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優しいあなたは……
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美紅は、リビングでテレビを見ている龍彦に声を掛けた。
「亘理君。私、東堂ホールディングスへの移籍が決まったんだ」
本当は、金曜日に部長から話をもらって直ぐに龍彦に伝えたかったが、ちょうど龍彦が出張に出掛けていて、日曜の夜になってやっと伝えられた。
「え?そうだったの?」
突然のことにやはり龍彦は驚き、黙っていたことを美紅は申し訳なく思った。
「黙っててごめん。正式に決まるまで言えなかったの。どうしても誰にも言えなかったから」
シュンとなって美紅が言うと龍彦は笑う。
「仕方ないさ。それにそう言うところも原田の良いところだろ。それでも一番に報告してくれたんだよな?」
「もちろんだよ!解禁になったら一番に亘理君に報告しようって決めてた」
必死な美紅に龍彦は微笑む。
「あ、そーだ。東堂には単身者用のマンションあったよな。そっちに移るのか?」
まだシェアハウスから出て行くつもりがあるのか龍彦は気になる。
「ううん。別に強制ではないし、ここでみんなともっと一緒に暮らしたいから。だからここから通うよ。みんなまだ帰って来ないかな?」
美紅は再出発を決めた事を、心配してくれていたみんなにも早く報告したいと思っていた。
「沙優とりほは飲みに行ってて、崇人さんと隆和はそろそろ帰ってくんじゃね?なんで?」
「東堂に行くこと、これからもここにいる事、早くみんなにも言いたくて」
「そうだな。原田が東堂に行くことはみんなも喜ぶさ。好きな仕事、思う存分できると良いな」
龍彦も喜んでくれて美紅はホッとする。
「なんか不思議。こうしてみんなと楽しく暮らしてたらさ、結婚してた間の事は夢だったのかなって最近思うんだ」
「今は現実か?」
「うん。ここに来て素敵な仲間が増えた。亘理君には本当に感謝だよ」
龍彦は美紅の笑顔に照れて直視できない。
「俺は別に。原田が悩んでたり苦しんでる姿見たくなかっただけだよ」
美紅は、本当に優しいなと思いながら、龍彦に対する気持ちも整理し始めていた。
「私はみんなに救われた。でも離婚した事で、千秋さんの会社での評価は下がったと思う」
美紅が心配そうな顔をするので龍彦はカッとなる。
「自業自得だろ!そもそも原田は結婚したせいで支店に異動になったんだぞ!」
龍彦が自分のことのようにムキになる。
「支店の仕事も楽しかったよ。私は自分のできる事をするだけだもん。東堂ホールディングスに行けるのも、千秋さんが私を一人前にしてくれたからだし。千秋さんと結婚できたのも幸せだったよ。ただ結婚に対しては、私の思いと千秋さんの思いが違っただけ」
龍彦はフッと息を吐く。
美紅はこう言う奴だったと冷静になる。
どんなに酷いことをされても、相手を必要以上に責めたりはしない。
「原田はもう独身に戻ったんだ。また楽しいこと見つけりゃ良いじゃん。恋愛だって自由だ」
「うん。そうだね。亘理君と沙優さん見てると、なんでも言い合えて素敵な関係だなって思う。私も次に恋愛するなら、なんでも対等に言える相手が良いな」
美紅が言うと龍彦は目が点になる。
「え?俺と沙優?なんでそう思うの?別に付き合ってる訳でもねーのに!」
どうしてそう美紅が思うのか分からず龍彦は焦る。
「だって、沙優さんとすっごく息があってて仲良しで。映画にも二人で見に行ったり、相談もしあったり、って、あれ?私、何、泣いてんだろ」
勝手にポロポロと涙が落ちて、吹っ切れたはずなのに美紅は自分でも訳がわからない。
「なんで泣いてんだよ!」
また泣かせてしまったと、龍彦はオロオロする。
「分かんない!亘理君が沙優さんと付き合ってるって思ったら、寂しいって思っちゃって!」
美紅の言葉に龍彦は驚く。
なぜそんな勘違いを美紅がしたのか理解できなかった。
確かにシェアハウスの中では沙優と一番仲が良いが、その事で恋人だと勘違いされるとは思わなかった。
