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その罪を許せるか許せないか
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GWも終わり日常の生活にまた戻り、美紅は千秋の顔も思い浮かべることが全くなくなっていた。
こうして少しずつ辛いことが忘れられるなら、それで良いと今の生活を大事にしようと思った。
「あ、この映画、結構人気になってんじゃん」
珍しくシェアハウスのメンバーが全員リビングに集まっていた。
テレビ番組の、映画のコーナーに流れていたカウントダウンを見て沙優が声を上げた。
「あー、前に試写に行ったやつ?」
りほが沙優に尋ねる。
「そうそう。せっかく会社からチケット貰えて連れて行ってやったのに、龍彦って後半寝てるし」
「だってつまんなかったんだもーん」
興味なさそうに龍彦が言うと、美紅は龍彦と沙優が映画に行ったことが気になった。
しかも、二人が映画に行った事を全く知らなかった。
「亘理君と沙優さんて、いつも喧嘩口調だけど、すっごく仲良しだね」
美紅はそう言いながら、何故か胸がモヤモヤする。
「仲良しじゃねーし」
ムッとして龍彦が反論する。
「やーだ、この子ったら照れちゃって。そう言うこと言うと、もう相談にも乗ってやんないわよ」
ケラケラ笑いながら言う沙優を見て、龍彦が沙優に相談もしていると知り美紅はズキンとする。そして先日、龍彦が言っていた事を思い出した。
「沙優は、姉ちゃんにしたくないので遠慮したい」
息がぴったりの二人を見て美紅は気がついた。
龍彦が彼女と別れてから、新しい彼女がいないと噂になっていたが、社内の女子が知らないだけで、龍彦が沙優と付き合っているのではないかと美紅は感じ取った。
そして、何故気がついた事で、こんなにも自分が動揺しているのか美紅は驚く。
千秋とのことでずっと龍彦に優しくされて、それが心地よかったと思いながら、本当は龍彦が自分の中で、意識していた以上に大きな存在になっているのを気付いてしまった。
なんで、亘理君と沙優さんが気になるの?
私には関係ないことなのに!
ずっと相談に乗ってもらって、私、亘理君に甘えっぱなしだったじゃない!
何を私は意識してるの?
「原田?どうした?」
美紅が大人しくなったので、龍彦が気になって声をかける。
美紅がハッとして龍彦に顔を向けると、みんなも心配そうに美紅を見ていた。
「美紅ちゃん?大丈夫?」
美紅の顔色が悪いので、沙優が心配そうに声をかける。
「あ、大丈夫です。仕事で疲れてるから、眠くなったのかなッ。先に休みます。おやすみなさい」
美紅はそう言って立ち上がると階段を登って行く。
「美紅ちゃんもやっと落ち着いてきたと思ったけど、何か思い出しちゃったのかな」
気になって崇人が言うと、残った面々は龍彦を見る。
「なんで俺を見るんだよッ!別に俺は何もしてないからなッ!」
龍彦が焦ると沙優はため息をつく。
「……美紅ちゃんにはもう少し、時間が必要だってことよ」
沙優はそう言って言葉を切った。
誰も美紅を傷つけたくないと言う思いは一つだった。
こうして少しずつ辛いことが忘れられるなら、それで良いと今の生活を大事にしようと思った。
「あ、この映画、結構人気になってんじゃん」
珍しくシェアハウスのメンバーが全員リビングに集まっていた。
テレビ番組の、映画のコーナーに流れていたカウントダウンを見て沙優が声を上げた。
「あー、前に試写に行ったやつ?」
りほが沙優に尋ねる。
「そうそう。せっかく会社からチケット貰えて連れて行ってやったのに、龍彦って後半寝てるし」
「だってつまんなかったんだもーん」
興味なさそうに龍彦が言うと、美紅は龍彦と沙優が映画に行ったことが気になった。
しかも、二人が映画に行った事を全く知らなかった。
「亘理君と沙優さんて、いつも喧嘩口調だけど、すっごく仲良しだね」
美紅はそう言いながら、何故か胸がモヤモヤする。
「仲良しじゃねーし」
ムッとして龍彦が反論する。
「やーだ、この子ったら照れちゃって。そう言うこと言うと、もう相談にも乗ってやんないわよ」
ケラケラ笑いながら言う沙優を見て、龍彦が沙優に相談もしていると知り美紅はズキンとする。そして先日、龍彦が言っていた事を思い出した。
「沙優は、姉ちゃんにしたくないので遠慮したい」
息がぴったりの二人を見て美紅は気がついた。
龍彦が彼女と別れてから、新しい彼女がいないと噂になっていたが、社内の女子が知らないだけで、龍彦が沙優と付き合っているのではないかと美紅は感じ取った。
そして、何故気がついた事で、こんなにも自分が動揺しているのか美紅は驚く。
千秋とのことでずっと龍彦に優しくされて、それが心地よかったと思いながら、本当は龍彦が自分の中で、意識していた以上に大きな存在になっているのを気付いてしまった。
なんで、亘理君と沙優さんが気になるの?
私には関係ないことなのに!
ずっと相談に乗ってもらって、私、亘理君に甘えっぱなしだったじゃない!
何を私は意識してるの?
「原田?どうした?」
美紅が大人しくなったので、龍彦が気になって声をかける。
美紅がハッとして龍彦に顔を向けると、みんなも心配そうに美紅を見ていた。
「美紅ちゃん?大丈夫?」
美紅の顔色が悪いので、沙優が心配そうに声をかける。
「あ、大丈夫です。仕事で疲れてるから、眠くなったのかなッ。先に休みます。おやすみなさい」
美紅はそう言って立ち上がると階段を登って行く。
「美紅ちゃんもやっと落ち着いてきたと思ったけど、何か思い出しちゃったのかな」
気になって崇人が言うと、残った面々は龍彦を見る。
「なんで俺を見るんだよッ!別に俺は何もしてないからなッ!」
龍彦が焦ると沙優はため息をつく。
「……美紅ちゃんにはもう少し、時間が必要だってことよ」
沙優はそう言って言葉を切った。
誰も美紅を傷つけたくないと言う思いは一つだった。
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