貉達の燔祭 (鳴かない杜鵑 spin off3)

五嶋樒榴

文字の大きさ
22 / 81

8

しおりを挟む
日に日に摂子が暗くなり、その異変を注意深く鷹雄は見ていた。
しかし夜に行われる蛮行を別棟で過ごす鷹雄が知るはずもなく、笑顔が少なくなった摂子に鷹雄は更に優しく接する。

「摂子、これ、食わんか?」

鷹雄はそう言ってチョコレートを摂子に見せる。

「チョコレートだぁ」

摂子は目を輝かせてチョコレートを見る。

「食べたい!」

摂子が真一を両手で支えて遊んでやっているので、鷹雄はチョコレートの紙を剥がしチョコレートをパキンと割り、摂子の口元にチョコレートを近づけた。

「ほら、口開けれ」

摂子が唇を開くと、鷹雄は口の中にチョコレートを入れてやった。

「甘い。あー、美味しい。直ぐに溶けるよ、鷹雄さん」

嬉しそうに摂子が言うと鷹雄も笑う。

「ほちい、食べる」

真一もチョコレートに興味を持つ。

「しんちゃんはまだダメだよ。もう少し大きくなったらね」

摂子はそう言って真一のおでこにおでこをくっつける。

「そうやってると、本当に兄弟みたいだな」

楽しそうに鷹雄が言うと摂子は辛そうな顔で鷹雄を見る。

「しんちゃんが羨ましい。鷹雄さんがお父さんで」

「摂子。うーん、俺は摂子に、親父より兄貴と思われたいがな」

鷹雄がそう言うと摂子は笑う。

「これ、美都子さんに見つからんように隠して食べれ」

鷹雄は残りのチョコレートを摂子に渡す。

「ありがとう」

摂子が笑顔になって鷹雄はホッとする。

「また、買って来てやる。だからそうやって笑っててくれ。お前が暗い顔しとると心配になるんだよ。分かったか?」

鷹雄は摂子に距離を保って言う。本当は頭を撫でてやりたい。
だがあの時のように、摂子に触れて怖がらせたくなかった。

「うん。鷹雄さんとしんちゃんの前では、ずっと笑うね」

摂子の笑顔を見ながら鷹雄はただ微笑んで頷く。
摂子の心の中にある、抱えている重りを軽くしてやりたかった。
これからも守ってやりたいと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

モース10

藤谷 郁
恋愛
慧一はモテるが、特定の女と長く続かない。 ある日、同じ会社に勤める地味な事務員三原峰子が、彼をネタに同人誌を作る『腐女子』だと知る。 慧一は興味津々で接近するが…… ※表紙画像/【イラストAC】NORIMA様 ※他サイトに投稿済み

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...