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No.2 お茶漬けの味
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裕人の過去を知り、女性への憎しみも知った。
自分が不幸になった原因の母親。性的虐待をしていた叔母。
普通の恋愛もまだしてないんだろうなと思うと、裕人が本当に可哀想だと思った。
その前に、女を抱く気にもならないか。
そう言った行為が汚らわしく思うもんなのかね。
考えても俺には分からなかった。
俺は無理矢理女を抱いたこともなければ、伊織に抱かれたのも無理矢理…………。
うん、最初の時は無理矢理だったな。
でも、その前から、俺は伊織が好きだったんだろうな。
無理矢理だったが嫌じゃなかった。
だんだん伊織にハマった。
伊織に抱かれるのが幸せで。
でも裕人は違う。
全てが否定だ。
一つも望んでなんかいない。
「至さん、明日店休みですよね」
寂しそうな顔で裕人は言う。
「ん?ああ、お前は組の休み、ねーもんな」
はははと俺は笑って見せた。
暗い顔を見せたらダメだと思った。
「あーあ、俺も早く部屋住み卒業して一人前になりたいや」
「そりゃ当分先だな。今は三食宿があるだけ良いと思え」
揶揄いながら俺が言うと裕人はぷぅと膨れる。
ガラッと店の扉が空いた。もう暖簾もしまっている。
「よう」
伊織だった。
「ん?お前、誰?」
伊織が裕人に尋ねる。裕人は伊織の威圧的な存在感に気後れする。
「ああ、初めてだったか。五島組から預かって、夕方から閉店まで見習いさせてる裕人だよ」
俺が伊織に裕人を紹介する。
そうか。今まで伊織が来た時は、奥で仮眠を取っていたもんな。
「ああ?そうなの?新しい男かと思ったぜ。ガキに手を出したのかと」
伊織の大胆な言葉に俺は焦る。
「お前!何、冗談言ってるんだ!」
俺は必死に誤魔化す。
「田嶋伊織だ。至とは深い付き合いだ。よろしくな」
伊織がニヤリと笑って裕人を見ている。
俺はこの雰囲気に居た堪れない。
「き、今日は、なんの用だ!」
俺は話をそらしたくて伊織に尋ねる。
「前にお前から貰った八神の写真、あれはやっぱり八神じゃないことが分かった。あの写真の流出経路を探りたいんだ」
「それは俺も愚嵐怒から手に入れた物だから深くは分からねぇ。愚嵐怒のメンバー達も、本当は生で八神を見たことがないのかもな」
こう言うことにガセネタは本当は珍しかったが、八神がかなり用心深く賢いんだと、俺も伊織もこれで分かった。
「お前は心配しているが、飯塚組長の息子の命はもう狙わないんじゃないか?八神にとってそこには旨味がないだろう?」
「ああ。ただ正体が分からないのは気持ちが悪いんでね。首根っこを掴んでやりたいんだよ」
どうして伊織がそこまで拘って、のめり込むのか俺には理解できなかった。
確かに、梶田と手を組んで政龍組を潰す存在だったかもしれない。
今はただ様子を窺って牙を隠しているだけかもしれない。
でも八神にそれほど、政龍組を潰すほどの意味があるのかも謎だった。
「活動が低迷してるようだが、愚嵐怒の動きをまた教えてくれ」
伊織はそう言うと店を出ようとする。
「ああ」
たったこれだけの話。
電話で済むようなことなのに、なぜ足を運んできた?
まだ少しは、俺に会いたいと思ったのか?
なんて。
俺は都合のいいように解釈する。
俺はまだ、伊織が好きなんだろうな。
そう思う俺は、自分から手放した事を少しだけ後悔した。
後悔しながらも、捨てられる前に捨てて良かったんだと言い聞かせた。
自分が不幸になった原因の母親。性的虐待をしていた叔母。
普通の恋愛もまだしてないんだろうなと思うと、裕人が本当に可哀想だと思った。
その前に、女を抱く気にもならないか。
そう言った行為が汚らわしく思うもんなのかね。
考えても俺には分からなかった。
俺は無理矢理女を抱いたこともなければ、伊織に抱かれたのも無理矢理…………。
うん、最初の時は無理矢理だったな。
でも、その前から、俺は伊織が好きだったんだろうな。
無理矢理だったが嫌じゃなかった。
だんだん伊織にハマった。
伊織に抱かれるのが幸せで。
でも裕人は違う。
全てが否定だ。
一つも望んでなんかいない。
「至さん、明日店休みですよね」
寂しそうな顔で裕人は言う。
「ん?ああ、お前は組の休み、ねーもんな」
はははと俺は笑って見せた。
暗い顔を見せたらダメだと思った。
「あーあ、俺も早く部屋住み卒業して一人前になりたいや」
「そりゃ当分先だな。今は三食宿があるだけ良いと思え」
揶揄いながら俺が言うと裕人はぷぅと膨れる。
ガラッと店の扉が空いた。もう暖簾もしまっている。
「よう」
伊織だった。
「ん?お前、誰?」
伊織が裕人に尋ねる。裕人は伊織の威圧的な存在感に気後れする。
「ああ、初めてだったか。五島組から預かって、夕方から閉店まで見習いさせてる裕人だよ」
俺が伊織に裕人を紹介する。
そうか。今まで伊織が来た時は、奥で仮眠を取っていたもんな。
「ああ?そうなの?新しい男かと思ったぜ。ガキに手を出したのかと」
伊織の大胆な言葉に俺は焦る。
「お前!何、冗談言ってるんだ!」
俺は必死に誤魔化す。
「田嶋伊織だ。至とは深い付き合いだ。よろしくな」
伊織がニヤリと笑って裕人を見ている。
俺はこの雰囲気に居た堪れない。
「き、今日は、なんの用だ!」
俺は話をそらしたくて伊織に尋ねる。
「前にお前から貰った八神の写真、あれはやっぱり八神じゃないことが分かった。あの写真の流出経路を探りたいんだ」
「それは俺も愚嵐怒から手に入れた物だから深くは分からねぇ。愚嵐怒のメンバー達も、本当は生で八神を見たことがないのかもな」
こう言うことにガセネタは本当は珍しかったが、八神がかなり用心深く賢いんだと、俺も伊織もこれで分かった。
「お前は心配しているが、飯塚組長の息子の命はもう狙わないんじゃないか?八神にとってそこには旨味がないだろう?」
「ああ。ただ正体が分からないのは気持ちが悪いんでね。首根っこを掴んでやりたいんだよ」
どうして伊織がそこまで拘って、のめり込むのか俺には理解できなかった。
確かに、梶田と手を組んで政龍組を潰す存在だったかもしれない。
今はただ様子を窺って牙を隠しているだけかもしれない。
でも八神にそれほど、政龍組を潰すほどの意味があるのかも謎だった。
「活動が低迷してるようだが、愚嵐怒の動きをまた教えてくれ」
伊織はそう言うと店を出ようとする。
「ああ」
たったこれだけの話。
電話で済むようなことなのに、なぜ足を運んできた?
まだ少しは、俺に会いたいと思ったのか?
なんて。
俺は都合のいいように解釈する。
俺はまだ、伊織が好きなんだろうな。
そう思う俺は、自分から手放した事を少しだけ後悔した。
後悔しながらも、捨てられる前に捨てて良かったんだと言い聞かせた。
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