すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第二話

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昼休みになり、茉理は購買部にパンを買いに来た。
週に一度の美味しいクリームパンをゲットするためだった。

「もう!授業終わるの、こう言う日に限ってズレ込むんだから!クリームパン買えなかったらマジ恨む!」

パタパタと走って人集りの購買部に茉理も突入する。

「はーい、最後のひとつー。これで終わりよー」

購買部に売りに来るパン屋のおばちゃんの声。

「買います!」

茉理はそう言ったが、タッチの差でクリームパンは完売になった。

「そんなー!俺のクリームパン!」

買えずに落ち込む茉理。
今週の楽しみが無残にも終わってしまった。

「茉理?」

一哉の声がしてそちらに目を向ける。

「一哉かぁ」

しょんぼりして茉理は言う。

「パン買えんかった?」

一哉が尋ねると茉理はコクンと頷く。

「今日、クリームパンの日だったのに」

しょんぼりしながら茉理が言うと、一哉の背後からヌッと手が出て来た。

「あのッ、これ、あげようか?」

色白の大きな瞳。めっちゃ美少年が茉理にクリームパンを差し出す。

「え?」

初めて見る顔に茉理は戸惑う。

「良いよー。それ、お前が食いたくて頑張ってゲットしたんだから」

茉理が遠慮する前に一哉が言う。

「だってさ、すっごくがっかりしてるじゃん!一哉は甘いもの食べないから分からないだろうけど、ここのクリームパン、マジ美味しいんだよッ!」

美少年が一哉に力説する。
茉理は美少年をただ見つめた。

「一哉の知り合い?」

やっとそれだけ茉理は言葉が出せた。

「ああ、同じクラスの朝比奈あさひなだよ」

一哉が紹介すると美少年、朝比奈のぞむはにっこり茉理に微笑んだ。

「朝比奈臨だよ。よろしくね」

「あ、俺、高栗茉理。よろしく」

茉理も自己紹介するとペコリと頭を下げた。

「なんかお前ら似てんな。ちっちゃくて可愛いとこ」

ニヤニヤして一哉が言うと、茉理と臨はキッと一哉を睨む。

「ちっちゃい言うな!」
「可愛い言うな!」

ふたりがほぼ同時に言うと一哉はプッと吹き出す。
茉理と臨も顔を見合わせて笑った。
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