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年が開け、もう直ぐセンター試験が始まることもあり、予備校ではみんながピリついていた。
ジュリは予備校の授業も終わり、帰宅しようと予備校を出たところで健志の女友達に呼び止められた。
「伊丹さん。少しいい?」
女友達とは、健志の面会から距離を取っていたので、声を聞くのは久しぶりだった。
「…………またお見舞いに一緒に行ってくれって言うの?」
ジュリは健志の辛そうな姿を、もう見たくないと思った。
「…………ううん。健志ね、昨日の昼間に亡くなったんだ」
俯きながら話す女友達の声が震える。
涙を我慢しているのだろうか、我慢できずにポタポタと地面に落ちていく。
「…………ダメだったんだ、生体肝移植。間に合って欲しかった」
ジュリはそれだけやってと言えた。
「もう黄疸が出た頃からダメだって言われてたみたい。でも、できることはしてくれって!そうだよね!諦められないもん!」
ヒックヒック咽びながら女友達は言う。その声が悲痛でジュリは何も言葉をかけられない。
「これからお通夜に行くの。多分伊丹さんは一緒に行ってくれないと思ったけど、一応声かけた。じゃあ」
女友達はそう言うとジュリに背を向けた。
「…………あいつのお母さんにご愁傷様って伝えて。僕が行った時、喜んでくれてたから。僕は何もしてやれなかったけど、あんたがそばにいて、あいつは良かったよね」
ジュリなりの慰めの言葉だった。
「良くないよ!私なんかそばにいただけだもん!健志が変な薬飲んでたって辞めさせられなかったんだから!」
女子高生の言葉にジュリは驚く。
「変な薬?。なんだよ、それ!」
ジュリは慌てて女子高生の肩を掴む。
「あいつ何を飲んでたの!?」
ジュリの言葉が強くて女子高生は萎縮する。怯える姿を見て、ジュリは掴む力を緩めた。
「…………友達の間で流行ってるんだよ。眠くならないサプリメントって」
女子高生の言葉にジュリは顔を歪める。
「それって!何してんだよ!そんなサプリメントあるわけないだろ!やっちゃいけないものだってすぐにわかんだろ!」
「分かってるよ!だけど、みんな何ともなかった!量を間違えなければ大丈夫だって!だから、健志が体調崩してもそれのせいだって思わなかった!」
ジュリは女友達の告白にため息をつく。
「そんなの、それぞれ違うんだよ。10人平気だからって、自分も大丈夫なんてないんだ!」
ジュリはもっと知っている。
そんなものよりも、もっと強烈な覚醒剤《モノ》の存在を。
だから、自分は絶対にそんな物に手を染めない。
「…………だって!…………そうでもしないとッ!」
「受験に勝てない?それは言い訳だよ。ただ好奇心が勝っただけだ!お前もやってんの?」
女友達は首を振る。
「怖くてできなかった。勧められたけどできなかった!でも、健志が。成績も伸び悩んでて、多分、始めたんだと思う。止められなかった。成績が伸びたって喜んでた健志にやめろって言えなかった!」
女友達の告白にジュリはまたため息をついた。
「それ、あいつの親も知ってんの?」
女友達は首を振る。
「言えないよ。そんなこと言えない。もう健志死んじゃったのに、そんなこと言ったら、健志の両親がもっと苦しむもん」
女友達が言うとジュリは女友達の頭に手を乗せた。
「この事は絶対に言うな。お前の言う通り、今更そんな事を言われても、原因を突き止めるには遺体を解剖しなくちゃならなくなるよ、きっと。入院中は劇症肝炎ってことになってたんだから、今更お通夜まで混乱させる事はない」
ジュリの言葉に女友達は頷く。
「僕がもっと調べるから、誰かそのサプリメント持ってない?」
「分かんない。みんなも昨日のうちに知って怖がってたから、もう捨ててるかも」
ジュリは内心舌打ちした。
「どうやってそのサプリメント知ったの?」
ジュリは少しでも情報が欲しかった。
「なにかのサイトだと思う。ただ、ちゃんと教えてもらえるか分からない。私も少し聞いたけど、受験前にそう言う薬やってた事バレたくないみたいだったから」
女友達の言葉にジュリはイラついた。
誰かが犠牲になったのにもかかわらず、もう自分達の保身かと吐き気がする。
裏の事なら調べる手段はいくらでもある。
ただ、パパには知られたくないなぁ。
もし敵対組織が絡んでたら、大ごとになるのも嫌だし。
「大体のことは分かったから、その保身に走ってる奴らに最後の警告。無事春に大学生になりたいなら、早くに病院で肝臓の数値を調べてもらえって言っておきな。沈黙の臓器舐めるなよって」
ジュリはそう言って女友達を置いてスタスタと歩き始めた。
