61 / 106
sei
10
しおりを挟む
今日は3月15日。真春の20回目の誕生日だった。
「おい、真春」
飯塚組長の声に、出掛ける準備をしていた真春はドアに目を向けた。
「何?俺、出掛けるよ。車借りるからね」
真春がそう言うと飯塚組長は何かを真春に投げた。
真春は受け取ったものを見ると車のキーだった。
「お前がこの家に来ることが決まって直ぐお前用の車を買っといた。昨日届いたんだ」
キーは見たことがない車のロゴが入っていた。
「成人の誕生日プレゼント。お前にプレゼントなんざこれが最後だな」
飯塚組長が笑いながら言うと、真春はびっくりして飯塚組長を見つめる。
「今日が20歳の誕生日だって覚えてたんだ。ありがとう!」
真春が嬉しそうにお礼を言うと、飯塚組長は満足そうに真春の部屋を後にした。
実際は真春の誕生日を覚えていたのではなく、家政婦長から、今日がたまたま真春の誕生日だと聞かされたのだった。
真春はどんな車をくれたのか、急いで支度を済ませるとガレージに向かった。
ガレージの入り口近くに新車のSUVが止まっていた。
「これかぁ。今まではセダンだったから、こっちの方が良いや」
真春は嬉しくなって、早く工が来ないかと待ち遠しかった。
今日は、工とのデートの日だったからだ。
六本木の鴉の解明に協力するご褒美として、真春はちょうど誕生日だった今日をその日に当てたのだった。
しばらくして、靴音が聞こえて来て真春はガレージの表に出た。
「遅くなりました。こちらにいると思わなかったので」
工がそう言うと、真春はワクワクした顔で工を手招く。
「見て見て!父さんからプレゼントに車貰ったんだ!」
嬉しそうに真春は言う。
工はガレージに入りその車を見て目を見開いて驚いた。
「これは…………」
「今日ね、俺の誕生日だったの!20歳の誕生日プレゼントだって!」
無邪気に言う真春に工は内心目眩がした。
これ、マセラティだろ。
誕生日プレゼントって、宝の持ち腐れだろ。
絶対真春さんは価値分かってねー。
目の前のイタリアの高級車に、工はどう反応して良いか分からなかった。
真春が誕生日だと言うことも初めて知り、それもどう反応して良いかわからなかったが、お祝いぐらい言ってあげようかと真春を見た。
「誕生日だったのですね。おめでとうございます」
工は真春に頭を下げた。
工から、おめでとうと言われただけで真春は嬉しくてたまらない。
「俺的には工からのご褒美はグッドタイミングだった!工に今日は1日お祝いしてもらうからね!早く出発しよう」
嬉しそうに真春は言うと、マセラティの鍵を工に渡す。工は鍵を開けると助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
工は真春を車に乗せ、自分は運転席に座った。
「シートベルト」
真春がそう言うと、工はヤレヤレと思いながらシートベルトを着けてあげる。
間近に工の顔が近付いて真春はドキドキした。
「…………工、今日が終わるまで一緒にいて。今日だけは俺のことだけ考えて」
恥ずかしそうに真春が言う。
工は真春を見つめながらフッと笑った。
「全く、20歳になっても甘えん坊だ」
工はそう言ってハンドルを握った。一瞬でも優しい顔の工が見れて真春はドキドキが激しくなる。
車はガレージを出て門を抜けると、まだ行くあても決まっていないが走り出した。
「さて、どちらに向かいましょうか?今日は真春さんの言う事を出来る限り叶えますよ」
真春は特に行きたい場所もなかった。
ただ工を独占して、ふたりだけの時間を過ごしたかった。
「出来る限りじゃヤダ。絶対叶えてもらう」
ムッとしながら真春が言うと工はフッと息を吐く。
「だって無理難題言いそうですから?出来ないことは出来ないと言っておかないと」
現実的な事を言われて真春は面白くない。
「無理難題言わないよ。本当はこうしてふたりでずっと車の中に居たっていいんだ。工がそばに、1日ずっといてくれるだけで嬉しいんだ」
自分でも欲が無いと思いながら、本当にそれが第一だった。
「工はどうせ俺が、その…………キス、とか、強請るって思ったんでしょッ!」
真っ赤になって真春は言う。
「はい」
間髪入れずに工は答える。
真春はぐうの音も出ない。
「そりゃ、して欲しいよ!好きだもん!工が!でも、工が嫌がることは望まない!」
真春が真っ赤になったまま俯く。
工は右手を伸ばすと真春の頭を撫でた。
「…………そう言うところは好きです」
ボソリと工が呟くと、真春は頭の上の工の手を握った。
「ズルいよ。そんなこと言われたら、もっと好きになってもらえるように頑張っちゃうじゃん」
ドキドキしながら真春は言う。
信号が赤になり、工は優しくブレーキを踏んだ。