「なんだよそれ!違うし!俺は沙優と付き合ってなんかない!」
龍彦は誤解されたくなくて必死になった。
「亘理君。私、東堂ホールディングスへの移籍が決まったんだ」
本当は、金曜日に部長から話をもらって直ぐに龍彦に伝えたかったが、ちょうど龍彦が出張に出掛けていて、日曜の夜になってやっと伝えられた。
「え?そうだったの?」
突然のことにやはり龍彦は驚き、黙っていたことを美紅は申し訳なく思った。
「黙っててごめん。正式に決まるまで言えなかったの。どうしても誰にも言えなかったから」
シュンとなって美紅が言うと龍彦は笑う。
「仕方ないさ。それにそう言うところも原田の良いところだろ。それでも一番に報告してくれたんだよな?」
「もちろんだよ!解禁になったら一番に亘理君に報告しようって決めてた」
必死な美紅に龍彦は微笑む。
「あ、そーだ。東堂には単身者用のマンションあったよな。そっちに移るのか?」
まだシェアハウスから出て行くつもりがあるのか龍彦は気になる。
「ううん。別に強制ではないし、ここでみんなともっと一緒に暮らしたいから。だからここから通うよ。みんなまだ帰って来ないかな?」
美紅は再出発を決めた事を、心配してくれていたみんなにも早く報告したいと思っていた。
「沙優とりほは飲みに行ってて、崇人さんと隆和はそろそろ帰ってくんじゃね?なんで?」
「東堂に行くこと、これからもここにいる事、早くみんなにも言いたくて」
「そうだな。原田が東堂に行くことはみんなも喜ぶさ。好きな仕事、思う存分できると良いな」
龍彦も喜んでくれて美紅はホッとする。
「なんか不思議。こうしてみんなと楽しく暮らしてたらさ、結婚してた間の事は夢だったのかなって最近思うんだ」
「今は現実か?」
「うん。ここに来て素敵な仲間が増えた。亘理君には本当に感謝だよ」
龍彦は美紅の笑顔に照れて直視できない。
「俺は別に。原田が悩んでたり苦しんでる姿見たくなかっただけだよ」
美紅は、本当に優しいなと思いながら、龍彦に対する気持ちも整理し始めていた。
「私はみんなに救われた。でも離婚した事で、千秋さんの会社での評価は下がったと思う」
美紅が心配そうな顔をするので龍彦はカッとなる。
「自業自得だろ!そもそも原田は結婚したせいで支店に異動になったんだぞ!」
龍彦が自分のことのようにムキになる。
「支店の仕事も楽しかったよ。私は自分のできる事をするだけだもん。東堂ホールディングスに行けるのも、千秋さんが私を一人前にしてくれたからだし。千秋さんと結婚できたのも幸せだったよ。ただ結婚に対しては、私の思いと千秋さんの思いが違っただけ」
龍彦はフッと息を吐く。
美紅はこう言う奴だったと冷静になる。
どんなに酷いことをされても、相手を必要以上に責めたりはしない。
「原田はもう独身に戻ったんだ。また楽しいこと見つけりゃ良いじゃん。恋愛だって自由だ」
「うん。そうだね。亘理君と沙優さん見てると、なんでも言い合えて素敵な関係だなって思う。私も次に恋愛するなら、なんでも対等に言える相手が良いな」
美紅が言うと龍彦は目が点になる。
「え?俺と沙優?なんでそう思うの?別に付き合ってる訳でもねーのに!」
どうしてそう美紅が思うのか分からず龍彦は焦る。
「だって、沙優さんとすっごく息があってて仲良しで。映画にも二人で見に行ったり、相談もしあったり、って、あれ?私、何、泣いてんだろ」
勝手にポロポロと涙が落ちて、吹っ切れたはずなのに美紅は自分でも訳がわからない。
「なんで泣いてんだよ!」
また泣かせてしまったと、龍彦はオロオロする。
「分かんない!亘理君が沙優さんと付き合ってるって思ったら、寂しいって思っちゃって!」
美紅の言葉に龍彦は驚く。
なぜそんな勘違いを美紅がしたのか理解できなかった。
確かにシェアハウスの中では沙優と一番仲が良いが、その事で恋人だと勘違いされるとは思わなかった。
「なんだよそれ!違うし!俺は沙優と付き合ってなんかない!」
龍彦は誤解されたくなくて必死になった。
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