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……罪な人
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シェアハウスで待っていた龍彦の元に沙優から連絡が入った。
裕介と美奈子が結婚していた事実を、美紅が知った事でショックを受けたと聞き龍彦も驚く。
そんな事があり得るのかと、信じられない気持ちで龍彦は急いで詠悟の家に駆け付けた。
「美紅!大丈夫か?」
「たっ君……」
龍彦は憔悴する美紅に寄り添いながら、なぜこんな偶然が重なるのか怖くなる。まるで見えない力に、引き寄せられたようだと思った。
そして、自分と美奈子が知り合いだという事を、話すべきかどうするかを龍彦は考える。
裕介が美奈子の元夫だと判明した事で、いずれ龍彦の近くに美奈子がいる事もバレるかもしれないからだ。
でも美紅を見て、今はそれを話すタイミングではないと、裕介が来てからの様子次第だと龍彦は思い止まった。
「沙優はどう思うの?」
りほが沙優に尋ねる。
「……わかんないわよッ!」
沙優も混乱していた。
裕介の事をもっと知りたいと思った事が、こんな展開になるとは思ってもいなかった。
「沙優さん。私のことは気にしないでください」
美紅は、裕介と美奈子のことは別だと思っている。
裕介は何も悪くない。裕介も被害者の一人。
その裕介を傷つけたのが千秋でもある以上、千秋の妻だった美紅を裕介がどう思うか、それが美紅は怖かった。
「私が美紅ちゃんの事を気にするとか、そういう事は全くないよ。でも、志田さんがどう思うかまでは正直分からないから」
不倫された側の二人が、この先も普通に接することができるのか、確かに沙優も大丈夫とは言い切れない。
「私のせいで、また志田さんを苦しめることになったら」
美紅は頭の中が整理できずに不安になる。
千秋と美奈子のせいで裕介が、美紅と繋がりのある沙優との間に距離を持ったらと思うと、どうすれば良いのかわからない。
「美紅のせいなんてあるわけないだろ。美紅だって志田さんだって、本当なら苦しむ必要がないんだから」
龍彦が一生懸命美紅を慰める。
やり取りを聞いていた詠悟は、ため息をついて首を振った。
「お前たちだけで勝手に完結する話じゃねーだろ。とりあえず裕介が来るまで待て」
とにかく今は落ち着くのが第一だと諭され、一同は裕介の到着を待った。
しばらくしてインターホンが鳴り裕介が来たのが分かると、詠悟は裕介をリビングに通す。
裕介は緊張した顔で美紅を見ると、美紅もなんて言って良いか分からず裕介を見た。
「俺が見届けておくから、お前らは話が終わるまで2階の客間で待ってろ」
詠悟が龍彦達を席から外させ様とする。
「どうして私たちがいたらダメなのよ」
納得がいかない沙優が詠悟に噛み付く。
「当事者同士でまずは話をさせろ。それに沙優はまだ裕介の恋人でもないだろ?」
一番冷静な詠悟に、沙優は無関係者だとピシャリと言われた気がしてぐうの音も出ない。
「沙優、行くぞ」
龍彦が沙優の背を軽く押して、りほとともにリビングを出て行った。
龍彦も席を外すとなれば、沙優も大人しく従うしかない。
「……龍彦の奴、ここにいると駄々をこねると思ったのにな」
アッサリと龍彦まで席を外したのには、正直詠悟は拍子抜けだった。
ただ、美紅は龍彦を気にする余裕がない。裕介とどう話し合えば良いのか頭が回っていないのだ。
裕介と美奈子が結婚していた事実を、美紅が知った事でショックを受けたと聞き龍彦も驚く。
そんな事があり得るのかと、信じられない気持ちで龍彦は急いで詠悟の家に駆け付けた。
「美紅!大丈夫か?」
「たっ君……」
龍彦は憔悴する美紅に寄り添いながら、なぜこんな偶然が重なるのか怖くなる。まるで見えない力に、引き寄せられたようだと思った。
そして、自分と美奈子が知り合いだという事を、話すべきかどうするかを龍彦は考える。
裕介が美奈子の元夫だと判明した事で、いずれ龍彦の近くに美奈子がいる事もバレるかもしれないからだ。
でも美紅を見て、今はそれを話すタイミングではないと、裕介が来てからの様子次第だと龍彦は思い止まった。
「沙優はどう思うの?」
りほが沙優に尋ねる。
「……わかんないわよッ!」
沙優も混乱していた。
裕介の事をもっと知りたいと思った事が、こんな展開になるとは思ってもいなかった。
「沙優さん。私のことは気にしないでください」
美紅は、裕介と美奈子のことは別だと思っている。
裕介は何も悪くない。裕介も被害者の一人。
その裕介を傷つけたのが千秋でもある以上、千秋の妻だった美紅を裕介がどう思うか、それが美紅は怖かった。
「私が美紅ちゃんの事を気にするとか、そういう事は全くないよ。でも、志田さんがどう思うかまでは正直分からないから」
不倫された側の二人が、この先も普通に接することができるのか、確かに沙優も大丈夫とは言い切れない。
「私のせいで、また志田さんを苦しめることになったら」
美紅は頭の中が整理できずに不安になる。
千秋と美奈子のせいで裕介が、美紅と繋がりのある沙優との間に距離を持ったらと思うと、どうすれば良いのかわからない。
「美紅のせいなんてあるわけないだろ。美紅だって志田さんだって、本当なら苦しむ必要がないんだから」
龍彦が一生懸命美紅を慰める。
やり取りを聞いていた詠悟は、ため息をついて首を振った。
「お前たちだけで勝手に完結する話じゃねーだろ。とりあえず裕介が来るまで待て」
とにかく今は落ち着くのが第一だと諭され、一同は裕介の到着を待った。
しばらくしてインターホンが鳴り裕介が来たのが分かると、詠悟は裕介をリビングに通す。
裕介は緊張した顔で美紅を見ると、美紅もなんて言って良いか分からず裕介を見た。
「俺が見届けておくから、お前らは話が終わるまで2階の客間で待ってろ」
詠悟が龍彦達を席から外させ様とする。
「どうして私たちがいたらダメなのよ」
納得がいかない沙優が詠悟に噛み付く。
「当事者同士でまずは話をさせろ。それに沙優はまだ裕介の恋人でもないだろ?」
一番冷静な詠悟に、沙優は無関係者だとピシャリと言われた気がしてぐうの音も出ない。
「沙優、行くぞ」
龍彦が沙優の背を軽く押して、りほとともにリビングを出て行った。
龍彦も席を外すとなれば、沙優も大人しく従うしかない。
「……龍彦の奴、ここにいると駄々をこねると思ったのにな」
アッサリと龍彦まで席を外したのには、正直詠悟は拍子抜けだった。
ただ、美紅は龍彦を気にする余裕がない。裕介とどう話し合えば良いのか頭が回っていないのだ。
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