「…………頑張らなくて良いです」
工は真春を見つめた。
真春も工をジッと見つめる。
「ったく。小動物の様な目で直ぐ見る」
工は真春の手を解いた。
「ヤダ!手、繋いでいたい!手ぐらい良いでしょ!」
真春は工の指に指を絡ませてくる。
「運転しにくいんです」
信号が青に変わり、工はアクセルを踏む。
それでも真春に手を握られるのを無理に振り解かない。
「…………じゃあ、どこかに車停めて」
真春のおねだりに、工は無言でしばらく車を走らせ、羽田空港近くの公園の駐車場に入った。日曜日のせいか、そこそこ車が駐車している。
工がパーキングブレーキを入れると、真春は工の大きな掌を握って自分の頬に触れさせた。
真春はジッと工を無言で見つめる。
その愛らしい顔を見ていると、工は辛くなってくる。
大きな瞳が自分を見つめ、素直に甘えて愛情表現を示されると、真春の顔と乙也がダブってしまう。
「…………真春さん。いつまでこうしてるつもりですか?」
どうしても乙也が浮かんでしまって、工は胸が締め付けられて辛くなる。
「…………ずっと」
「イヤです」
スパッと言われて真春は頬を膨らませる。
「もう!少しは俺にときめいてよ!俺、結構可愛いと思うんだけどな!工は可愛い系は嫌いなのかよッ!」
真春の言葉に工は目が点になる。
自分で可愛いと自覚があるんだと吹き出して笑いそうになり、工は口元に握り拳を当てた。
「…………敵わないなぁ。ズルいのはあなただ」
工は呟くと窓の外に目を向けた。
駐車場の先の芝生で、サッカーをする少年達が目に入った。
その風景に懐かしい気持ちになる。
ああ、きっと昔の俺なら、今の真春さんのセリフに大笑いしてたんだろうなぁ。
自分がまだ素直に笑顔でいられた頃、もうはっきり名前も顔も覚えてはいないが、雨の日に出会った、サッカーボールを持っていた美少年の顔がフッと朧気に浮かび、目の前の可愛い真春と重なった。
「20歳になったのに、まだまだ子供なんだから」
工は真春の頬に自分から右手で触れて優しい目で見つめた。
真春は切なそうに笑う。
「工、好き」
真春は工の胸に顔を埋め抱きつく。
工は抱きしめ返しはしないが、真春の頭をポンポンとするとしばらく真春の好きにさせ、これも自分に課された罰なのかと受け入れた。
その後夜まで工も観念して、午前0時まで真春をギリギリのラインで甘えさせた。
「おい、真春」
飯塚組長の声に、出掛ける準備をしていた真春はドアに目を向けた。
「何?俺、出掛けるよ。車借りるからね」
真春がそう言うと飯塚組長は何かを真春に投げた。
真春は受け取ったものを見ると車のキーだった。
「お前がこの家に来ることが決まって直ぐお前用の車を買っといた。昨日届いたんだ」
キーは見たことがない車のロゴが入っていた。
「成人の誕生日プレゼント。お前にプレゼントなんざこれが最後だな」
飯塚組長が笑いながら言うと、真春はびっくりして飯塚組長を見つめる。
「今日が20歳の誕生日だって覚えてたんだ。ありがとう!」
真春が嬉しそうにお礼を言うと、飯塚組長は満足そうに真春の部屋を後にした。
実際は真春の誕生日を覚えていたのではなく、家政婦長から、今日がたまたま真春の誕生日だと聞かされたのだった。
真春はどんな車をくれたのか、急いで支度を済ませるとガレージに向かった。
ガレージの入り口近くに新車のSUVが止まっていた。
「これかぁ。今まではセダンだったから、こっちの方が良いや」
真春は嬉しくなって、早く工が来ないかと待ち遠しかった。
今日は、工とのデートの日だったからだ。
六本木の鴉の解明に協力するご褒美として、真春はちょうど誕生日だった今日をその日に当てたのだった。
しばらくして、靴音が聞こえて来て真春はガレージの表に出た。
「遅くなりました。こちらにいると思わなかったので」
工がそう言うと、真春はワクワクした顔で工を手招く。
「見て見て!父さんからプレゼントに車貰ったんだ!」
嬉しそうに真春は言う。
工はガレージに入りその車を見て目を見開いて驚いた。
「これは…………」
「今日ね、俺の誕生日だったの!20歳の誕生日プレゼントだって!」
無邪気に言う真春に工は内心目眩がした。
これ、マセラティだろ。
誕生日プレゼントって、宝の持ち腐れだろ。
絶対真春さんは価値分かってねー。
目の前のイタリアの高級車に、工はどう反応して良いか分からなかった。
真春が誕生日だと言うことも初めて知り、それもどう反応して良いかわからなかったが、お祝いぐらい言ってあげようかと真春を見た。
「誕生日だったのですね。おめでとうございます」
工は真春に頭を下げた。
工から、おめでとうと言われただけで真春は嬉しくてたまらない。
「俺的には工からのご褒美はグッドタイミングだった!工に今日は1日お祝いしてもらうからね!早く出発しよう」
