すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第四話

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今日も絢斗は茉理に勉強を教えていた。

「あー、疲れたー」

茉理はそう言ってベッドにダイブする。

「もう、脳みそ休ませてよー」

ベッドの上でゴロゴロしながら茉莉が言うと、テーブルに頬杖をつく絢斗が茉理をジッと見つめる。

「…………何?」

視線を感じて茉理は絢斗に尋ねる。

「んー?そういう態度ってさぁ、無意識でも自業自得になるぞ」

絢斗が小難しい事を言うので茉理はキョトンとする。

「何言ってんの、お前」

プッと笑って茉理が言うと、絢斗が立ち上がって茉理を見下ろす。

「へそ出てる」

絢斗の言葉に茉理はハッとして、寝っ転がって乱れたTシャツを引っ張り下げた。

「お前は誘ってる訳じゃなくても、俺はそういう姿見たら襲いたくなるし」

絢斗がギシッと音を立ててベッドに腰掛ける。
茉理はギュンッと胸が鳴って慌てて起き上がって正座する。

「お、襲われたく、ないです」

ビクビクしながら茉理が言うと、絢斗はニヤリと笑う。

「心配すんな。無理矢理はしないつもりだから」

つもりと言われて、茉理はギクリとする。

「あまり無防備になんなよ。いちおー大人の対応してんだから」

絢斗はそう言って茉理の髪を撫でる。

「…………ずっと大人でいてください」

引き気味に茉理は言う。絢斗はにっこり笑う。

「それは無理」

それを聞いて茉理はズサっと後ろに身を引く。
トンッと壁に茉理は追い詰められる。

「…………抱きしめたい。唇以外ならキスして良い?」

妖しい瞳で絢斗は迫ってくる。

「遠慮する!」

焦って茉理が言うと、絢斗はクスッと笑って茉理を抱きしめる。

「却下」

そう言って絢斗はギュッと茉理を抱きしめる。
茉理は一応拒絶するように手で絢斗の胸を押す。

「茉理。好き」

絢斗が茉理の耳元で囁く。茉理は恥ずかしくて真っ赤になって震える。

「み、耳元、で、しゃ、喋んないで、くれるかなー!」

耳まで赤くして茉理が言うと、絢斗はカプッと耳朶を噛んだ。

「!ッ!…………絢斗!」

ドキドキして、茉理は思わず力が抜けた。
ヌルッと絢斗の舌が耳朶を舐める。

「ヒッ!…………やめッ!」

茉理は萎縮して力が入らない。
怖くて恥ずかしい。

「…………可愛すぎかよ。ったく」

絢斗はそう言って茉理から離れる。
茉理は真っ赤になったまま、全身に力が入らない。

「ば、バカ絢斗!何すんだよ!」

「スキンシップ」

しれっと絢斗は言う。

「茉理をとことん気持ち良くさせて、俺が欲しくなるようにしないとだからさ」

ニヤニヤして絢斗が言うと、悔しそうに茉理は絢斗を睨む。

「それしか頭にねーのかよ!」

茉理が喚くと、絢斗は頷く。

「当たり前だろ。キスだって我慢してんだよ。俺ってなんて健気なんだ。寸止めってキツいのよ」

余裕の顔で笑う絢斗を茉理はムッとしながら睨む。

「……………我慢してるとか健気とか、そんな風に見えねーしッ!」

茉理がプリプリしながら言うと、絢斗は壁に手をついて茉理を見つめて顔を近付ける。

「分かってねーな。好きな子が目の前にいたら、キスしたいに決まってんだろ」
「か、顔、近ッ!」

狼狽る茉理。茉理をジッと見つめる絢斗。
絢斗はジッと見つめたまま、茉理に顔を近づけていく。
茉理は目をギュッと瞑って俯いた。
絢斗は無言で茉理の顎を指で上げると、茉理の頬にキスをした。

「……………唇、まだダメ?」

絢斗の甘い声に、ドキドキする茉理。

「ダメッ!」

茉理がそう言うと絢斗はフッと息をつく。

「ったく、なかなか落ちねーな」

絢斗はそう言って笑う。茉理は真っ赤な顔で絢斗を見つめる。

「そッ、そう簡単に、落ちりゅと思うな!」

少し呂律が回らない言い方に、絢斗は大笑いした。
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