田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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35ずるい・許さねーよ

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「うっわッ!マジ旨いっす!」

遥加は箸が止まらず、角煮を食べまくる。

「てめぇ、マジ遠慮しろよ」

田辺は睨みを利かせて遥加をはっ倒す。

「本当に凄いっす。田辺さんが羨ましいです」

八尋も角煮を食べながら、田辺に羨望の眼差しを送る。

「でも、まだそんなに料理得意じゃないんだよ。焼いたり炒めたり煮たりって基本のものだけだよ」

照れながら諭は言う。

「十分です。昔の食生活に比べたら健康的ですから」

田辺は諭ににっこり微笑む。それを見ていた遥加は眉間にシワを寄せる。

「田辺と内名先輩って、マジどう言う関係ですか?なんか、特別な関係に見えるけど」

遥加がオブラートに包んで言う。

「それは、そのッ」

焦る諭。

「前に言っただろ。親しくお付き合いさせてもらってるって」

冷静な田辺。

「それって、そのお付き合いって、恋人的な?」

堪らず遥加は聞いてしまった。

「お前は恋人じゃないのに親しいお付き合いするんか?」

あっけらかんと田辺が言って、横で聞いていた諭はびっくりして真っ赤になる。

「えー。マジか?」

流石に引き気味になる遥加と八尋。

「俺たちのことは詮索するな。諭先輩を傷つけるのも許さねーよ」

田辺は遥加と八尋に睨みを利かせる。遥加はプッと笑った。

「やべ。俺、お前に好かれてるって理解したわ。じゃなきゃそんな大事なこと打ち明けてくれねーよな」

田辺は別にそんな気持ちで打ち明けたわけじゃなく、思ったままを言ったまでだったが、遥加が何か勝手に都合のいいように解釈しているので放っておくことにした。
諭は横で真っ赤になって動けなくなっている。
田辺が自分を恋人と、みんなに告白して守ってくれたのが嬉しくて堪らなかった。
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