六本木の鴉-カラス-(鳴かない杜鵑 episode2)

五嶋樒榴

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伊織はジュリから聞いた六本木の鴉の正体を掴むために、サイトの運営者を突き止める作業を開始し、もちろん自分のログは残さずにサイトにハッキングして、サイト内の情報を全て記録した。
六本木の鴉の正体は、思いの外あっけないほど簡単に終わった。

「もしもし、今送ったデータの人物全てを調べてくれ。ど素人が作ったサイトだったおかげで、個人情報も全て取り出しやすかった」

ふふふと余裕で笑う伊織。
電話をした相手は、ジュリの部屋で作業した時に電話をした相手だった。
伊織も素性は知らない。ミノルと言う名前だけ。それも本名かは謎だ。声も機械処理がされ、年齢も不詳だった。
全て金だけの関係だったが、伊織が1番信頼を寄せている天才ハッカーだった。
数時間後、サイト運営者の素性と、登録者全員の個人情報を、登録されている電話番号を元に更に携帯電話会社へハッキングし、克明な個人情報が伊織の元に送られてきた。

「ったく、さすが仕事早いぜ。このサイトに参加してこれを購入する手段は?」

伊織が尋ねる。

『そこだけは慎重だな。SMSを利用した認証コードがスマホに送られてくる仕様にしてあるようだ。試しに捨て番号で試したが、認証コードを入力した後キーワードを入力するんだけど、招待してくれた奴のユーザーネームを入れるようになってる。俺は適当なのを入れたが、その相手に俺の確認が取れないようでまだ登録できない。ま、向こうにしたら俺を招待してないんだから当たり前だけど。この辺はアナログだね。でも派手に動けない分厄介だね。バックに警察もいたらさらに厄介だし』

こちらの動きを愚嵐怒に掴まれないように、ミノルも慎重に色々試していたようだった。

「ふーん。相手もなかなか考えてるな」

ニヤリと笑って、サイト運営者の名前を見る。


八神やがみ空士くうじ


その名前を見て、伊織はどこかで聞いたことがある名前だと思った。

「八神……………。あの八神か?違う。裏がいるはずだ」

伊織はさらに八神空士の情報を収集しようと、元白竜組の元恋人、田岡たおかいたりに連絡をする。

「俺だ。悪いが調べて欲しいことがある。八神空士のことで」

『八神空士?また、懐かしい名前だな』

至は電話口で笑う。

「白竜組が解散になって、八神はどうなった?本当のことを教えてくれ」

八神空士は至の舎弟だった。

『随分必死だね。空士にまで興味あったの?』

意地悪な口調で至は尋ねる。

「バーカ。今俺が絡んでる案件に八神がヒットした。だがどう考えても、あのアホができることじゃない。何かが繋がっていて、奴の名前が出てきたんだと思う」

『八神の消息は知らない。カタギになってると思うけどね。元々気の弱い虚勢だけの男だったし』

伊織は[六本木の鴉]と言う、正体不明の薬の話を至に話した。
警察が関与している可能性も示唆した。

『その名前は聞いたことないな。でも合成麻薬も元白竜組ならルートはいくつもあるね。もし警察とまだ繋がりを持ってる奴がいたら…………。例の飯塚真幸を嵌める時に、刑事の写真を渡したでしょ?警察幹部が絡んでた奴。だからその薬も警察の一部と繋がりがあるのかもね。ただ釈放された警察幹部にはもう話を聞けないけどね』

「どう言うことだ?」

伊織が尋ねると至は笑う。

『俺に聞くより、飯塚の犬に聞けよ。聞いた噂じゃ、田所って元管理官であの写真をばら撒いた男をったのは、飯塚の犬だともっぱらの噂だ。もちろん噂だけどね』

至の言葉に伊織は工が浮かんだ。

「マジか」

『五島組からの情報だから間違いはない。なんで奴が田所を殺ったかは知らんけど?』

真幸と疾風を別れさせた原因の田所を、工が報復で殺したんだと伊織は思った。

「とりあえず、八神の情報が欲しい。報酬は」

『報酬は、ヨリを戻すって言うのは?』

至の提示に伊織は一瞬口を閉じた。

「…………バカか。お前が俺を捨てておいて」

伊織が言うと至は笑う。

『だーね。ってお前の浮気癖が原因だろがッ』

至の言葉に伊織は笑う。

「はいはい。慰謝料も含めて、スイスの口座に振り込んでおいてやる」

クククと伊織が笑いながら言うと至も笑う。
その後、八神空士の消息は直ぐに割り出せた。
だが、入手した写真で伊織は新事実を知る事になった。

「これが?」

至が板前を務める、至の母親が経営している小料理屋の奥の座敷で、伊織はテーブルに並べられている写真を見つめる。
目付きの悪い、どう見てもカタギには見えない男の顔だった。
もちろん伊織の知っている八神空士では無かった。

「この男の本名は分からなかったが、表向きは八神空士を名乗っている。そして愚嵐怒って半グレの裏のリーダーだ」

至の報告に、本物の八神空士はもう消されていると分かった。
伊織は分厚い封筒を二つテーブルに置いた。

「ひとつはお前への報酬、もうひとつは、情報を集めてきた舎弟達に渡してくれ」

この短時間で、至一人で調べられる内容でない事は伊織も分かっている。

「で?この男の現在の居場所は?」

伊織が尋ねると至は首を振る。

「あちこちに動き回っていて、ヤサが全く分からない。金は有り余っているから転々としてるんじゃないかと言う話だ」

愚嵐怒は別の方でも情報はいくらでも入っていたが、裏のリーダーの顔を確認したのは初めてだった。

「鍵はこいつだな。六本木の鴉ってのを捌いてる奴が分かっただけで大収穫だ」

伊織は写真を一枚手に取り見つめた。
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