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優しいあなたは……
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部署に戻る途中、千秋のスマホに知らない番号から電話が入り、クライアントかと思い千秋は電話に出る。
『お久しぶりです』
美奈子の声に千秋は驚く。
美紅と会っていた直ぐ後の美奈子からの連絡に、千秋はなんてタイミングだと思った。
「……うん。番号新しくしたんだね。元気?」
今更どうしたのかと千秋は思いながらも、部署内で話せないのでそのまま再び外に出た。
もちろん美奈子と今更どうなる訳でもない。ただ、無下にすることも出来なかった。
『うん。元気ではないけど、仕事も決まったし、なんとなく声が聞きたいなって』
それを聞いて、千秋はケジメをつけなければと思った。
もう会わないと決めているが、こうやって連絡を取り合うのも本当に最後にしなければいけない。
「仕事探していたんだね」
千秋の声を聞いて、美奈子は千秋への恋心が強くなる。
少しでも千秋が関心を示してくれればと願った。
『裕介と別れてから実家に戻っていたんだけど、実家にそうそう居られないし。仕事見つけて早く家を出ないとって思ってたから』
やっぱり離婚していたのかと千秋は知った。裕介に申し訳ない気持ちが再び湧く。
美奈子は千秋の優しい言葉を期待する。もしかしたら、また会えるかと淡い期待があった。
「そっか。あまり無理するなよ」
美奈子の予想を裏切って千秋は素っ気なかった。
『……うん。千秋君は大丈夫?』
「大丈夫じゃないかな。妻に逃げられて、どうやって捕まえようかまだ考え中。妻を失う事が、こんなに辛いなんて想像もしてなかった」
『千秋君も、離婚、したの?』
美奈子の問いに千秋は答えない。もう答える必要がないと思ったから。
美奈子は、千秋がまだ美紅に、愛情が残っていることを知り胸が締め付けられる。何を期待したんだと恥ずかしくなる。
『…………ごめんね』
「川瀬のせいじゃない」
苗字で呼ばれて美奈子は、裕介だけじゃなく、もう千秋の中からも自分は消されたんだと分かった。
「俺たちは、何か大きな勘違いしてたね。バレなければ、何をしても良いって、浮かれてた」
千秋は初恋の続きなどと、馬鹿なことを思った自分が許せない。
学生時代に振り向いて欲しかった相手に、自分の気持ちをぶつけた身勝手さが美紅を傷つけた。そして結果的に、美奈子と裕介を不幸にしてしまった。
『そうだね。愛していたのはお互いの相手だったのに』
美奈子は裕介の顔が浮かび涙が出そうになる。
本当に愛していたのは裕介で、今も裕介への寂しさを、同罪の千秋で埋めようとしてしまっていた。
「俺はこれからも妻を見守る。この先他の男と結ばれても妻を見守っていたい。それしか俺には出来ないから」
本当は複雑な心境だった。
万が一、美紅が他の男と結ばれても、本当に見守っていけるのか。
それでも美紅が幸せになるなら、美紅を助けたいと千秋は思っている。
『奥さんが本当に羨ましい。千秋君なんて、大っ嫌い』
わざと美奈子は無理して笑う。
千秋はもう何も言うことはなかった。
「うん。じゃあ、もう電話切るね」
『さようなら』
千秋は返事をしないで電話を切った。そしてその番号を履歴から消した。
美奈子も千秋の番号を消去した。
これで完全に二人の繋がりは永遠に切れた。
そして美奈子は考え込みながらも、もう一件電話を掛けた。
『お久しぶりです』
美奈子の声に千秋は驚く。
美紅と会っていた直ぐ後の美奈子からの連絡に、千秋はなんてタイミングだと思った。
「……うん。番号新しくしたんだね。元気?」
今更どうしたのかと千秋は思いながらも、部署内で話せないのでそのまま再び外に出た。
もちろん美奈子と今更どうなる訳でもない。ただ、無下にすることも出来なかった。
『うん。元気ではないけど、仕事も決まったし、なんとなく声が聞きたいなって』
それを聞いて、千秋はケジメをつけなければと思った。
もう会わないと決めているが、こうやって連絡を取り合うのも本当に最後にしなければいけない。
「仕事探していたんだね」
千秋の声を聞いて、美奈子は千秋への恋心が強くなる。
少しでも千秋が関心を示してくれればと願った。
『裕介と別れてから実家に戻っていたんだけど、実家にそうそう居られないし。仕事見つけて早く家を出ないとって思ってたから』
やっぱり離婚していたのかと千秋は知った。裕介に申し訳ない気持ちが再び湧く。
美奈子は千秋の優しい言葉を期待する。もしかしたら、また会えるかと淡い期待があった。
「そっか。あまり無理するなよ」
美奈子の予想を裏切って千秋は素っ気なかった。
『……うん。千秋君は大丈夫?』
「大丈夫じゃないかな。妻に逃げられて、どうやって捕まえようかまだ考え中。妻を失う事が、こんなに辛いなんて想像もしてなかった」
『千秋君も、離婚、したの?』
美奈子の問いに千秋は答えない。もう答える必要がないと思ったから。
美奈子は、千秋がまだ美紅に、愛情が残っていることを知り胸が締め付けられる。何を期待したんだと恥ずかしくなる。
『…………ごめんね』
「川瀬のせいじゃない」
苗字で呼ばれて美奈子は、裕介だけじゃなく、もう千秋の中からも自分は消されたんだと分かった。
「俺たちは、何か大きな勘違いしてたね。バレなければ、何をしても良いって、浮かれてた」
千秋は初恋の続きなどと、馬鹿なことを思った自分が許せない。
学生時代に振り向いて欲しかった相手に、自分の気持ちをぶつけた身勝手さが美紅を傷つけた。そして結果的に、美奈子と裕介を不幸にしてしまった。
『そうだね。愛していたのはお互いの相手だったのに』
美奈子は裕介の顔が浮かび涙が出そうになる。
本当に愛していたのは裕介で、今も裕介への寂しさを、同罪の千秋で埋めようとしてしまっていた。
「俺はこれからも妻を見守る。この先他の男と結ばれても妻を見守っていたい。それしか俺には出来ないから」
本当は複雑な心境だった。
万が一、美紅が他の男と結ばれても、本当に見守っていけるのか。
それでも美紅が幸せになるなら、美紅を助けたいと千秋は思っている。
『奥さんが本当に羨ましい。千秋君なんて、大っ嫌い』
わざと美奈子は無理して笑う。
千秋はもう何も言うことはなかった。
「うん。じゃあ、もう電話切るね」
『さようなら』
千秋は返事をしないで電話を切った。そしてその番号を履歴から消した。
美奈子も千秋の番号を消去した。
これで完全に二人の繋がりは永遠に切れた。
そして美奈子は考え込みながらも、もう一件電話を掛けた。
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