73 / 81
シチ
8
しおりを挟む
その後も一向に摂子の行方は分からず、だからと言って流石に警察に頼る事は出来ずに、ただ闇雲に鷹雄は摂子の消息を追った。
摂子がいなくなって直ぐに、もちろん正二の所へも聞きに行ったが、正二も心当たりがないと摂子を心配する。
鷹雄は組のこともあり、摂子のことだけに心血も注げず、気が付けば、摂子がいなくなって1年近く経とうとしていた。
「美都子の容態はどうだ?」
鷹雄がヤスに尋ねる。
「特に今日も変わりはないと」
「そうか。分かった」
不幸は重なるとはよく言った物で、美都子は癌に侵されていた。
ある日、また熱が続き、病院で検査を受けると肺癌が見つかってしまったのだ。
若かったせいか、美都子の癌はあっという間にリンパ節にまで移転し進行していた。
もう末期だと宣告され入退院を繰り返していたが、現在は激しい痛みにモルヒネも投与され、もう最期を迎える時が近付いていた。
『戸灘んとこの美都子が結核になったらしいぞ』
『ねぇ、なんでみっちゃんと遊んだらダメなの?』
『美都子、近寄るんじゃねーよ!結核が移るだろうがッ!』
『あっち行って!』
『美都子がさ、結核なったんだってさ』
瞑った目から涙が流れ落ち、その顔を鷹雄は見ていた。
指先でその涙の雫をすくうと、美都子は頬に触れた指先の感触で目を覚ました。
「……鷹雄?」
「ああ。静かに眠っとったが、涙が落ちて来よった」
美都子も、自分が泣いていたことに気がつき手の甲で涙を拭う。
「私が結核になって、その時の夢を見ていたわ」
「どこか痛むか?」
痛みはモルヒネで抑えているとは言え、あまりにも衰弱している美都子を鷹雄は労る。
「……あちこち痛いわ」
儚気な笑顔に、鷹雄は眉間に皺を寄せる。
「医者にもっと薬を増やしてもらうか?」
美都子は首を振った。
摂子がいなくなって直ぐに、もちろん正二の所へも聞きに行ったが、正二も心当たりがないと摂子を心配する。
鷹雄は組のこともあり、摂子のことだけに心血も注げず、気が付けば、摂子がいなくなって1年近く経とうとしていた。
「美都子の容態はどうだ?」
鷹雄がヤスに尋ねる。
「特に今日も変わりはないと」
「そうか。分かった」
不幸は重なるとはよく言った物で、美都子は癌に侵されていた。
ある日、また熱が続き、病院で検査を受けると肺癌が見つかってしまったのだ。
若かったせいか、美都子の癌はあっという間にリンパ節にまで移転し進行していた。
もう末期だと宣告され入退院を繰り返していたが、現在は激しい痛みにモルヒネも投与され、もう最期を迎える時が近付いていた。
『戸灘んとこの美都子が結核になったらしいぞ』
『ねぇ、なんでみっちゃんと遊んだらダメなの?』
『美都子、近寄るんじゃねーよ!結核が移るだろうがッ!』
『あっち行って!』
『美都子がさ、結核なったんだってさ』
瞑った目から涙が流れ落ち、その顔を鷹雄は見ていた。
指先でその涙の雫をすくうと、美都子は頬に触れた指先の感触で目を覚ました。
「……鷹雄?」
「ああ。静かに眠っとったが、涙が落ちて来よった」
美都子も、自分が泣いていたことに気がつき手の甲で涙を拭う。
「私が結核になって、その時の夢を見ていたわ」
「どこか痛むか?」
痛みはモルヒネで抑えているとは言え、あまりにも衰弱している美都子を鷹雄は労る。
「……あちこち痛いわ」
儚気な笑顔に、鷹雄は眉間に皺を寄せる。
「医者にもっと薬を増やしてもらうか?」
美都子は首を振った。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
モース10
藤谷 郁
恋愛
慧一はモテるが、特定の女と長く続かない。
ある日、同じ会社に勤める地味な事務員三原峰子が、彼をネタに同人誌を作る『腐女子』だと知る。
慧一は興味津々で接近するが……
※表紙画像/【イラストAC】NORIMA様
※他サイトに投稿済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる