田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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21ずるい・偶然の一致

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叔父の凱から仁哉が部下だと聞き、しかも溺愛していてプラトニックな関係だと聞かされ流石の田辺も驚いた。
そして凱が話す仁哉像に対して興味も湧いた。諭との事は秘密にして、諭の身内に会ってみたいと思った。

「……………え?本当に知り合いだったの?」

諭はびっくりして目が点になる。
田辺は頷く。

「黙ってたけど、実は今日、会ってきました」

諭には内緒で、凱に頼んで仁哉と3人で昼食の席を設けて貰った。

「え?」

自分の知らないところで、田辺が仁哉と会ったと聞いて諭はびっくり仰天だった。

「もちろん最初は、諭先輩の事は内緒にして会うつもりだったんです。だから、叔父の部下だったことも会うことも諭先輩に内緒にしました」

内緒にして会うつもりだったと聞いて、諭は仁哉に自分と田辺の関係がバレたことを悟った。

「ひどいよ!それなら俺も誘ってくれれば良かったのに!」

「え?」

「どうせバレるならちゃんと紹介したかった!」

むくれる諭の意外な言葉に田辺は驚く。
勝手に関係をバラしてしまった事を、怒られるのを覚悟で事後報告したのだが、まさか別の意味で怒られるとは思っていなかった。

「身内にバレるの嫌なのかと思ってました。って、バラした俺が言う言葉じゃないけど。すみません」

自分が思っていない展開になって、田辺にしては珍しく恐縮する。

「んー。正直知られちゃったのは怖いけど、俺、田辺が大好きだから、いつかちゃんと家族にも田辺を紹介したいって思ってるよ」

諭の言葉に田辺は目を見開く。
まさか諭からそんな風に言ってもらえると思っていなかった。

「話した時、仁哉君どんな顔してた?」

ちょっとだけ不安そうに諭は尋ねる。

「叔父が男と付き合ってても、偏見のない人だと聞いていたのでつい話してしまったけど、流石に真っ青になって固まってました」

「あはは。だよね。って!叔父さんの恋人、男なの?」

諭がびっくりすると田辺は笑って頷く。

「……………俺、諭先輩が大切だから、本当に景虎さんとは会うだけのつもりでした。でも結果論だけど、諭先輩に内緒で会ったことは後悔してます」

反省する田辺の気持ちを聞いて、諭は嬉しくなって田辺に抱きつく。

「今度は一緒に仁哉君と会ってくれる?」

諭は自分の口から、仁哉に田辺を恋人だと紹介したいと思った。

「次は、5人で会いましょう。その時、叔父と叔父の恋人もきちんと紹介します」

なんだか凄いことになったなと諭は思ったが、田辺が恋人として自分をちゃんと紹介したいと思ってくれたのが嬉しくて、田辺を好きになって本当に良かったと思った。
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