嬉しそうに真春は言うと、マセラティの鍵を工に渡す。工は鍵を開けると助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
工は真春を車に乗せ、自分は運転席に座った。
「シートベルト」
真春がそう言うと、工はヤレヤレと思いながらシートベルトを着けてあげる。
間近に工の顔が近付いて真春はドキドキした。
「…………工、今日が終わるまで一緒にいて。今日だけは俺のことだけ考えて」
恥ずかしそうに真春が言う。
工は真春を見つめながらフッと笑った。
「全く、20歳になっても甘えん坊だ」
工はそう言ってハンドルを握った。一瞬でも優しい顔の工が見れて真春はドキドキが激しくなる。
車はガレージを出て門を抜けると、まだ行くあても決まっていないが走り出した。
「さて、どちらに向かいましょうか?今日は真春さんの言う事を出来る限り叶えますよ」
真春は特に行きたい場所もなかった。
ただ工を独占して、ふたりだけの時間を過ごしたかった。
「出来る限りじゃヤダ。絶対叶えてもらう」
ムッとしながら真春が言うと工はフッと息を吐く。
「だって無理難題言いそうですから?出来ないことは出来ないと言っておかないと」
現実的な事を言われて真春は面白くない。
「無理難題言わないよ。本当はこうしてふたりでずっと車の中に居たっていいんだ。工がそばに、1日ずっといてくれるだけで嬉しいんだ」
自分でも欲が無いと思いながら、本当にそれが第一だった。
「工はどうせ俺が、その…………キス、とか、強請るって思ったんでしょッ!」
真っ赤になって真春は言う。
「はい」
間髪入れずに工は答える。
真春はぐうの音も出ない。
「そりゃ、して欲しいよ!好きだもん!工が!でも、工が嫌がることは望まない!」
真春が真っ赤になったまま俯く。
工は右手を伸ばすと真春の頭を撫でた。
「…………そう言うところは好きです」
ボソリと工が呟くと、真春は頭の上の工の手を握った。
「ズルいよ。そんなこと言われたら、もっと好きになってもらえるように頑張っちゃうじゃん」
ドキドキしながら真春は言う。
信号が赤になり、工は優しくブレーキを踏んだ。
「…………頑張らなくて良いです」
工は真春を見つめた。
真春も工をジッと見つめる。
「ったく。小動物の様な目で直ぐ見る」
工は真春の手を解いた。
「ヤダ!手、繋いでいたい!手ぐらい良いでしょ!」
真春は工の指に指を絡ませてくる。
「運転しにくいんです」
信号が青に変わり、工はアクセルを踏む。
それでも真春に手を握られるのを無理に振り解かない。
「…………じゃあ、どこかに車停めて」
真春のおねだりに、工は無言でしばらく車を走らせ、羽田空港近くの公園の駐車場に入った。日曜日のせいか、そこそこ車が駐車している。
工がパーキングブレーキを入れると、真春は工の大きな掌を握って自分の頬に触れさせた。
真春はジッと工を無言で見つめる。
その愛らしい顔を見ていると、工は辛くなってくる。
大きな瞳が自分を見つめ、素直に甘えて愛情表現を示されると、真春の顔と乙也がダブってしまう。
「…………真春さん。いつまでこうしてるつもりですか?」
どうしても乙也が浮かんでしまって、工は胸が締め付けられて辛くなる。
「…………ずっと」
「イヤです」
スパッと言われて真春は頬を膨らませる。
「もう!少しは俺にときめいてよ!俺、結構可愛いと思うんだけどな!工は可愛い系は嫌いなのかよッ!」
真春の言葉に工は目が点になる。
自分で可愛いと自覚があるんだと吹き出して笑いそうになり、工は口元に握り拳を当てた。
「…………敵わないなぁ。ズルいのはあなただ」
工は呟くと窓の外に目を向けた。
駐車場の先の芝生で、サッカーをする少年達が目に入った。
その風景に懐かしい気持ちになる。
ああ、きっと昔の俺なら、今の真春さんのセリフに大笑いしてたんだろうなぁ。
自分がまだ素直に笑顔でいられた頃、もうはっきり名前も顔も覚えてはいないが、雨の日に出会った、サッカーボールを持っていた美少年の顔がフッと朧気に浮かび、目の前の可愛い真春と重なった。
「20歳になったのに、まだまだ子供なんだから」
工は真春の頬に自分から右手で触れて優しい目で見つめた。
真春は切なそうに笑う。
「工、好き」
真春は工の胸に顔を埋め抱きつく。
工は抱きしめ返しはしないが、真春の頭をポンポンとするとしばらく真春の好きにさせ、これも自分に課された罰なのかと受け入れた。
その後夜まで工も観念して、午前0時まで真春をギリギリのラインで甘えさせた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる