六本木の鴉-カラス-(鳴かない杜鵑 episode2)

五嶋樒榴

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quattro

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パーティーが終わり、伊織もジュリも子供達やスタッフ達と一緒に後片付けを始めた。
伊織がそんなことまでする姿にジュリは正直驚いた。
人に指示をして、自分は何もやらないと思っていたからだった。

「よーし、さっさと風呂入って、今日は早目に寝るんだぞー。そうすれば、夜にサンタが来てくれるからな」

伊織がそう言うと、まだサンタからのプレゼントを用意してるのかと思い、至れり尽くせりだとジュリはまた驚いた。
スタッフ達が子供達を連れて、伊織とジュリを玄関まで見送ってくれた。
子供達にふたりは手を振ると、スタッフ達が奥へ子供達を連れて行く。

「暗くなると外はやっぱりさみー。車があったまるまでここで待つか」

伊織はそう言ってジュリを玄関に残しエンジンをかけに行った。
しばらくして伊織が戻ってくるとジュリは伊織を見つめた。

「なんでここに僕も呼んだ?」

ジュリが尋ねると伊織はジュリを見る。

「気分転換だよ。受験勉強ばかりより息抜きも必要だろ」

ジュリはその言葉が信じられなかった。
伊織も本心は、ただクリスマスイブにジュリと過ごしたかっただけ。

「…………恥ずかしかっただけだよ。俺みたいなのが、穢れを知らない子供達に面と向かって接するのが照れ臭くてお前も道連れにした」

こっちの方がジュリも納得が行った。

「無理してこんな慣れない事してんなよ」

小馬鹿にするようにジュリは言う。
伊織はフッと優しい顔で笑う。

「俺の親父が、政龍組に潰された田嶋会の会長だと知ってんだろ?そのどうしょもねぇ親父に、俺はお袋と一緒に何度も殺されかけた。まぁ、真幸のじいさん、飯塚組長に助けられたけどさ。自分がそう言う生活をして思った。親はどうでもガキに罪はない。どうしょもねぇ親に人生狂わされるのはいつも弱いガキだ。確かに俺がしてることは偽善かもしんねぇ。それでも飯塚組長みたいに一人でも救いたいって思ってる」

伊織の言葉に嘘はないと思った。ジュリ自身も似たような境遇。
地獄のような生活からジュリは伊丹に救われた。
お互い普通の人生を歩んできていないのは分かっていた。
それでも自分が思っていたより、伊織は大きな男だったんだとシャクだったが認めた。

「…………僕は、伊丹に生かされた。僕は、死んでいた子供だったかもしれないからね。今、ここにいられるのは伊丹のおかげ。僕は…………」

ジュリは言葉を止めた。
伊織はジッとジュリを見つめる。

「そろそろ車に行くか」

ジュリは頷く。

「おーい、帰るわ!玄関の鍵、ちゃんと掛けてくれよ」

伊織が大声で叫ぶと、奥からセンター長の男性が出てきた。

「伊織さん、今日はありがとうございました!子供達が寝た後のプレゼント、今袋詰め終わったんで」

「了解。じゃあ、また来るわ。おやすみ」

伊織が軽く手を振るとセンター長はお辞儀をして伊織とジュリを見送る。
伊織とジュリは車に乗り込んだ。

「さっきのちょうだいよ」

照れながらジュリは言う。

「僕もクリスマスプレゼント、欲しくなった」

伊織はプッと笑う。

「俺がつけてやる」

伊織がそう言うとジュリは素直に従い、伊織は細い首に腕を回し、ダイヤモンドのネックレスをつけてあげた。

「…………僕は、父親を殺したんだ」

ジュリの告白に伊織は回した腕でジュリを抱きしめた。

「僕の人生を狂わせた男を自分で殺したことで、僕は自分を取り戻した。ずっと囚われていた。自分が強ければ、僕は父親に苦しめられることも無かったと。だから僕は強くなりたかった。父親を殺したことを後悔していない。僕の本当に大切な父親は伊丹悠介だから」

伊織はジュリを抱きしめたまま聞いていた。ジュリも抱きしめられたままだった。

「…………そうだよ。お前の親父は、どーしょもねーほど過保護で親バカな伊丹悠介だ」

伊織が言うとジュリは笑う。

「パパに言っちゃお。伊織がパパの悪口言ってたって」

あんたではなく、名前を呼ばれて伊織は嬉しい。

「チクったらその唇が溶けるまでキスするぞ」

伊織の言葉にジュリは笑う。

「じゃあ、チクるの辞める」

ジュリがそう言うと伊織も笑う。
抱きしめていた伊織はジュリをそっと離した。

「とりあえず帰るか。遅くなると伊丹さんに説教されそうだ」

伊織は車をスタートさせる。
ジュリは伊織の事を、少しだけ意識してしまった自分も悪くないと思った。
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