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その罪を許せるか許せないか
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美紅はタクシーでシェアハウスに戻って来た。泣いて腫れた目で電車に乗りたくなかった。
日曜日なので、仕事が休みの龍彦とりほと崇人がシェアハウスにいるかもしれないが、出来れば誰もいない事を願った。
「ただいま」
美紅は玄関の鍵を開けて中に入った。
シンとしているので、下の階には誰もいないのかとホッとする。
美紅は自分の部屋に入ると、ベッドに横になる。自分だけの部屋に落ち着くと、一気に疲れに襲われて眠ってしまった。
何も考えたくないと思っていたので、眠れたのは美紅にとっては安らぎになった。
「ただいまー」
コンビニに買い物に行っていた龍彦がシェアハウスに戻って来た。
玄関の下駄箱に、無かったはずの美紅の靴があったので帰って来ているのが分かった。
ただ、いつもよりも早く帰っていることが引っかかるが、流石に美紅の元に行くのは気が引けたので、龍彦はリビングでテレビを見始めた。
上の階を見つめながら美紅が気になるが、リビングに来るまで待つかとポテトチップスを食べながら、頭に入ってこないテレビを見続けた。
「ただいま」
「お帰り。早いじゃん」
沙優が仕事から帰って来た。龍彦が出迎えたので、沙優は龍彦を見る。
「帰れる時はサッサと帰ってくるわ。美紅ちゃん帰ってるね。自分の部屋?」
龍彦のポテトチップスを沙優はつまむ。
「先に手を洗えや。原田は自分の部屋みたい。顔見てねーけど、早く帰って来たみたいだよ」
「そうなんだ。何かあったのかな」
沙優も何かを察したのか、心配そうな顔になる。
「分からねーよ。降りてくるかなって待ってたけど、全然来る気配なし」
「ふーん。着替えてくる」
沙優が階段を上がると龍彦は声をかける。
「原田の部屋覗くなよ」
沙優はニヤリとすると行ってしまった。
「ったく。釘刺すだけ無駄か」
言っても仕方なかったかと龍彦は頭を掻いた。
沙優は3階に上がり美紅の部屋の前に立つとノックをした。
「美紅ちゃん、帰ってるでしょ?」
沙優が声をかけても美紅の反応はなく、美紅の部屋のドアを開けてみると鍵はかかっていなかった。
薄暗い部屋の中で美紅の寝息が聞こえて、寝ているのが分かると沙優は美紅の部屋に入った。
「勝手にお邪魔しまーす」
沙優は美紅に近付くと、美紅の顔を覗き込んだ。
ぐっすり寝ているが、目の周りが赤くなっていて泣いていたのが分かった。
「こんなに泣くまで今回は頑張ったのかな。もう、無理しなくて良いよ。みんな美紅ちゃんの味方だからね」
沙優はそう呟いて指先で優しく美紅の髪を撫でると、静かに美紅の部屋を出て行った。
日曜日なので、仕事が休みの龍彦とりほと崇人がシェアハウスにいるかもしれないが、出来れば誰もいない事を願った。
「ただいま」
美紅は玄関の鍵を開けて中に入った。
シンとしているので、下の階には誰もいないのかとホッとする。
美紅は自分の部屋に入ると、ベッドに横になる。自分だけの部屋に落ち着くと、一気に疲れに襲われて眠ってしまった。
何も考えたくないと思っていたので、眠れたのは美紅にとっては安らぎになった。
「ただいまー」
コンビニに買い物に行っていた龍彦がシェアハウスに戻って来た。
玄関の下駄箱に、無かったはずの美紅の靴があったので帰って来ているのが分かった。
ただ、いつもよりも早く帰っていることが引っかかるが、流石に美紅の元に行くのは気が引けたので、龍彦はリビングでテレビを見始めた。
上の階を見つめながら美紅が気になるが、リビングに来るまで待つかとポテトチップスを食べながら、頭に入ってこないテレビを見続けた。
「ただいま」
「お帰り。早いじゃん」
沙優が仕事から帰って来た。龍彦が出迎えたので、沙優は龍彦を見る。
「帰れる時はサッサと帰ってくるわ。美紅ちゃん帰ってるね。自分の部屋?」
龍彦のポテトチップスを沙優はつまむ。
「先に手を洗えや。原田は自分の部屋みたい。顔見てねーけど、早く帰って来たみたいだよ」
「そうなんだ。何かあったのかな」
沙優も何かを察したのか、心配そうな顔になる。
「分からねーよ。降りてくるかなって待ってたけど、全然来る気配なし」
「ふーん。着替えてくる」
沙優が階段を上がると龍彦は声をかける。
「原田の部屋覗くなよ」
沙優はニヤリとすると行ってしまった。
「ったく。釘刺すだけ無駄か」
言っても仕方なかったかと龍彦は頭を掻いた。
沙優は3階に上がり美紅の部屋の前に立つとノックをした。
「美紅ちゃん、帰ってるでしょ?」
沙優が声をかけても美紅の反応はなく、美紅の部屋のドアを開けてみると鍵はかかっていなかった。
薄暗い部屋の中で美紅の寝息が聞こえて、寝ているのが分かると沙優は美紅の部屋に入った。
「勝手にお邪魔しまーす」
沙優は美紅に近付くと、美紅の顔を覗き込んだ。
ぐっすり寝ているが、目の周りが赤くなっていて泣いていたのが分かった。
「こんなに泣くまで今回は頑張ったのかな。もう、無理しなくて良いよ。みんな美紅ちゃんの味方だからね」
沙優はそう呟いて指先で優しく美紅の髪を撫でると、静かに美紅の部屋を出て行った。
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