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再会は嘘の始まり
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約束の日に、千秋はさっさと仕事を切り上げて1番に定時で部署から出た。
1分1秒でも早く美奈子に会いたかった。
会って美奈子の話をいっぱい聞いてあげたい。
美奈子を癒してあげたい。
美奈子の力になれるのは、今は自分しかいないと思った。
「西川さん、今日は何かあるのかな。定時に速攻帰るって初めてじゃね?」
千秋の後輩が、隣の席の龍彦に言うと、龍彦はパソコンを見ながら仕事を進める。
千秋が帰ったことに全く興味がなかった。
「週末だし、奥さんとデートじゃねーの?会社から残業もあまりするなって言われてるんだし、たまには定時上がりも良いんじゃね」
龍彦はそう言って腕時計を見る。
「よし、俺もちゃっちゃと仕事終わらすか」
龍彦もさっさと仕事を終えたかった。
それでも営業成績の良い龍彦が、定時で仕事を終えることは殆どない。
大きな仕事を勝ち取るために、不本意ながら帰るのはいつも最後。
もちろん仕事は完璧で、どんなに忙しくてもミスもない。若手の最エースである。
「あれ?この後予定なんてあるのか?亘理、最近彼女と別れたんじゃなかったっけ?」
冷やかしながら同僚は龍彦に言う。
龍彦はムッとしながら同僚を見る。
「ああ、別れたよ。仕事と私、どっち?って言われたら何も言えんだろ」
同僚はまたかと笑う。
龍彦はモテるが、仕事最優先の男なので、それが原因で別れることが多かった。
「俺なら君だよって言うのにさ」
「俺は無理。って言うか付き合う前にちゃんと言ってるんだけどね。なかなかうまくいきませんわ」
龍彦は棒読みの口調で、パソコン画面を見ながら猛スピードでキーボードをブラインドタッチする。
「全くイケメンはずるいよねー。俺もそんなセリフ吐いてみてーわ。お前のそのツラ取り替えてくれ」
「断る」
龍彦はクスクス笑う。
「あーあ、奥さんとデートか。マジ羨ましいぜ」
龍彦は千秋を思い浮かべて小声でポツリと独り言を漏らす。
同僚は聞いていなかったようで、龍彦も残りの仕事に集中した。
1分1秒でも早く美奈子に会いたかった。
会って美奈子の話をいっぱい聞いてあげたい。
美奈子を癒してあげたい。
美奈子の力になれるのは、今は自分しかいないと思った。
「西川さん、今日は何かあるのかな。定時に速攻帰るって初めてじゃね?」
千秋の後輩が、隣の席の龍彦に言うと、龍彦はパソコンを見ながら仕事を進める。
千秋が帰ったことに全く興味がなかった。
「週末だし、奥さんとデートじゃねーの?会社から残業もあまりするなって言われてるんだし、たまには定時上がりも良いんじゃね」
龍彦はそう言って腕時計を見る。
「よし、俺もちゃっちゃと仕事終わらすか」
龍彦もさっさと仕事を終えたかった。
それでも営業成績の良い龍彦が、定時で仕事を終えることは殆どない。
大きな仕事を勝ち取るために、不本意ながら帰るのはいつも最後。
もちろん仕事は完璧で、どんなに忙しくてもミスもない。若手の最エースである。
「あれ?この後予定なんてあるのか?亘理、最近彼女と別れたんじゃなかったっけ?」
冷やかしながら同僚は龍彦に言う。
龍彦はムッとしながら同僚を見る。
「ああ、別れたよ。仕事と私、どっち?って言われたら何も言えんだろ」
同僚はまたかと笑う。
龍彦はモテるが、仕事最優先の男なので、それが原因で別れることが多かった。
「俺なら君だよって言うのにさ」
「俺は無理。って言うか付き合う前にちゃんと言ってるんだけどね。なかなかうまくいきませんわ」
龍彦は棒読みの口調で、パソコン画面を見ながら猛スピードでキーボードをブラインドタッチする。
「全くイケメンはずるいよねー。俺もそんなセリフ吐いてみてーわ。お前のそのツラ取り替えてくれ」
「断る」
龍彦はクスクス笑う。
「あーあ、奥さんとデートか。マジ羨ましいぜ」
龍彦は千秋を思い浮かべて小声でポツリと独り言を漏らす。
同僚は聞いていなかったようで、龍彦も残りの仕事に集中した。
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