまったのか。)
リュートは、恥ずかしさで消え入りたくなる。
「無理ではないなら、さっさと慰めろ。」
アーディルは、リュートの細くて白い手を取って、はち切れそうなほど滾った自身のモノを触らせた。
ゆらゆら水の中にいるような感覚にリュートは、目を覚ます。
すると、アーディルに横抱きにされ、どこかに移動しているようだった。
外は明るく昼間のようだ。
「殿下?」
「起きたか。もうすぐ別棟に着く。」
「あ、あの!すみません!自分で歩きます。」
「暴れるな。お前はまだ回復していない。大人しくしていろ。」
「はい…。」
「それと、俺のことは何と呼ぶのか、たった三ヶ月で忘れたのか?」
「あ…。えっと、アディ様。」
「忘れてはなかったようだな。」
ふっと笑ったような雰囲気にリュートは、こっそり驚く。
リュートは、横抱きにされたまま部屋に入り、壊れ物を扱うかのようにそっと寝台の上に置かれる。
「ありがとうございます。」
「医者の見立てでは、栄養をしっかり摂れば、あと2,3日で俺を朝まで受け入れられるようなるらしいぞ。」
「えっ?ええええ!?お医者様にそのような事を聞いたのですか?」
「なんだ?聞いてはいけなかったのか?」
「そ、そそそそんなぁ。」
リュートは、自分を診てくれた真面目そうな医者にそんな話をしたのかと、顔を真っ赤にした。
「俺にとっては大事なことだからな。」
さも当然という態度のアーディルにリュートは諦めるしかなさそうだ。
「それと、お前に専属の騎士を付ける。」
「え?」
専属騎士が付くのは王族か、かなり高貴な身分の者だ。奴隷の身分に付くことなどあり得ない。
「俺の分の騎士をお前に回す。」
「そしたら、殿下をお守りする者がいなくなります。」
「元々煩わしくて騎士は付けてないが、権利は残ってる。それを使うだけだ。ハミル、庭にいるから呼んでこい。」
ハミルに連れられてやって来たのは、どちらも美丈夫な二人の騎士だった。
この国特有の浅黒い肌を持つ二人で、一人は縦も横も屈強な体格で、もう一人は細身だが、きっと身のこなしが素晴らしいのだろう。
「この2名が今後交代で警護する。」
「姫様、我らに姫様の安全をお任せください。」
「ひ、姫様!?」
リュートが驚いていると騎士達はきょとんとした顔になる。
「殿下、このお方はお預かりしている深窓の姫君ではないのですか?」
「ククッ、そうだ。お預かりしているのだから、むやみに近づくな。いいな。」
「はい、もちろんお約束どおり決して近づきません。」
「なら、いい。今日はもう帰れ。俺がいる間は警護は不要だ。」
「はい。」
二人は、挨拶だけに呼ばれたことを不満に思うこともなく、深く頭を下げて出て行った。
「あいつらは、優秀なアルファだ。番持ちだが、お前からも近づくんじゃないぞ。」
「はい…。ですが、姫様というのは?」
リュートの声は普通の男性より高く、涼やかな音色である。それに加えて北の国の薄い色素を持っている。美しい顔貌だけでなく、元王族のたおやかさは、一見では完全に、姫である。
「騎士はプライドが高いからな。極秘の任務で某国の姫を預かっていることにしている。」
「そうですか。奴隷の警護なんて言ったら嫌がるでしょうね。」
「俺はお前の身分など今更どうでもいいが、あいつらは、根っからのお貴族様だからな。建前は必要だ。」
「殿下だって王族様ではないですか。」
「俺か?俺は庶子だからな。武芸に秀でていて、勲功を上げていなければ、今頃、王宮のどこかで転がっているような存在だ。」
「そう…なのですか…。」
「ああ。もしベータやオメガであれば、王宮で暮らしてもいなかっただろう。」
リュートは、アーディルの寂しそうな横顔が気になり頬に手を添える。
「なんだ?慰めようとしてるのか?」
「あ…。」
「俺がお前の国にした事を忘れている訳ではないのだろう?」
アーディルは、真意を確かめるようにリュートの碧い目を覗き込む。
「俺がまだ憎いに違いにのに、こんな生ぬるい話でお前が絆される訳ないはずだ。どうした?」
「分からないです。父や兄たちが処刑されたことを思い出すと今でも胸が苦しいのは確かです。だけど、たまに母から届けられる手紙に書かれた故国の様子は、アディ様と陛下のご配慮でこの国から食糧が十分に届き、飢える人がいなくなったと…。姉や妹達の命も約束通り守られています。
そうなると、もう恨みや敵対心を持ち続けるのは難しいのです。」
リュートの澄んだ目は、その言葉に嘘はないと語っているようだった。
「それに…こうして母からの手紙を検閲もなしに私に届けられるのもアディ様のご配慮でしょ?」
「俺がお前の母親にそう書けと命じているかもしれないぞ。」
「ふふ、そんな周りくどいことをするのは、アディ様らしくないです。それに、故国で、母と私は弱い立場でしたから、手紙や伝言で連絡を取るときはその内容が嘘か本当か分かるように、母と取り決めをしてあるんです。」
「ほう?」
アーディルは、片眉を上げる。
「その方法はアディ様にも内緒です。」
「生意気な。」
アーディルは、口づけをして、リュートの口を塞ぐ。
「んふっ、ふあっ!」
「口付けだけで、ずいぶん反応がいいな。」
「ひ、久しぶりでしたので…。」
リュートの瞳は潤み始めていた。
「まだ弱ってるお前を抱くわけにはいかないし、困ったものだ。」
そんなリュートを見てアーディルの陽根は、勃ち上がってしまっていた。
「でしたら、口でお慰めさせていだだいてもいいですか?」
「お前に口でされたら、余計に煽られる。ハミルに体を洗ってもらうついでにやってもらうからいい。」
「え?ハミルに?」
「ああ、あいつは、上級騎士のための閨用宦官だったからな。」
「今までも、ハミルがやってたのですか?」
「いや、お前がいるから初めてだ。」
「なら、これからもハミルにそのようなことを命じるのはおやめください。私がすべてお慰めいたします。」
「お前は体調が万全じゃないのだ。無理するな。」
「無理ではございません!」
つい声を荒げてしまい、ハッとして両手で口を塞いだ。
「あ、いえ。あの…。大きな声を出して申し訳ございません。」
リュートが自身の失態に項垂れてるとアーディルがククッと笑った。
「ハミルはただ処理するだけなのだが、そういうことなら仕方ない。」
「そういうこととは?」
「ハミルが俺の体に触るのが嫌のだろう?それは、『嫉妬』というものだ。」
「しっと…。嫉妬!」
(そうか私は嫉妬してあんな大きな声を出してしまったのか。)
リュートは、恥ずかしさで消え入りたくなる。
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