すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第三話

3

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勉強が終わり、茉理がおやつを下から持ってきた。

「サンキュー」

ペットボトルのジュースを受け取りながら絢斗は言う。
ベッドに寄りかかりながら絢斗はジュースを飲み始め、茉理はデスクチェアに腰掛けた。

「こっちくれば?」

絢斗が言うと茉理はムッとする。

「どうせまた俺にえっちぃことするんだろ」

「その言い方エロッ。いきなりそんなことするか。まだお前の気持ち、ちゃんと聞いてないのに」

ふふふと笑って絢斗が言う。

「よく言うわッ!俺に触りたいしちゅーもしたいくせに」

恥ずかしくて絢斗が見れない茉理は、そっぽを向いて言う。

「触りたいよ。でもまだ我慢してんだよ」

絢斗の余裕のある言い方に、茉理はどうしてもムカついてしまう。

「なぁ。ふたりきりなら、どこまで良い?髪、撫でたり、ハグはOK?」

冷静な口調で絢斗は攻めてくる。

「…………それ、ぐらいなら?」

そう答えて茉理はハッとする。

「あッ!…………そのッ!」

焦っても遅かった。
もう、絢斗が素早く茉理を抱き締めていた。

「ちょッ!ハウスッ!」
「犬じゃねーっつの」

そう言って絢斗はギューッと茉理を抱き締める。
デスクチェアが絢斗の重みにギシギシ言う。

「キスは?」
「ダメ!」

「でこは良いよな?嫌じゃなかったんだろ?」
「…………………………」

「ほっぺは?」
「ダメ!」

茉莉がそう言っても絢斗はほっぺに軽くキスした。

「!!!」

茉理はびっくりして、目の前で微笑む絢斗の顔をドキドキしながら見つめる。

「嫌だった?」

絢斗に尋ねられても、茉莉は恥ずかしくて言葉が出ない。

「…………嫌じゃなかったのね」

そう言って絢斗が茉理から離れる。
茉理は絢斗が離れてホッとすると同時に、温もりが消えて寂しいと思ってしまって、そんなふうに思う自分に焦る。

「とりあえず、唇以外のちゅーはOKと言うことで」
「か、勝手に決めんな!」

茉理が真っ赤になって絢斗に言うと、絢斗はふふふと笑う。

「嫌じゃなかったんだろ?」

否定できない茉理。

「もう!ずりーよ!」

茉理が叫ぶ。
絢斗が余裕なのがとにかく悔しい。ほっぺのキスも嫌じゃなかったのがめっちゃ悔しい。でもそれを言うのがとてつもなく悔しい。そして、絢斗にされることが気持ち良いのが最大限に茉理は悔しかった。
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