健志が使っていたのがどんな薬だったかは分からないが、おそらく合成麻薬であろうと判断した。
ジュリは予備校の授業も終わり、帰宅しようと予備校を出たところで健志の女友達に呼び止められた。
「伊丹さん。少しいい?」
女友達とは、健志の面会から距離を取っていたので、声を聞くのは久しぶりだった。
「…………またお見舞いに一緒に行ってくれって言うの?」
ジュリは健志の辛そうな姿を、もう見たくないと思った。
「…………ううん。健志ね、昨日の昼間に亡くなったんだ」
俯きながら話す女友達の声が震える。
涙を我慢しているのだろうか、我慢できずにポタポタと地面に落ちていく。
「…………ダメだったんだ、生体肝移植。間に合って欲しかった」
ジュリはそれだけやってと言えた。
「もう黄疸が出た頃からダメだって言われてたみたい。でも、できることはしてくれって!そうだよね!諦められないもん!」
ヒックヒック咽びながら女友達は言う。その声が悲痛でジュリは何も言葉をかけられない。
「これからお通夜に行くの。多分伊丹さんは一緒に行ってくれないと思ったけど、一応声かけた。じゃあ」
女友達はそう言うとジュリに背を向けた。
「…………あいつのお母さんにご愁傷様って伝えて。僕が行った時、喜んでくれてたから。僕は何もしてやれなかったけど、あんたがそばにいて、あいつは良かったよね」
ジュリなりの慰めの言葉だった。
「良くないよ!私なんかそばにいただけだもん!健志が変な薬飲んでたって辞めさせられなかったんだから!」
女子高生の言葉にジュリは驚く。
「変な薬?。なんだよ、それ!」
ジュリは慌てて女子高生の肩を掴む。
「あいつ何を飲んでたの!?」
ジュリの言葉が強くて女子高生は萎縮する。怯える姿を見て、ジュリは掴む力を緩めた。
「…………友達の間で流行ってるんだよ。眠くならないサプリメントって」
女子高生の言葉にジュリは顔を歪める。
「それって!何してんだよ!そんなサプリメントあるわけないだろ!やっちゃいけないものだってすぐにわかんだろ!」
「分かってるよ!だけど、みんな何ともなかった!量を間違えなければ大丈夫だって!だから、健志が体調崩してもそれのせいだって思わなかった!」
ジュリは女友達の告白にため息をつく。
「そんなの、それぞれ違うんだよ。10人平気だからって、自分も大丈夫なんてないんだ!」
ジュリはもっと知っている。
そんなものよりも、もっと強烈な覚醒剤《モノ》の存在を。
だから、自分は絶対にそんな物に手を染めない。
「…………だって!…………そうでもしないとッ!」
「受験に勝てない?それは言い訳だよ。ただ好奇心が勝っただけだ!お前もやってんの?」
女友達は首を振る。
「怖くてできなかった。勧められたけどできなかった!でも、健志が。成績も伸び悩んでて、多分、始めたんだと思う。止められなかった。成績が伸びたって喜んでた健志にやめろって言えなかった!」
女友達の告白にジュリはまたため息をついた。
「それ、あいつの親も知ってんの?」
女友達は首を振る。
「言えないよ。そんなこと言えない。もう健志死んじゃったのに、そんなこと言ったら、健志の両親がもっと苦しむもん」
女友達が言うとジュリは女友達の頭に手を乗せた。
「この事は絶対に言うな。お前の言う通り、今更そんな事を言われても、原因を突き止めるには遺体を解剖しなくちゃならなくなるよ、きっと。入院中は劇症肝炎ってことになってたんだから、今更お通夜まで混乱させる事はない」
ジュリの言葉に女友達は頷く。
「僕がもっと調べるから、誰かそのサプリメント持ってない?」
「分かんない。みんなも昨日のうちに知って怖がってたから、もう捨ててるかも」
ジュリは内心舌打ちした。
「どうやってそのサプリメント知ったの?」
ジュリは少しでも情報が欲しかった。
「なにかのサイトだと思う。ただ、ちゃんと教えてもらえるか分からない。私も少し聞いたけど、受験前にそう言う薬やってた事バレたくないみたいだったから」
女友達の言葉にジュリはイラついた。
誰かが犠牲になったのにもかかわらず、もう自分達の保身かと吐き気がする。
裏の事なら調べる手段はいくらでもある。
ただ、パパには知られたくないなぁ。
もし敵対組織が絡んでたら、大ごとになるのも嫌だし。
「大体のことは分かったから、その保身に走ってる奴らに最後の警告。無事春に大学生になりたいなら、早くに病院で肝臓の数値を調べてもらえって言っておきな。沈黙の臓器舐めるなよって」
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