鳴かない杜鵑-ホトトギス-(鳴かない杜鵑 episode1)

五嶋樒榴

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跳ねる水

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ワタルと家で食事を済ませると、もう田中さんも休ませていたのでワタルが食器を洗った。
泉水はソファーでウイスキーを飲んでいた。

「この前はごめん。ワタルを苦しめてばかりだったね」

ホテルでの出来事を泉水は謝る。

「ううん。僕は良いの。大事にされてるって分かってるし。そんなことより、泉水さんの精神的な事の方が心配。この家の重圧っていうか、その……」

気を遣いながらワタルは言う。

「夢の話でしょ?私の母親の。前に水帆にも相談したんだ。結局答えは出なかった」

「お父さんに、聞けない、よね」

オドオドしながらワタルは言う。
桐生が保昌に言ってくれたのであろうが、進展はないようだったからだ。

「聞くのが怖いんだ。真実を知って、また苦しみが増えるようで。真実を知って楽になると思う?」

泉水はなかなか踏ん切りがつかない。
過去を曝け出すことが幸せになる保証がないからだ。
泉水の問いにワタルは首を振る。

「分からない。でも僕が泉水さんを支える。僕が支えるぐらいで頼りになるか分からないけど、どんなに泉水さんが辛くても、僕はずっと泉水さんの側にいるよ」

真剣なワタルの瞳に泉水はフッと笑う。

「ありがとう。その言葉だけでも救われてる」

ワタルがキッチンの仕事を終え泉水の側に寄ってきた。泉水はウイスキーをグラスに足すと立ち上がった。

「部屋に行こう」

泉水がグラスを持って部屋に向かう。ワタルも付いていった。
部屋に戻るとワタルはバスタブに湯を張った。バスタブの中で湯が増えていく様を見つめながら、ぼぉっとしていると、ワタルを呼ぶ泉水の声で我に返って部屋へ戻る。

「どうしたの?」

「ううん。ぼぉっとしてた」

笑顔でワタルは言う。
泉水はワタルを見つめながらウイスキーを啜る。
ワタルが泉水の隣に座ると、キスをしながらワタルの口の中にウイスキーを流し込む。
コクンと喉を鳴らしてワタルは飲み込んだ。 

「ワタル。もっと、欲しい?」  

ワタルは首を振る。

「酔っちゃうよ。ウイスキー、飲み慣れてないから」

潤んだ目でワタルは言う。

「可愛い」

泉水はそう言うと、ワタルの耳たぶを口に含む。

「くすぐったい」

ワタルが身をよじる。
バスタブに湯が入った音声が聞こえる。

「一緒に入ろう」

泉水はワタルを誘いバスルームに入る。
泉水がバスタブの中に身を沈めるとワタルを上に跨がらせる。バスタブの湯が一斉に溢れ出した。

「ああッ!」

ワタルが真っ赤になって結合部分を締め付ける。

「温かくて気持ちいい。ワタル」

ギュッとワタルを抱きしめる。ワタルは腰を押し付けて身悶える。
水面がその動きに合わせるように波になって跳ねる。 

「身体の芯まであったまる。ワタルの中が蕩けてる」

泉水はそう言うとワタルの乳首をピチャピチャと舐める。

「泉水、さんッ。気持ち、いいよぉ」

ワタルが腰を動かす。身体が温まって充血しているようだった。
水面はさらに激しさを増し、バスタブから溢れるように跳ねまくる。

「ワタル、ワタル」

泉水がワタルの顔を近づけさせ、貪るように唇を重ねる。
互いの舌を絡め合い唾液を流れさせる。
ワタルの中ではち切れんばかりに勃起するモノが、ギュッと締まる感覚に悶えながら、泉水はワタルの口の中に舌を泳がせ、ワタルはその舌をむしゃぶるように吸う。

「我慢出来ない。動きたい」

泉水がそう言うと、ワタルはバスタブの縁に掴まり一度泉水を抜くと膝を付き、突き出した腰を泉水に捧げる。
泉水はワタルの腰を掴むと、バックから温かい場所に突き挿れた。

「ああッ!ああんッ!」

バスタブの中の湯はもう半分ぐらいまで減っていた。ワタルはギュッとバスタブに掴まっている。

「ワタル!気持ちいい。中でイってもいい?抜きたくない」

「良いよ。イって。僕も、泉水さんを中で感じたい」

泉水の自分勝手な動きでも、ワタルは何度も中が痙攣してイってしまう。泉水に支配された身体は淫らに反応する。

「!!!」

泉水がワタルの背中に脱力した。

「ああ、泉水、さん。気持ち、良い」

ドクドクと注ぎ込まれる熱にワタルは酔いしれる。

「俺も、気持ち、いい。ワタルの中で、蕩けた」

静かに泉水が離れると、バスタブの中に仰向けになった。振り返ったワタルは泉水に抱きつく。

「あったかい」

ワタルがそう言うと、泉水と抱きしめあい唇を重ねる。

「愛してる」

「僕も、愛してる」

再び唇を重ね、2人は甘く溶けてしまう幸せを感じていた。
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